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003 ビリー・アイリッシュの引力

ビリー・アイリッシュがMステで歌っていた。

ソファに座って。

隣にはギターを弾く兄貴。

なんだこれは。

初めて行くライヴだったら帰りたくなるアコースティックバージョン。

『bad guy』


思った。ビリー・アイリッシュになりたい。

ソファに腰を据え、

アンニュく歌うたって、

それがお仕事、

そんなん、あるワケないがな。


ある。ビリー・アイリッシュになりたい。


ソファにダラっと座って、歌をうたってお金を稼ぎたいわけじゃない。
(できたらいいけど)

ソファにダラっと座って、歌をうたうことを、「仕事」として成立させるサマが格好良すぎるんだ。

そのかげには並々ならぬ努力と、苦悩があることは百も承知だけど、

一般的な「仕事してる感」が呪いのように思えてならない。


ガンで亡くなった母が、どうしてガンになったかなんて、理由をひとつに絞ることは無理だ。

その血を引いた者としては、自ずとチェックリストをこしらえる。

あなたのお母さんについて当てはまる項目にチェックを入れてください

・タバコを吸う「 」

・お酒をよく飲む「 」

・遺伝的な要因「✔︎」(母の父と祖母はガンだった)

・仕事をがむしゃらにやっていた「✔︎」


ナースだった母は、病気になる前は外来専門のクリニックに勤めていた。

40歳半ばで転職したもので、プレッシャーもあったんだと思う。

その病院のルールや、専門用語、薬の名前、パソコンの使い方だの、休みの日もずーっと勉強していた。

仕事場の人間関係にも悩み、いろいろ気を配っていたみたいだ。

疲れ果てて、リビングのカーペットに横たわる母の姿を見るのが日課だった。


一生懸命働く。

休みの日も、仕事のことを考える。ずっと。

素晴らしいこと。
きっと、多くの人はそう思うだろうし、賞賛するだろう。


本当に?

それで死んでも?


厄介なのは、これがガンになった要因と断言ができないこと。(ガンのやつめ)

そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

とくに母は他にも難のあった人だから。


仕事を一生懸命やることは素晴らしいことだ。

でも、一生懸命の見え方って1パターンだけ?

「仕事してる感」が出せなきゃ、“仕事してる”に認定されないの?

だれが、

認定してるの?

だれ?

殺されてたまるか、

そのだれかに。

「一生懸命」の見え方に、「仕事してる感」の見え方に、もっとバリエーションがあったなら、

母は死なずに済んだかもしれない。


母の亡くなった年齢から考えて、私は人生の折り返し地点に立っている。

チェックリストを埋めて、母の見なかった景色を少しでも見たいのだ。

解明したいんだ。

どうしたら、人並みの年齢で死ねるのか。

だれか、

グラミー賞くれませんか?










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