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宅建士試験合格講座 価格の評定 > 地価公示法・不動産鑑定評価基準

 「地価公示法」、「不動産鑑定評価基準」の2つを総称して「価格の評定」といいます。この2つのどちらかから1問出題されます。


第1節 地価公示法

■ 1 地価公示法の目的

 土地の値段は、他の物と同じく、需要と供給との関係で決まります。しかし、土地は全てが特定物であり、世の中に同じ物は一つもありません。したがって、土地については適正な地価が形成しにくいのが実状です。そこで、適正な地価形成のために、地価公示法が定められています。
 地価公示法の目的は、都市およびその周辺の地域等において、標準地を選定し、その正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、および公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もって適正な地価の形成に寄与することです。

1. 正常な価格とは、土地について、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格をいう。
2. この「取引」には、農地、採草放牧地または森林の取引は含まない。ただし、住宅地などの「農地、採草放牧地または森林以外のもの」とする取引は含む。
3. 「正常な価格」については、その土地に建物などの定着物がある場合や、賃借権などの土地の使用・収益を制限する権利が存する場合は、それが存しないものとして通常成立すると認められる価格をいう。つまり、更地として評価する。

 

■ 2 地価公示の手続

(1) 土地鑑定委員会の設置・委員の任命
 
国土交通省に土地鑑定委員会が設置され、7人の委員で組織されます。国土交通大臣は、不動産の鑑定評価に関する事項または土地に関する制度について学識経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、委員を任命します。 

(2) 公示区域の指定
 
国土交通大臣は、都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれる区域で、公示区域を定めます。

公示区域は、都市計画区域外の区域においても定めることができる。

(3) 標準地の選定
 標準地は、土地鑑定委員会によって、公示区域内において、自然的および社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地に選定されます。

1. 標準地は公示区域内から選定されるので、都市計画区域外から選定することもできる。
2. 建物その他の定着物がある土地または賃借権など土地の使用・収益を制限する権利が存する土地についても、標準地として選定することができる。評価する際には、これらが存しないものとして評価するということである。

(4)正常な価格の判定
 土地鑑定委員会は、公示区域内の標準地について、毎年1回、一定の基準日(1月1日)における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、官報で公示します。

① 不動産鑑定士による鑑定評価
 土地鑑定委員会は、標準地の正常な価格を判定する際は、2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求めなければなりません。標準地の鑑定評価を行った不動産鑑定士は、土地鑑定委員会に対し、鑑定評価額など一定の事項を記載した鑑定評価書を提出しなければなりません。

1. 不動産鑑定士は、標準地の鑑定評価を行うにあたっては、近傍類地の取引価格から算定される推定の価格、近傍類地の地代等から算定される推定の価格および同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用の額を勘案しなければならない。
2. 不動産鑑定士は、標準地の鑑定評価額が前年の鑑定評価額と変わらない場合であっても、鑑定評価書の提出を省略することはできない。

② 土地鑑定委員会による正常な価格の判定・公示
 土地鑑定委員会は、不動産鑑定士の鑑定評価の結果を審査し、必要な調整を行って、正常な価格を判定します。

③ 価格の公示
土地鑑定委員会は、標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定したときは、すみやかに、次の事項を官報で公示しなければなりません。

(a) 標準地の所在の郡、市、区、町村および字ならびに地番
(b) 標準地の単位面積(1㎡)当たりの価格および価格判定の基準日
(c) 標準地の地積および形状
(d) 標準地およびその周辺の土地の利用の現況
(e) その他国土交通省令で定める事項

(5) 書面等の送付・閲覧
 
土地鑑定委員会は、正常な価格の公示をしたときは、速やかに、関係市町村の長に対して、公示した事項のうち当該市町村が属する都道府県に存する標準地に係る部分を記載した書面および当該標準地の所在を表示する図面を送付しなければなりません。
 関係市町村の長は、送付された図書を当該市町村の事務所において一般の閲覧に供しなければなりません。

 

■ 3 公示価格の効力

(1) 土地の取引を行なう者の責務
 
都市およびその周辺の地域等において、土地の取引を行なう者は、取引の対象土地に類似する利用価値を有すると認められる標準地について公示された価格を指標として取引を行なうよう努めなければなりません。 

(2) 不動産鑑定士の土地についての鑑定評価の準則
 
不動産鑑定士は、公示区域内の土地について鑑定評価を行う場合において、当該土地の正常な価格を求めるときは、公示価格を規準としなければなりません。 

(3) 公共事業の用に供する土地の取得価格の算定の準則
 
土地収用法その他の法律によって土地を収用することができる事業を行う者は、公示区域内の土地を当該事業の用に供するため取得する場合において、当該土地の取得価格を定めるときは、公示価格を規準としなければなりません。 

(4) 収用する土地に対する補償金の額の算定の準則
 
土地収用法の規定により、公示区域内の土地について、当該土地に対する事業の認定の告示の時における相当な価格(補償金の額)を算定するときは、公示価格を規準として算定した当該土地の価格を考慮しなければなりません。

公示価格を規準とするとは、対象土地の価格を求めるに際して、当該対象土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる1または2以上の標準地との位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因についての比較を行ない、その結果に基づき、当該標準地の公示価格と当該対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいう。

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