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宅建士試験合格講座 宅地・建物に関する税 > 全体像・不動産取得税

 本章からは、毎年2問出題されます。税金と一言でいっても種類は多いが、宅建試験で出題されるのは、「不動産取得税」「登録免許税」「印紙税」「固定資産税」「所得税(譲渡所得)」が中心です。


第1節 全体像

■ 1 宅地・建物の取引にかかる税金

(1) 税金の種類
 
不動産が動くと税金も動きます。例えば、Aが所有する土地建物を、Bに売却したとします。

① Aには、不動産を手放す年まで、固定資産税がかかっている。
② Aには、売買によって所得(利益)が発生すれば、所得税がかかる。
③ Aには、登記を移転する義務があるので、登録免許税がかかる。
④ Bには、登記をすると登録免許税がかかる。
⑤ Bには、不動産を取得したことに対して、不動産取得税がかかる。
⑥ Bには、翌年以後、固定資産税がかかる。
⑦ A、Bには、契約をするときに、印紙税がかかる。

 このように不動産が動くときには、税金も動くことになります。これらの税金の種類を見てみましょう。

 都道府県税は、「不動産取得税」だけ、市町村税は、「固定資産税」と「都市計画税」だけ、あとは国税です。

(2) 課税の方法
 それでは、税金はどのように決まるかを見ておきましょう。
 どのような税金もその納税額の決め方は一緒です。

 税金の額は、全てこのように決まります。消費税を例として計算してみましょう。
 
100円の品物を買った場合を考えます。
課税標準 × 税率 = 税額
(100)   (0.1) (10円)    ということになる。

 問題は、この「課税標準」「税率」「税額」のそれぞれに「特例」が認められていることです。
 しかも、その特例は、「宅地」「建物」に認められ、税金が軽減されます。軽減される当事者にとってはありがたい政策的配慮であろうが、それが宅建試験を難しくしている要因なので、受験者にとってはあまりありがたくないものかもしれません。
 受験者が押さえなければならないのは、その特例が、「課税標準」に対してなのか、「税率」に対してか、それとも「納付税額」に対するものかを整理することが第一です。
 第二は、その特例が、「住宅」に関するものか、それとも「住宅用地」に関するものなのかを整理することです。
 後は、税に関する基本事項すなわち、

① 課税主体(誰が税金をとるか)
② 課税対象(何に対して課税するか)
③ 納税義務者(誰が払うか)
④ 徴収手続き(申告か通知が来るか)
⑤ 免税点(税金を免除される最低額)
⑥ 非課税(課税されない例外はあるか)

といったことを個別に覚えればよいです。


■ 2 課税主体
 誰が税金をかけるのかをまとめると、以下のようになります。

 では、次節以降で個別の税金について学習しましょう。


第2節 不動産取得税

 不動産取得税は、原則として、不動産を取得した者に対して、当該不動産が所在する都道府県が課税する地方税です。

 

■ 1 課税主体・課税対象・納税義務者

(1) 課税主体
 
不動産取得税の課税主体は、不動産が所在する都道府県です。 

(2) 課税対象
 
課税の対象は、不動産の取得です。
 ここでいう「不動産」とは、土地および家屋のことをいいます。土地とは、田、畑、宅地、山林、原野などをいいます。家屋とは、住宅、店舗、工場、倉庫などをいいます。
 「取得」とは、所有権を取得することをいいます。登記をしていなくても、現実に所有権を取得したと認められれば課税されます。課税の対象となる取得の具体例は次のとおりです。

① 売買・交換による取得
② 贈与による取得
③ 家屋の新築・増築・改築による取得
④ 相続人以外の者に対してなされた特定遺贈による取得  など

1. 取得は有償であるか無償であるかを問わないので、贈与による取得であっても、課税される。
2. 改築については、それにより当該家屋の価格が増加した場合に限り、課税される。

 ただし、形式的な所有権の移転は、課税の対象とされません。課税の対象とならない取得の例は次のとおりです。

① 相続による取得(包括遺贈・被相続人から相続人に対してなされた特定遺贈を含む)
② 法人の合併による取得
③ 共有物の分割による取得(ただし、取得者の分割前の持分の割合を超える部分の取得を除く)
など

3. 「包括遺贈」や、被相続人から相続人に対してなされた「特定遺贈」は、相続に準ずる性質のため、課税されない。したがって、「特定遺贈」であっても、相続人以外の者に対してなされたものは、課税される。
4. 共有物の分割による不動産の取得は、当該不動産の取得者の分割前の当該共有物に係る持分の割合を超えなければ、形式的な所有権の移転として、課税されない。超えた部分は、不動産の取得として課税の対象となる。

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