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【詩No.2】真夏、六十の休日

ニュースでは連日、猛暑日の報。

今日も私はぼんやりと炎天下の公園で日陰を探す。

木々が織りなす不規則な紋様の下に体を遊ばせると、自販機で買ってきたアイスコーヒーをちびちびとやる。

ブランコやシーソーには、腰ほどに満たない子供達が戯れている。
親御さんたちは日焼け止めを塗りながら子供達に目をやりつつも世間話。
さながらそれはペンギンのコロニーのようで。

ならばファーストペンギンは誰なのだろうなどと想像する。
いの一番に未開の分野に飛び込んでゆく勇気あるファーストペンギン。
将来この子たちの中からそんな勇者が現れるのかもしれないな、などと想像しながら、木陰から彼らを眺める。

公園に面する車道には殺人的な日差しに照らされ、てらてらと反射するボディを光らせまばゆいばかりの車両たちが通り過ぎてゆく。
子供達の目にそれらは単なる背景としか映っていないに違いない。
彼らもいずれ、車道に出てゆく。
仕事を見つけ、ある者はつがいとなり子を設けて時を刻んでゆく。
この私のように。

今年六十、この歳まで子を設けず仕事一筋、そんな人生を歩んできているが、まぁまぁ悪くない。
まだまだ働く気でいる。
まだまだ私も車道に出て車を走らせていたいのだ。

じりじりと毛穴から暑さがにじんでくるような陽気の中、生暖かい風が肌をさらってゆく。
たまの休日に公園へ出てみれば、暑さでぼんやりする中、そんなことを考えたりして。

家に帰ったら冷蔵庫にはキンキンに冷えたビールが待っている。
クーラーをガンガンにきかせてそいつをいただこう。
齢六十、まだまだ、現役である。
くっきりと濃い影を地面に落とすペンギンコロニーの親子たちに目をやり、私はベンチをあとにした。

そんな今日日の休日である。

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