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014 『シン・エヴァンゲリオン劇場版 :‖』は、「風立ちぬ/庵野版」でした。

※本文はエヴァはもちろん、いろんなネタバレを含みます。

仕事が繁忙期。

疲れた。

けど、エヴァの公開となれば話はべつ。

ほぼ満員のIMAXシアターで鑑賞しました。
コロナの影響で、満員の映画館は去年の『パラサイト/半地下の家族』以来だ。

中学生の頃、『エヴァンゲリオン』は観てはいけないものだと思っていた。

噂によると、ロボットがロボットを食べるらしい。

なんじゃそりゃ。

怖い。だから観ちゃいけない。

観たら呪われる。


高校1年のとき、友だちの家で『序』がかかっていた。
DVDが絶賛再生中。

ぎゃっ!!
観たら呪われるエヴァンゲリオンだ!!

自分はただちに逃げ出したかったが、そうもいかず、『序』を観た。



自分は間違っていた。

あれはロボットじゃなかった。
それに、そんなに食べたりしない。

そんでもって面白かった。
自分好みだった。
もうとっくに出会ってたかった。

しかし、ひとつだけ間違ってはいなかった。

エヴァを観たら、“呪われる”。

エヴァの呪縛である。

『序』を観た後、TV版も、以前公開されていた劇場版も観た。

ストーリーの意味がまったく分からなかった。

何回も見直した。でも分からない。

おめでとう。気持ち悪い。

呪われた。こんなものを見続けるなんて。

『破』は映画館で観れず、『Q』は観た。
そのときの気分と言ったら!

やっとスクリーンでエヴァが観られる。

いざ上映が始まった『Q』。

そのときの気分と言ったら。


なんじゃこりゃ。

『クローバーフィールド』を観て、画面酔いしたとき以来のトラウマ級の映画体験。


そこからしばらく経っての、『シンエヴァ』。

公開が延期になって、母親が死んで、また延期になって、やっと公開。

なんだかんだ楽しみだったわけだけど、
今回もまた衝撃だった。


なんと


ストーリーが分かり易っ!


エヴァらしからず、ストーリーが分かり易い。
普通に感動するわ。

もちろん、専門的な用語とかはよう分からん。

でも、大筋はたいへん分かり易いんです。


この映画は、エヴァの“呪いをとく”
そんなお話だったんです。



※ここからネタバレ区域に入ります。




前半はジブリです。この映画。

皆んな働いてます。
労働こそが、生きるということ。
生きるとは、働くこと。

ジブリの世界じゃ、子供も働きます。

魔女も運送業者だし、
道に迷った女の子は、湯女やってるし。

自然とともに生きている感じもジブリ感。

宮崎駿の思想の賜物だけれども、
庵野秀明監督の師匠は宮崎駿。

庵野監督の師匠へのオマージュか。


心に傷を負ったシンジ君も、このジブリワールドで心が癒されていきます。

レイのそっくりさんも、労働を通して、人間性を見出していきます。
これは、『千と千尋の神隠し』におけるカオナシに似てる。

匿名性の象徴、
他人の声を借りないと上手く喋れない、
顔のない人物=カオナシも、
銭婆のもとで働くことで居場所を見つける。


「恥ずかしい」
制服を着せられたレイのそっくりさんは、
アダムとイヴよろしく羞恥心をもって、完全に人間に。

名前も得たところで、ビチャッと退場。


君の名は?

まさかあの大ヒット映画も関係してくるとは。



ジブリ村に、ミサトさんの宇宙戦艦がやってきて
シンジ君も仲間に加わることに。

お父さんと、対話をするという目的の為に。



『君の名は。』
大ヒット映画ですけど、自分は好きではないです。

なぜなら、いちばん描くべきシーンを描いていないから。

それはヒロインと、お父さんの対話。

あの映画、誰がどう見ても、ラスボスはヒロインのお父さんですよね。
あのお父さんをいかに説得するかがクライマックスのはず。

ところが『君の名は。』ではそこを一切描かない。

逃げたな。製作陣。

だから嫌いです。

でも、『天気の子』は大好き。
惹かれ合う2人が、恋を成就させたがために世界が滅びる。

まるで『破』。

ヒロインはチョーカー着けてるし。
母親の死の呪縛から解けたとき、チョーカー壊れてるし。


さて、『君の名は。』同様、逃げていたのがエヴァ。

エヴァにおける最大の敵は?

そりゃ碇ゲンドウですよね。

死んだ奥さんにもう一度会いたいというエゴのために、全生命体を滅ぼさせるテロリスト。
碇ゲンドウ。

シンジ君がお父さんを倒さなければ、この物語は終わらない。

今回、ようやくシンジVSゲンドウが描かれる。

......と、その前に、リツコさんがゲンドウに向かって銃をぶっ放すところが最高でした。
リツコさん! 今回はちゃんと撃てた!!

しかし既に人間じゃないゲンドウは銃では殺せず。
シンジ君との『XーMEN アポカリプス』的なおもしろ対決でも勝負がつかない。

じゃあ、どうする??

お話ししましょう。


話した方がいいという提案は、『破』の時点でレイが既にしていた。

“お食事会”である。

けっきょくその場は流れてしまうわけだけど。

対話が鍵になっているのは、実は最初から設定されていたみたい。

ここで、ゲンドウの内面が映し出される。

ゲンドウの過去が。

なにを考え、なにに苦しんで生きてきたか。


なんかすごい気持ちわかる。
ああいう親戚の集まりとかマジ最悪だ。

親戚の皆さん、気をつけましょう。
テロリストが生まれる危険あります。

話を聞いてみりゃなんてことない。

ゲンドウも「おめでとう」されて退場。


そしてはじまるエヴァのお葬式。

カヲル君、アスカ、レイ。

昔から「エヴァンゲリオン」の世界を機能させる為に、仕組まれた子供たち。

皆んなが解放されて、すべてのエヴァも解放される。

観客も、エヴァの呪縛が解かれていく。
新しい、もう一つの結末へ。


宮崎駿監督の『風立ちぬ』は、
主人公、堀越二郎が
“美しいものをつくりたい”という理由で零戦をつくる。
二郎の思想とは無関係に、零戦は大量の人を殺してしまう。

『風立ちぬ』のラストで、二郎は戦争の残骸と対峙し、地獄へ堕ちる覚悟を決める。



大量のエヴァの残骸。
エヴァは、庵野秀明監督が創り出した零戦だ。

零戦に乗った人は帰ってこなかった。

でもエヴァはそうじゃない。
みんな、もう降りていい。


皆んなを解放したシンジ君。

しかしシンジ君は、深淵に堕ちたまま。

このまま、シンジ君は皆んなの犠牲になってしまうのか......。


そうはさせない。


そこへミサトさんに導かれ、
“最後のエヴァンゲリオン”に乗ったマリが登場。
シンジを救い出してくれる。

『風立ちぬ』は、
最後に堀越二郎の奥さん、菜穂子が二郎を救い出してくれます。

ダンテの『神曲』のベアトリーチェ。
『風立ちぬ』の菜穂子。

マリは、その立ち位置だったんですね。

あ、そうそう。
宮崎駿の『風立ちぬ』で、主人公 堀越二郎の声を演じたのは、
庵野秀明監督その人。

ユーミンの曲もちゃんと聴こえています。


なかば強引ではありますが、エヴァを産み出した庵野監督自身の手によって、
我々はエヴァから降ろされました。

この先、どんな未来があるのか。

自分の呪いは10年くらいだけど、
TV版のエヴァから呪われてしまった人たちは、
どんな気持ちであのラストに向き合ったんだろう。


大人になったな。


明るい、別のルートがありますことを。

母親がガンで死んで、自分も線路が切り替わった気がする、今日この頃。

この映画が特別なものになりました。


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