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バルト旅 ―エストニア

2月22日

エストニアの首都タリンに到着した時の天気は地獄だった。2月の極寒に加え大雨強風、霙も降っていて、とても地図を広げながら道を探せる状況ではなかった。窓からオレンジ色の灯りがもれる建物に吸い込まれるように入ると、中に漂う美味しい匂いに身体の力が一気に抜けた。

ひよこ豆のキーマカレーとキッシュ、ボルシチ。すべて感動の美味しさだったが特にこのボルシチ、この滞在で3回同じお店で食べた。冷え切った身体に染みわたる玉ねぎと野菜の出汁、すりおろしたにんにくと葱の強い香りとさっぱりしたサワークリームの相性が最高過ぎる。

近くのスーパーで買ったパンとサラダ、持ってきたドリップコーヒーとラトヴィアで買ったお菓子で夕食。豪華なホテルではないけど、やっぱり自分の部屋で食べるのが落ち着く。あとスーパーで普通のものを買うのが楽しいので旅先の部屋食は好き。

2月23日

朝と夜が全く同じように真っ暗なので、この写真を撮ったのがどちらか忘れてしまった。旧市街の中で唯一そのまま残っている中世の城壁が門になっていて、近くには花屋さんが並ぶ。石畳に反射する柔らかい光と真っ黒な空が美しい。寒くて暗くて硬い雰囲気の冬に、色鮮やかな花が映える。

まだ薄暗い朝の静かな街を歩くのが楽しい。犬を連れた人がちらほら。石造りの建物に囲まれた路地に自分の足音だけが響く。

”セーターの壁” 写真撮るなと怒られた

国立オペラ座でバレエ・ジゼルを観た。二楽章のヴィオラを特によく覚えている。

綺麗なレモン色の壁と洗練された明るい雰囲気

初日に吸い込まれたあのお店でお昼。キッシュを頼んだ時にサラダが付いているだけで嬉しいのに、ただの葉っぱじゃなくて色々な野菜やナッツが入っていたりドレッシングが美味しかったりするところに質の良さが現れている。

午後は城壁に登ったり雑貨屋さんを見たりして歩き回った。

城壁の上から
冬のこういう木が好き

夕食は日本からメールで予約したレストランへ。料理は全部びっくりするほど美味しかったし接客もとても感じが良かった。お店の人の格好も素敵だった。黒Tシャツとジーンズに同じエプロンで統一しているけど、Tシャツの形やジーンズのデザインはそれぞれ好きなものを選んでいて、またそれがしっかり似合っていて格好良かった。

ボトルの形とエチケットが洒落ている

2月24日

最終日。2月24日がエストニアの独立記念日だとは知らずに偶然滞在日と重なっていて、旧市街で戦車や軍隊を見ることができた。街はいつも以上に国旗で溢れ、国旗の配色を意識した服や鞄や帽子を身に着けた人がたくさん歩いている。人びとの一体感と国や民族への誇りを感じて素直に感動した。”母国”の存在の大きさ、自分が生まれ育った土地の歴史の捉え方が私とは全く違うんだろうな。

お揃いで国旗色のニット帽をかぶる夫婦
タリン空港で食べたサンドイッチ
空の青、森の黒、雪の白(国旗)

いよいよ最後の目的地、ヘルシンキへ。

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