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宅建士試験合格講座 宅地・建物に関する税 > 所得税 #1

第6節 所得税

 所得税は、所得を有する者に対して、国が課税する国税です。

 

■ 1 課税主体・課税対象・納税義務者

(1) 課税主体
 
所得税の課税主体は国です。 

(2) 課税対象
 
課税の対象は、個人の所得です。
 所得とは、原則として収入から必要経費を控除したものを意味します。つまり、利益のことです。
 土地建物等を譲渡(売却)することにより所得を得た場合は、譲渡所得として、所得税が課税されます。譲渡所得とは、資産の譲渡による所得のことをいいます。ここでは、おもに土地建物等を譲渡した場合の譲渡所得に対する所得税の課税を扱います。

 1. 不動産の貸付けによる所得は、不動産所得とされる。ただし、借地権(建物の所有を目的とする地上権または賃借権)の設定により他人に土地を長期間使用させる行為で一定のものは資産の譲渡とされ、これによる所得は譲渡所得とされる。具体的には、借地権の設定の対価として支払いを受ける権利金等の金額が、その土地の価額の10分の5に相当する金額を超えるときは、譲渡所得として課税される。それ以外の場合は、不動産所得として課税される。
2. 資産の譲渡による所得であっても、営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得は譲渡所得に含まれない。

(3) 納税義務者
 
納税義務者は、原則として、所得を有する個人です。

 

■ 2 課税標準

 所得税の課税標準は、土地建物等を譲渡した場合の譲渡所得に関しては、土地建物等に係る譲渡所得の金額です。 

(1) 総合課税と分離課税
 
所得税の課税方法には、総合課税と分離課税があります。
① 総合課税(原則)
 所得税の原則的な課税方法は、総合課税です。
 所得税額を算出するにあたり、所得をその性質に応じて10種類に区分し、それぞれの所得に適した所得金額を計算したうえで、最後にこれを合算することにより総所得金額を求めます。原則として、これが所得税の課税標準となります。
 譲渡所得は、10種類ある所得の1つであり、原則として、総合課税の対象になります。

② 分離課税(例外)
 これに対して、所得税の例外的な課税方法が、分離課税です。
 所得の中でも、総合課税になじまない一定の所得については、他の所得と区分し、分離して課税されます。譲渡所得のうち、土地建物等に係る譲渡所得については、分離課税の対象とされます。

(2) 譲渡所得の金額の計算
① 総合課税とされる譲渡所得の金額
 上記のように、土地建物等に係る譲渡所得は分離課税の対象となるのですが、まず、総合課税とされる譲渡所得の金額の計算についてみておきます。
 譲渡所得は、所有期間の長短により、さらに長期譲渡所得と短期譲渡所得の2つのグループに区分されます。資産の取得の日以後譲渡の日までの所有期間が5年超のものが長期譲渡所得であり、5年以下のものが短期譲渡所得です。
 譲渡所得の金額は、それぞれのグループごとに、その年中の当該所得に係る総収入金額から取得費および譲渡費用の合計額を控除し(この金額を「譲渡益」という)、そこから譲渡所得の特別控除額(最高50万円)を控除することにより計算します。なお、50万円の特別控除額は長期譲渡所得と短期譲渡所得共通のものです。長期譲渡と短期譲渡の両方の譲渡益がある場合は、まず譲渡益のうち短期譲渡に該当する部分の金額から控除し、なお控除しきれない特別控除額があれば、長期譲渡に該当する部分の金額から控除することになっています。

 このようにして求めた金額を他の所得と合算して総所得金額を求めます。その際に、短期譲渡所得の金額は、そのままの金額を合算するのに対して、長期譲渡所得の金額は、その2分の1の額を合算します。

② 分離課税とされる土地建物等に係る譲渡所得の金額
 土地建物等に係る譲渡所得については、総合課税ではなく、例外的に分離課税の対象となります。
 土地建物等に係る譲渡所得の金額も、所有期間の長短により、さらに長期譲渡所得と短期譲渡所得の2つのグループに区分されます。ただし、所有期間を判定する時期が総合課税のものと異なり、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年超のものが長期譲渡所得、5年以下のものが短期譲渡所得です。
 各譲渡所得の金額は、その年中の総収入金額から取得費および譲渡費用の額の合計額を控除した金額、つまり譲渡益です。

(a) 土地建物等に係る長期譲渡所得の金額=総収入金額-(取得費+譲渡費用)
(b) 土地建物等に係る短期譲渡所得の金額=総収入金額-(取得費+譲渡費用)

1. 総合課税とされる譲渡所得の長短は、譲渡した日における所有期間が5年超か否かで判定する。それに対して、分離課税とされる土地建物等に係る譲渡所得の長短は、譲渡した年の1月1日における所有期間が5年超か否かで判定する。
2. 取得費とは、その資産の取得時に支出した購入代金や購入手数料等の金額に、その資産の取得後に支出した設備費と改良費とを加えた合計額のことである。建物の取得費については、この金額から、さらに減価償却費相当額を控除した金額となる。
3. 個人が、相続(限定承認に係るものを除く)により取得した土地や建物を譲渡した場合は、譲渡所得の金額の計算上、その土地や建物の取得費については、原則として、被相続人の取得費を引き継ぐ。
4. 取得費が不明な場合は、譲渡所得の計算上、譲渡収入金額の5%相当額を取得費とすることができる。また、実際の取得費の額が譲渡収入金額の5%相当額を下回る場合も、同様に、譲渡収入金額の5%相当額を取得費とすることができる。これを概算取得費という。
5. 譲渡費用には、仲介手数料、登記費用等が含まれる。

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