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『アクアマン』(Aquaman):オジ&デス対談第一弾 Vol.1

《限りなくパーフェクトに近いヒーロー映画の誕生》

カエルのオジサン(※名前です)と私の夫であるデス・バレリーナがヒーロー映画について対談するシリーズ第一弾は、大ヒット中のDCコミック原作のヒーロー映画『アクアマン』。もうすでに評論家やアメコミ好きがその魅力を十二分に語ってくれてはいるけど、やっぱり語りたくなってしまう愛おしい映画について語り始めたらなかなか終わらなかった…

「オレはアクアマンの大ヒットを予見していた」

オジサン 録音を始めました。じゃ、ボクとデスのひとの対談を始めようと思いますよ。まず、第一回ということで…なんかとりあえず適当に喋ってくださいよ。

デス え?オレがいきなり適当に喋るの?司会進行してくれるんじゃないの?

オジサン あんまり司会進行ってほどの司会進行はしませんよ。

デス そうなの?

オジサン はい、まぁ今日は第一回ということで…

デス 『アクアマン』について…

オジサン いちおうね、コンセプトとしては、あの、色んなヒーロー映画について語るってことですけど、ヒーロー映画に限らず、その時その時で話したい話をしていこうと思うんですけど、今回は第一回なので、「記念すべき」って感じで『アクアマン』について話していこうということになっているので。

デス さっき、何について語ろうかってことをメモ書きしたんで、順番はかなり適当だけど、上から喋っていこうかな。

オジサン これが特に言いたいってことを中心に話してもらえばいいかなと思いますよ。

デス まぁ、1番言いたいのは、あれだよね、「『アクアマン』の大成功をデス・バレリーナは予見していました」っていう…

オジサン あ、ボクね、それ絶対に言うと思ってて、今、話振ろうと思ってたんですよ。デスのひとは『アクアマン』の公開前から、「アクアマンはジェームズ・ワンが監督だし、絶対に成功する、絶対に大ヒット間違いなし」みたいなことを言っていたじゃないですか。
そもそも、なんで『アクアマン』は大ヒットすると思ってたんでしたっけ?

デス まぁ、これまでのDC Extended Universe(以降DCEUと略す)ね、『マン・オブ・スティール』以降から『ジャスティス・リーグ』に至るまでの、あの制作陣と人脈が変わったから。どう変わったかというと、まぁ、ジェームズ・ワンに変わったわけですよ。
 で、アメコミ映画はホラー映画出身の監督が撮るとだいたい良い。1978年の『スーパーマン』を成功させたリチャード・ドナー、1989年の『バットマン』はティム・バートンでしょ。2002年からの『スパイダーマン』三部作のサム・ライミもホラー映画出身。あとはマーベル映画のジェームズ・ガンもそうだし。まずは、そういうジンクス的なものだよね。
 それと、ジェームズ・ワンは、もともと(ソリッドシチュエーションスリラーである)『ソウ』で成功したひとだから、斬新なアイディアは提示できるけれども普遍的なストーリーテリングができない監督であるという嫌味を言われたりもしてきたことがあって、それを見返してやろうということで、ある時期からストーリー性を重視する方向にいって、『インシディアス』とか『死霊館』なんかで、いわゆる昔ながらのエクソシスト的な、ポルターガイスト的な王道ホラー路線を踏襲しつつ、そういった名作ホラーに比べても、家族とか人間同士の関係なんかを丁寧に現代的に(PCにも配慮して)描いてる。
 ホラーというのは女性へのある種の嗜虐欲みたいなものが感じられる描写が出がちなんだよ。で、その一方で男のキャラはアホで、心霊現象に関して女性が異変を訴えても聞かないし、何言われてもなかなかピンとこない馬鹿で、そのくせ後半になってやっと理解したと思ったら力技でなんとか解決しようするってかんじ。そういうのが、ジェームズ・ワンの作品には出てこない。女性も男性も、普遍的で、でも、ささやかながらも理想的な人たちとして、きちんと描いている。

オジサン …すいません、いま、めっちゃ前置きのホラー映画の話が長くて、ボク、ちょっと寝落ちしそうになってました…それで…

デス あ、それと、映画人脈関係への補足なんだけど…

【ここから3分喋りつづける】

…あと、ジェームズ・ワンの後ろ盾でデビューしたデヴィッド・F・サンドバーグがこの春に公開になるDCヒーロー映画『シャザム!』を監督してる。昨年大ヒットした『ヴェノム』の監督も『ゾンビランド』のルーベン・フライシャーだしね。

オジサン なんか偉そうに、いま、『ゾンビランド』の監督とか言ってますけど、ボクは『ゾンビランド』観てるけど、デスのひとは観てませんからね、うふふふふ。

デス うん、ちなみにザック・スナイダーのリメイク版の『ドーン・オブ・ザ・デッド』も観てないです。
(※そんなデスの人ですが、一応はホラーファンです)

オジサン 偉そうに語ってる割に…(笑)
まぁ、そういうことも含めて、あんまり厳密に正確にってことに拘りすぎないで語っていくので、思いつきとか適当な記憶で喋ってるときがあることはご承知おきいただきたい、って感じですかね。 

デス そうですね(笑)
 で、ヒーロー映画とホラー映画っていうのは、要するにどちらも超常現象を描いている。非日常的、ある種ファンタジックなものを描くという意味では共通している。で、特に最近のDC映画の迷走っぷりっていうのは、ひたすら話がダークで、かつヒーローの本質・人間の本質を描こうとしているんだけど、もっと普遍的かつ日常的な、当たり前に存在しているけれども大事な人間関係みたいなものをちゃんと描けていないのが多い。家族同士、友人同士、恋人同士の描写なんかね。ジェームズ・ワンはそういうものを描けるひとだということが、過去の作品で明らかだったから、『アクアマン』は成功するだろうと。

「DC映画のヒーローは悩み過ぎだった」

オジサン そもそもアクアマンが最初に出てきたのって…

デス 最初に出たのは『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』。

オジサン で、そっちはちらっと出てて、ちゃんと出てきたのが『ジャスティス・リーグ』ですよね。『ジャスティス・リーグ』でアクアマンが出てきたときの印象はどうでした?デスのひととしては?


デス うーん、あのときは…豪快でちょっとお茶目なところはあったけれど、今回ほどじゃなかったよね。

オジサン そうですよね。

デス だから、ああいう風にもっとお茶目な部分、可愛らしい部分が前面に出てきたっていうのは間違いなくジェームズ・ワンとモモアさん(アクアマンことアーサー役のジェイソン・モモアさん)が、映画作り役作りの時点で考えたことだと思う。『ジャスティス・リーグ』のときはまだ固まってなかったと思う。

オジサン そうですよね、なんていうか「海のヒーロー代表」ってかんじで。色んなヒーローの中の一人で。

デス で、これまでのDCっていったら、クリストファー・ノーラン版バットマン三部作(ダークナイト三部作)とか『ウォッチメン』とかに通じるような「重厚」「長大」で「ダーク」みたいな作風が多かった。『マン・オブ・スティール』も『バットマンvs.スーパーマン』もその路線。『ワンダーウーマン』は割と王道の路線に行ったけど…、あ、で、その手前の『スーサイド・スクワッド』は調子に乗り過ぎて完全にコケた。
 そんで、『ジャスティス・リーグ』は、途中で監督がザック・スナイダーから『アべンジャーズ』のジョス・ウェドンに交替して、そのおかげもあってか、重厚長大ダーク路線が見直されて、わりと軽快でコンパクトにまとまった、で、それで面白くなったという評価もあるけれど、興行収入は落ち込んでしまった、と。だから、DCとしては、もう何やってもダメみたいな状態。

オジサン うん、ボク、正直もうDC(映画)は諦めようかと思ってましたもん。今回のアクアマンの快進撃は、今後のDCには期待しても大丈夫かなーみたいなかんじになって、よかったですよ。

デス ま、これまで、DC映画・マーベル映画に直接はかかわってなかったジェームズ・ワンがアクアマン単体の作品を手がけるという形で、ウダウダと他の作品との兼ね合いとか前作との繋がりとか考えずに作れたこと、そして、いま、どんなヒーロー映画が求められているのか、どういうヒーロー映画を提示すべきかってことを、あの人は分かっているから、DCの駄目な部分(逆に言えばなぜマーベルはあれほど成功しているのか)とかそういうことを踏まえた上で、ワンランク上を目指したものを撮ろうとして、成功した。

オジサン まぁ、そういうことを、映画公開前から主張して、ボクとかに「はいはい、またこの人は勝手にストーリー予想して盛り上がってるよ」みたいにあしらわれていたわけですよね。
で、実際に見て、言いたいことは?

デス まぁ、後から他のひとの意見とかツッコミをみれば、若干のアラもあるかな、って気もするけど、初見の印象は「限りなくパーフェクト」に近い。

オジサン 見終わったあと「素晴らしかったですね」って言ってましたよね。

デス うん、「素晴らしいの一言!」。マーベル映画で言うなら、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(今後はGOTGと略す)や『ブラックパンサー』を初めて観たときのような感覚。

オジサン ボクとしても、映画全体としての満足度は高いですね。ちょこちょこ気になるところもありますけど、そういうのは映画につきものなので…。

デス これまでのDC映画はヒーローになるまで、あるいはヒーローになってからスーパーパワーを使うまでの過程を無駄にウダウダ描き過ぎてた。ヒーローになる過程ってマーベルでも描かれているけれど、ぶっちゃけDCの主人公たちは悩み過ぎ。そこ悩んでたら駄目だろ!みたいなのが多い。

オジサン ケケケケケケ

デス DCに限らずだけど、ヒーローになる過程ってのはだいたいパターンがいくつかに決まってるから、それウダウダ見せられるってのにはけっこう皆飽き飽きしてるっていうか、さっさと戦ってヒーロー活動しろよ!っていうフラストレーションも観客からしたらあるから、だから、アクアマンは最初からアクアマンになってて…途中で別のキャラクターとの会話の中で回想シーンなんかを挟む形で、いかにアクアマンになっていったのかを断片的にだけどわかりやすく提示していく、それでストーリーのテンポがよくなった。

オジサン あれは見事だったと思います。

デス そうそう。ウダウダせずに、でも、アクアマンにもいろいろ悩みがあるんだねってことが表現できていた。

「アクアマンは観ていてストレスのない映画」

デス 今言ったような、映画内における「現在」のシーンと回想シーン、そして戦いのシーンがテンポよく切り替わって分かりやすく編集されているっていう、ストーリーの構成が非常に巧妙だったよね。あと、最初のお父さんとお母さんが一緒に暮らしている場面でも、ちゃんとニコール・キッドマンがめちゃくちゃカッコよく戦うシーンを入れたというのがよかった。アクションシーン出すタイミングとしてもよかったし、戦うのが女性キャラっていうところもよかった。

オジサン ネットなんかでも言われてますけど、ダラダラと話が進むところが無くて必ずすぐにアクションシーンが入るっていうところが大きなポイントですよね。あとはちゃんと人命救助をするっていうとこ…

デス そうそうそう。宇多丸さんも言ってるやつ。「最近のヒーロー映画、特にDC映画が人命救助をあまりしない、超人的な能力を持ってして人命救助をするのがカッコいいのに」っていうね。人命救助する場面っていうのは、例えば昔の『スーパーマン』では出てきたのに、『マン・オブ・スティール』以降はあまり目立っては出てこない。人命救助するヒーローに拍手喝采する、そこにカタルシスを覚えるというのは確実にあったはずだから、『アクアマン』では人命救助をちゃんとやったというのも良かった。あと、あれだね、ギャグが滑ってない。

オジサン (笑)

デス マーベルはもともとコミカルだし、だいたいどの監督がどの作品をやってもセンスのよいコメディシーンが入ってるんだけど、DCは全体的に暗くて、コメディシーンが少なめだった上にそれがいちいち滑ってる。あとなんか、オヤジ目線の下ネタみたいなのが多い。女性ヒーローの映画である『ワンダーウーマン』でさえ、トレバー大尉がワンダーウーマンに性的な話題を振るとか、『ジャスティス・リーグ』ではワンダーウーマンのお尻をやたら映すとか、そこらへんもセンスが古いしギャグが滑ってる。

オジサン そうですね、そういう不愉快なシーンがひとつもなかったですね。あ、ボク、ちなみにDCEUは『ジャスティス・リーグ』と『ワンダーウーマン』くらいしか見てないんですけど、なんていうか、こう、若干イラつくんですよね。

デス そう!でも、『アクアマン』にはイラつきがない。そこはジェームズ・ワンのセンスもいいんだろうし、あとは演じている役者陣もセンスがいいんだと思うよ。

オジサン 衣装も変に露出してたりしないですしね。だって、あれ、海のヒーローだから、露出しようと思ったらいくらでもできるわけですよ。ちゃんと戦えそうな格好でちゃんと戦っててよかったです。

デス メラの衣装も、あれでもセクシーと言えばセクシーだけれど、主体的なファッションとしてのセクシー…

オジサン あれ、昔の映画だったら、おへその辺りとか出しちゃってた可能性ありますよ…ビキニっぽくして…

デス あとはハイレグとかね。で、カメラワークにもいやらしいかんじのところがなかったし。

オジサン そう、そういうところも、よかったです。

=Vol.2に続く=

オマケ:「アメコミ映画とホラー映画の両方を撮っている監督リスト(思いついたのを挙げてみたよリスト)


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