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宅建士試験合格講座 建築基準法 > 総則

 「建築基準法」は、建築物の安全、衛生面についての規制により、人の生命・健康を守ろうという法律です。例年2問出題されます。
 総則・建築確認・単体規定から1問、集団規定(建蔽率、容積率、用途規制等)から1問という出題パターンが多いです。いずれも規制の概要や数値に関する正確な記憶が求められます。逆にそれさえできてしまえば比較的簡単に得点できる問題が多いので、面倒くさがらずに暗記作業に努めましょう。


第1節 総則

■ 1 建築基準法の目的と仕組み

(1) 建築基準法の目的
 
建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康および財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的としています。 

(2) 建築基準法の仕組み
 
建築基準法が定める「建築物の敷地、構造、設備および用途に関する基準」は、おおきく「単体規定」と「集団規定」に分かれます。 

① 単体規定
 「単体規定」とは、個々の敷地や建築物の安全性や衛生面について規定するものです。建築物は、日本全国どこにあっても安全、かつ衛生的でなくてはならないので、単体規定は都市計画区域や準都市計画区域の内外を問わず、全国の建築物に適用されます。建築物が単体(1つだけ)であっても適用されるということです。 

② 集団規定
 「集団規定」は、建築物相互の利用を調整し、良好な市街地の環境を確保するためのものです。たとえば、自宅の南側の隣人が、北側いっぱいに10階建ての建物を建てたら、まったく日照がなくなってしまいます。そこで、近隣同士で建築に関する利害の調整が図れるよう、最低の基準を定めたのが「集団規定」です。集団規定は、建築物が集中している場所、すなわち、原則として「都市計画区域および準都市計画区域内に限り」適用されます。隣家が5キロも先であれば、隣人の迷惑は考えなくてよいということです。


■ 2 建築基準法が適用されない建築物

 建築基準法は全ての建築物に適用されるわけではありません。建築基準法が適用されない建築物は、次の通りです。 

(1) 国宝・重要文化財等に指定等されている建築物
文化財保護法の規定によって国宝、重要文化財、重要有形民俗文化財、特別史跡名勝天然記念物または史跡名勝天然記念物として指定され、または仮指定された建築物には、建築基準法の規定は適用されない。

 たとえば、建築基準法には、木造では、原則として13mを超える建築物は建てられないとの規定があります。この規定が文化財にも適用されると、東大寺の大仏殿も、奈良の五重塔も違反建築物となり取り壊さなければならなくなり不都合です。そこで、文化的価値を優先させ、建築基準法を適用しないのです。

(2) 既存不適格建築物
 
「既存不適格建築物」とは、建築基準法ができる前(昭和25年)からあった建築物で、現行の建築基準法の規定には適合しない建築物や、建築基準法の改正前からあった建築物で、改正後の建築基準法の規定に適合しなくなった建築物のことです。既存不適格建築物には、その適合しない規定は適用されません。したがって、その建築物が違反建築物になることはなく、その後の法の規定に適合させる必要もありません。法律は原則として遡って適用されないという「法律不遡及の原則」のあらわれです。


■ 3 用語の定義

(1) 建築物
土地に定着する工作物のうち、次のものをいう。
① 屋根および柱もしくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む)
② ①に付属する門・塀など
③ 建築物に設ける建築設備

 「土地に定着する」とは、土地にしっかりとくっついて簡単には離れないことを意味します。また、「工作物」とは、人間が作ったものです。つまり、土地に定着する工作物とは、土地にしっかりとくっついたもので、人間が作ったものを意味するのです。したがって、いくら居住性能がよくても自動車や船舶内の部屋などは土地に定着していないし、自然にできた洞窟は工作物ではないため、建築物ではないということになります。
 そして、建築物というためには、原則として風雨をしのぐための屋根、柱、壁があるものでなければなりません。さらに、建築物に付属する門や塀などは建築物に含めて建築基準法の規制を受けるということです。 

(2) 特殊建築物
学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。

 建築物の中でも、不特定多数の人や自動車が出入りする建築物、危険性のあるものを貯蔵する建築物、公害発生の危険のある建築物等を「特殊建築物」といい、特別な規制がされています。
 なお、一般の住宅でも、共同住宅(マンションを含む)は特殊建築物に分類されます。 

(3) 建築設備
建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙もしくは汚物処理の設備または煙突、昇降機もしくは避雷針をいう。

 前の項で述べたように、基本的に屋根、柱、壁があって土地に定着していれば建築物だが、大昔と違って現在では、それだけでは利用するのに少々不便です。物を貯蔵しておくにしても、生活するにしても、風雨をしのげればそれだけで良しとすることはできません。やはり、物を貯蔵するなら空調設備くらいは必要であり、生活するには電気・ガス・水道などの設備がなければ困ることになります。そして、これらの設備は常に順調に利用できるものでなければなりません。
 そこで、建築物には建築設備があることが当然だということで、建築物には建築設備も含むものとして建築基準法の規制をかけようということになっているのです。
 「建築物に設ける」とあるように、これらの設備が単体で建築設備として扱われるわけではなく、建築物に固定されたもので、例えば、電気であれば電線、ガスや水道であればその配管などが建築設備であることに注意です。

(4) 居室
居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。

 建築基準法にいう「居室」とは、次のものである。
 居室は、人が継続して利用するものだからこそ、その環境の保全・維持に注意を払わなければならない。
 住宅の中では、居間、寝室、台所などが、そして住宅以外では事務所の事務室、工場の作業場などが居室にあたります。「人が継続的に使用する」とは、特定の人が継続的に使用することだけでなく、不特定多数の人が入れ替わりで継続的に使用する場合も含まれます。
 これに対して便所や浴室などは、人が日々使用するものであっても、その使用の仕方が一時的なものに過ぎず、継続的ということはできないので居室には含まれないのです。

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