あとがき

この留学日記は、前半と後半で調子が変わっている印象を受けたのではないかと思われる。
 留学前半は、ドイツ語や文化の違いに苦戦し、経験もしたことのない寒さと日の短さ、知り合いもいない、一人旅行、勤勉に専門とドイツ語に悪銭苦闘。
 一方、留学後半は、日が長くなり、ドイツ語も自由になり、学問的活動も充実、友人と旅行、パーティーを謳歌。

 当時の文章や写真を整理し、文章を再度読み返すと、当時の苦しく内向的で勤勉だった前半と外交的で楽しかった後半がありありと思い出せる。当然、実体験者の私の日記なので、文字化されてない事柄や映像も、脳内記憶の引き出しから走馬灯のようにあふれ出てくる。

 さて、この前半・後半の転換のトリガーは何だろうか。
 陰鬱な冬と、喜びあふれる快適な春という天候の影響は一つかもしれない。
 前半でコツコツドイツ語を勉強した貯金が後半を楽しくさせたのかもしれない。
 友人関係も前半と後半でがらりと変わったことも要因かもしれない。
 それを現在の自分と重ねると、どうだろう。現在は、ここでいう留学前半の状態なのか、それとも後半なのか。その転換点はあったか、これからあるのか。それは何か。自分でコントロールできる転換点であろうか。

 皆さんはどう読んだであろうか。
 独りよがりの文章で、補足説明も不十分な所もあり、さぞ読みにくかったのではないかと思う。

 同じくゲッティンゲン大学出身で、ドイツ帝国初代宰相のビスマルク(1815-98年)は、
Nur ein Idiot glaubt, aus den eigenen Erfahrungen zu lernen.
Ich ziehe es vor, aus den Erfahrungen anderer zu lernen, um von vorneherein eigene Fehler zu vermeiden.
 訳:
 愚者だけが自分の経験から学ぶと信じている。私はむしろ、最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験から学ぶのを好む(愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ)、
 (「オットー・フォン・ビスマルク」(2020年8月25日の版)『ウィキペディア日本語版』)

と語った。
 自分が書いた日記を振り返り、その経験から学びを得ようとする私の行為は、ビスマルクに言わせればIdiotな行為である。
 一方、他人である皆さんが、私の経験から学ぶことには、皆さんの誤りを避けるために意味があると言っている。

 社会的・経済的事情により、留学が出来ない、断念した人もいると思う。もしくは、これから留学を考えていたり、留学中、すでに留学を経験済みの人もいるかもしれない。
 そういう人たちが、この留学日記を読んだことで、人生に何かの役に立てれば、幸いであると思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?