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ポスト・コロナにおけるインドの失業と就業保証(JG) (2020年11月17日、ミント[インドビジネス誌])

 前回に引き続き、就業保証関連の記事の紹介です。今回はコロナ禍によって一時は失業率が27.11%に達したインド経済のお話です。
 インドについては、以前の記事でも現代貨幣理論(MMT)への関心がインドで高まっており、MMTの就業保証プログラム(JGP)を引き合いに出しながら、既に国内で導入されているインド版就業保証政策(MGNREGS)の見直しが議論されていることを紹介しました。
(参考記事:【インド×MMT】『「現代貨幣理論」のレンズによる経済政策』(2020年10月14日、INVEST INDIA):https://note.com/goetche_chan/n/n82aa228a8968)
 今回の記事では、コロナ禍での失業率の推移を分析し、現行の就業保証政策が農村部の失業率改善に果たした役割と、労働人口から脱落した失業者の問題に着目し、農村部に限定的に導入されている現行制度が都市部でも必要とされる可能性を指摘しています。
 ちなみにインド版JGPは農村部に限られている上に、今回は仕事への需要が供給を上回ったことが指摘されています。「10月には、2,440万世帯が仕事を要求したが、80%強の1,960万世帯だけが仕事を得られた。」なんだ、完全雇用じゃないじゃん、というツッコミが来そうですが、農村部限定とはいえ同政策がなければ1960万世帯が露頭に迷い景気回復を待つことになった可能性もありますし、全国版JGPであれば更に仕事の供給能力は拡大するでしょう。

※本記事はあくまで学習目的の範囲内でのご利用に止めていただきますようお願いいたします。

原文リンク:https://www.livemint.com/news/india/urban-india-may-gain-from-a-jobs-guarantee-policy-11605626525860.html

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『就業保証政策はインド都市部にも有益である可能性』(2020年11月17日、ミント[インドビジネス誌])

筆者:ヴィヴェック・カウル

コロナで経済活動が崩壊したため、インドの失業率は上昇し始め、5月3日には27.11%とピークに達した。 それ以来、失業率は低下し11月15日には5.45%にまで落ち込み、コロナ禍前のレベルよりもさらに低くなっている。 本誌では数字の背後にある実態を見ていく。

ポスト・コロナ下での失業率の変化

 インド経済監視センターのデータによると、3月末から5月末までの失業率は20%を超えていた。これは主に、パンデミックの蔓延を抑制するために発表されたロックダウンによるものだった。経済活動が停滞する中、企業は存続のために人々を解雇しなければならなかった。 一部の企業も倒産し、失業に拍車をかけた。5月以降は状況が改善し、失業率は6月21日以降8.48%で一桁台になった。11月15日には5.45%で、2020年で最低となった。

5月以降の失業率の低下の背景

 経済の漸進的な開放は経済活動を加速させ、それ故に失業は減少した。5月中旬、インド経済監視センターはマハトマ・ガンジー国立農村雇用保証制度(MGNREGS)への支出割り当てを4,000億ルピー(=約5,604億円)増やし、年間の合計割り当ては1兆150億ルピー(=約1.4兆円)になった。これはインドの農村部で雇用を創出し、失業率を下げるのに役立った。それにもかかわらず、MGNREGSの下での仕事への需要は、供給された仕事よりも高かった。10月には、2,440万世帯が仕事を要求したが、80%強の1,960万世帯だけが仕事を得られた。

失業率低下の他の原因について

 労働参加率(LPR)または15歳以上の人口に対する労働人口の比率は、2月以降低下している。2月23日の労働参加率は43.2%だったが、4月26日には35.37%の低水準に落ち込み、11月15日には39.54%に上昇した。参加率は4月よりも高いが、それでもコロナ前よりは低い水準だ。

これは経済全体にとって何を意味するか

 仕事を見つけることができなかった多くの人々は、求職をあきらめて労働人口から脱落し、労働参加率を低下させた。さらに、失業率は、働く意欲があり、積極的に仕事を探している失業者の数によって定義され、労働人口のパーセンテージとして表される。仕事を探していない個人は、失業者として、あるいは労働力の一部としてさえ数えられない。この(失業率算出の)方法論もまた、失業率をより低く見せている原因といえる。

この問題に取り組むために何ができるか

 この一見低い失業率によってより大きな問題が覆い隠されている。 インドでは農村部よりも都市部の方が、より多くの労働者が労働人口から脱落している。2月の都市部の労働参加率は40.48%だったが、10月までに37.54%に低下した。 一方、農村部では43.67%から42.25%にしか低下しなかった。この理由の1つが、MGNREGSが農村部にに雇用を提供しているという点である。都市部でも同様の就業保証制度が必要になるかもしれない。(以上)

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