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となりのこもんちゃんを悪どく言うといいよ

 しくみちゃんの横の席のこもんちゃんたちがそのとなりのこもんちゃんたちの悪口を言いはじめた。それをきいたそのまたとなりのこもんちゃんたちはとなりのとなりのこもんちゃんたちと同じようにとなりのこもんちゃんの悪口を言いはじめたのさ。
 こもんちゃんたちは花のように可憐だったから、どんなにその口から悪どい言葉がとびでても、しくみちゃんはみんなとってもかわいいなってすっごく感心してた。かわいいかわいいこもんちゃんたちがあんまり楽しそうにとなりのこもんちゃんたちの悪口を言うもんだから、しくみちゃんはその日からかなしい顔をしている人にはとなりのこもんちゃんのことを悪どく言うのがいいとすすめることにした。

 ある日、トイレでこもんちゃんが泣いていた。目は赤くなっていてとってもかなしい顔だった。しくみちゃんはそのこもんちゃんの頭をなでて、となりのこもんちゃんのことを悪どく言うといいよと教えてあげた。すると、こもんちゃんはしくみちゃんにとなりのこもんちゃんのことを悪どく言いはじめた。それがあんまりにも悪どかったので、しくみちゃんは少しびっくりして目を丸くした。だけど、そのこもんちゃんはとってもかわいく笑ったので、やっぱりとなりのこもんちゃんを悪どく言うのはとってもいいことだと思った。

 時は過ぎて夏、クラスでとあるこもんちゃんがかなしそうな顔をしていたので、となりのこもんちゃんを悪どく言うといいよと教えてあげた。すると、そのこもんちゃんはもう二度としくみちゃんと話してくれなくなった。しくみちゃんはかなしかったので、となりのこもんちゃんのことを悪どく言ってみた。すると、そのこもんちゃんがかなしそうにしたので、となりのこもんちゃんのことを悪どく言うといいよと教えてあげた。そしてまたそのこもんちゃんもしくみちゃんと二度と話してくれなくなった。しくみちゃんはまた悲しくなったので、となりのこもんちゃんを悪どく言った。すると横にいたこもんちゃんがかなしい顔をした。しくみちゃんはそれを見てとなりのこもんちゃんを――。
 しくみちゃんの肩を誰かがたたいた。しくみちゃんはびっくりしてとびあがった。ふりかえってみると、あゆいちゃんがいた。

「あゆいちゃん、となりのこもんちゃんを悪どく言うといいよ」
「となりにいるのはしくみちゃんだけだよ」
 あゆいちゃんは言う。しくみちゃんはあたりを見回すとごめんなさいと頭を下げた。

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