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さようなら、うめぼし。

うめぼしを捨てた。

祖父母の家、父の実家の裏庭にある
家をも刺しそうな腕をもつ梅から
そのうめぼしは作られている。

遺品整理していると、うめぼしがやまのようにでてくる。
いつ作られたか分からないうめぼしはいつでも食べれるようにか、堂々とあちらこちらの床や冷蔵庫にたたずんでいる。父は家にある果物を余すことなく収穫する主義だ。友人に配ったり、自分で食べたり、果物が腐る手前で加工したり、冷凍する。
もったいないのが嫌いなのだ。

食べきれない。友人にも分けきれない。みていられない。
わたしには。
みていると腹がたってくる。いなくなるんだったら、すべて食べてからにしてよ。
だから、うめぼしとさよならすることにした。

3月末、春の近づく日和な陽気のなか、梅の木の下でわたしはひとり
お父さんに怒られることなく、うめぼしを捨てていく。
梅は蕾から少し花びらをのぞかせて、わたしをみてる。
育てられたうめぼしは育ての父を亡くし、わたしに捨てられていく。

そのとき、うめぼしの香りでわたしの口のなかは唾液でいっぱいになった。

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