続・本の散歩 53/69@川崎市 妙楽寺

画像1 『青梅雨』永井龍男。明治に生まれ大正から昭和に活躍した作家だが、今読んでも目が覚めるほど新しい。研ぎ澄まされた言葉で紡がれる文章の美しいこと。彫琢を極めるとはこのことか。昨今は映画も小説も長尺が疎まれる時代だが、短編を本領とする永井のキレの良い小説は現代向きかもしれない。「青梅雨」は一家心中をした家族の前夜の様子を描いたもの。互いを思い合う家族の慈しみ溢れるやり取りと繊細な情景描写は、シリアスなのにどこかカラッと爽やかな余韻を残す。本書を撮るならこの時期と、そぼ降る雨のあじさい寺へ。青々しい緑に暫し忘我。

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