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心臓病を再考する

 何十年もの間、医学界は心血管系疾患を主に心臓の問題と見なしてきました。しかし、画期的な新しい勧告が、その時代遅れのパラダイムを打ち砕こうとしています)。

 米国心臓協会(AHA)は、心臓単体の健康を肥満、糖尿病、腎臓病との関連に位置づける根本的な再概念化を発表しました。この「心臓血管-腎臓-メタボリックシンドローム 」という総合的な視点は、私たちが死因トップの心臓病を理解し、それと闘う方法における激的な転換を意味しています。心臓病はもはや個別の疾患として隔離することはできません。心臓、腎臓、代謝、体重は切っても切れない関係にあるため、予防と治療には根本的に統合されたアプローチが必要なのです。この勧告によると、米国成人の3人に1人は、心血管疾患、代謝異常、腎臓病といった危険因子を3つ以上もっています。この勧告は、西洋医学と公衆衛生のあらゆる分野に波紋を呼ぶ衝撃波を巻き起こすでしょう。

 大胆な新しい青写真(shattering that outdated paradigm)では、理想的な健康状態(ステージ0)から腎不全を伴う本格的な疾患(ステージ4)までの5つの段階に分けています。各ステージにおいて、これまで想像もつかなかったような範囲と野心的なスクリーニング検査と介入方法が実施されます。医師がコレステロールだけでなく、腎機能、血糖コントロール、ウエスト周囲径、健康の社会的決定要因を検査することを想像できるでしょうか?

 ステージ1では、単に体脂肪過多や糖尿病予備軍であるというだけで、栄養カウンセリングや減量目標のきっかけとなります。ステージ2では、血圧、血糖、コレステロールの調整に対してより積極的なアプローチが行われます。

●心臓血管の運命を予測する
 これはほんの始まりに過ぎません。この勧告は、個人の心臓発作、脳卒中、心不全における10年と30年の可能性を予測するために、新たに更新されたリスクカリキュレーターを提唱しています。健康データが統合され、パーソナライズされた予測スコアカードが作成される未来に備えましょう。しかし、この試みは新しい検査や統計よりも重要と言えます。 それは、縦割り的な考え方を一変させるものだからです。つまり、肥満、糖尿病、腎臓病が心臓血管疾病の単なる危険因子ではなく、共犯者であるという驚くべき事実を意味しているのです。
 
●医療界の再編
 この大胆な計画は、医師の訓練方法、分野を超えた協力方法、さらには医療システムの支払い方法まで全面的な再構築を求めています。これは単なる生活習慣の改善を勧める勧告ではありません。 心臓血管の考え方と実践に革命を起こすために、医工複合体全体を動員するキャンペーンなのです。これは心臓病に対する決定的な転換点なのです。大胆なこの勧告は、既成概念が崩れ去るような内容です。 唯一の問題は、医学界が心臓協会の勇気とビジョンに賛同できるかどうかです。

 次のステップは、必要な研究への投資、関係者間の連携、医学教育と支払いモデルの変革です。米国心臓協会は、心臓の健康について根本的な再考を促す指針を打ち出しました。私たちは、他の医療界が新しい方向性に応えることを願うばかりです。
 

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