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宅建士試験合格講座 都市計画法 > 開発許可と建築制限・都市計画事業と建築制限

第5節 開発許可と建築制限

■ 1 開発許可を受けた開発区域内における建築等の制限

 開発許可を受けた開発区域内においては、建築物の建築等が制限されます。

(1) 工事完了の公告前の制限
① 建築制限等
 開発許可を受けた開発区域内の土地においては、工事完了の公告があるまでの間は、一定の場合を除き、次の行為をしてはなりません。

1. 建築物の建築
2. 特定工作物の建設

 まだ、完了検査が終了していない段階だからです。

② 例外
工事完了の公告があるまでの間であっても、次の場合は、建築制限等の対象となりません。

1. 開発行為に関する工事用の仮設建築物または特定工作物を建築し、または建設するとき
2. 都道府県知事が支障がないと認めたとき
3. 開発区域内にある土地の権利者等でその開発許可に係る開発行為に同意をしていない者が、その権利の行使として建築物を建築し、または特定工作物を建設するとき。

(2) 工事完了の公告後の制限
① 建築等の制限
 開発許可を受けた開発区域内においては、工事完了の公告があった後は、一定の場合を除き、次の行為をしてはなりません。

1. 開発許可に係る予定建築物等以外の建築物の新築または特定工作物の新設
2. 開発許可に係る予定の建築物以外の建築物への改築または用途の変更

② 例外
 次の場合は、建築等の制限の対象となりません。

1. 都道府県知事が当該開発区域における利便の増進上もしくは開発区域およびその周辺の地域における環境の保全上支障がないと認めて許可したとき
2. 建築物および一定の第一種特定工作物にあっては、当該開発区域内の土地について用途地域等が定められているとき

※ 国または都道府県等が行う行為については、当該国の機関または都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって、1.の許可があったものとみなされ、予定建築物以外の建築物を建築することができる。


■ 2 市街化調整区域内における建築等の制限

 市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域、つまり建物を建てさせない区域なので、土地の区画形質の変更を伴わない場合、つまり開発許可を必要としない場合であっても、建築行為が規制されます。 

(1) 建築許可
 
市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、次の行為をしてはなりません。

① 建築物の新築、改築または用途の変更
② 第一種特定工作物の新設

(2) 建築許可が不要となる場合(主なもの)
① 農林漁業用の建築物の新築、改築または用途の変更
② 公益上必要な一定の建築物の新築、改築または用途の変更
③ 都市計画事業の施行として行う建築物の新築、改築もしくは用途の変更または第一種特定工作物の新設
④ 非常災害のため必要な応急措置として行う建築物の新築、改築もしくは用途の変更または第一種特定工作物の新設
⑤ 仮設建築物の新築
⑥ 通常の管理行為、軽易な行為等で一定のもの

 例外が多いが、そのほとんどは、市街化調整区域内で、開発許可が不要な場合でした。つまり、開発許可の不要なものは、建築許可もいらないということです。

(3) 国等の特例
 国または都道府県等が行う建築物の新築、改築もしくは用途の変更または第一種特定工作物の新設については、当該国の機関または都道府県等と都道府県知事との協議が成立することをもって、建築許可があったものとみなされます。


第6節 都市計画事業と建築制限

■ 1 都市計画事業とは

 都市計画が実行されると多くの建築制限等が行われる。前節では、開発行為に関する建築等の制限を見たが、開発行為に関連するもの以外にも建築制限はあります。すなわち、『都市計画事業』に関連する都市計画制限(建築・造成等の制限)です。
 都市計画事業とは、「市街地開発事業」と「都市計画施設の整備に関する事業」の2つを併せた呼び方である。都市計画法は、都市計画事業を円滑に行えるよう、事業の妨げとなる行為を制限しています。

 

■ 2 市街地開発事業

 『市街地開発事業』とは、積極的に計画的な街づくりをしようとするものです。市街化区域または区域区分が定められていない都市計画区域内において、一体的に開発し、または整備する必要がある土地の区域について定められます。
 市街地開発事業には、次の7種類があります。

土地区画整理事業・・・公共施設の整備と宅地の整備をはかる
新住宅市街地開発事業・・・大都市周辺で、大規模な住宅市街地を開発する
工業団地造成事業・・・工業団地を計画的に造成する
市街地再開発事業・・・既成市街地で土地の高度利用と都市機能の更新をはかる
新都市基盤整備事業・・・大都市の周辺において、新都市を建設する事業
住宅街区整備事業・・・三大都市の周辺で、良好な住宅地を供給する
防災街区整備事業・・・防災性向上へ老朽建物の除去等の公共施設整備を行う


■ 3 市街地開発事業の流れ

 市街地開発事業は、『市街地開発事業等予定区域』から始まる大規模なものと、予定区域を定めない、小規模な『市街地開発事業』の2つがあります。

(1) 小規模な市街地開発事業
 
市街地開発事業をすることが決まった場所を「市街地開発事業の施行区域」といいます。せっかく開発事業を行おうとしているのに、そこに勝手に建物を建てられると事業の妨げになるので規制をかけます。しかし、まだ実際に工事が始まるわけではないので規制は緩やかです(許可が必要な行為は1つだけ)。次に「都市計画事業の認可・承認の告示」がされると、いよいよ工事が始まるので規制が厳しくなり(許可が必要な行為は3つ)、呼び名も「事業地」に変わります。 

(2) 大規模な市街地開発事業
 
工業団地の造成など大規模な都市計画事業をする場合は、早い段階で適地を「市街地開発事業等予定区域」とし、建物が建っていかないように中ぐらいの規制をかけます(許可が必要な行為は3つ)。
 「都市施設・市街地開発事業の決定の告示」がされても、引き続きそこそこ厳しい規制がかけられます(呼び名も「予定区域」のまま)。次に、「都市計画事業の認可・承認の告示」がされるといよいよ工事が始まるので厳しい規制となり、呼び名も「事業地」に変わります(許可が必要な行為は4つ)。
 以上の分類は、次に見る「都市計画施設」の場合も同じです。

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