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英国ガーディアン紙がMMTの就業保証(JG)の導入を主張(社説、2020年11月16日)

 英国ガーディアン紙が、同国の財務大臣を批判し、ついにビル・ミッチェル教授が提唱する就業保証(JG)制度を導入すべきであると主張し始めました。(写真はリシ・スナック財務大臣)

 内容は以下のとおりですが緊急で仕上げたので、間違いがあったら指摘していただければ助かります。また、本記事はあくまで学習目的の範囲内でのご利用に止めていただきますようお願いいたします。

原文リンク: https://www.theguardian.com/commentisfree/2020/nov/16/the-guardian-view-on-rishi-sunak-time-to-create-jobs-not-anxiety

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**『スナック財務大臣へのガーディアンの見解:不安ではなく、雇用を創出する時だ』(2020年11月16日、ガーディアン:社説) **

コロナ禍は、経済における総支出を可能な限り完全雇用に近づけるレベルに維持する上での政府の主要な役割を明らかにした。

 英国における貧困の大部分は、失業、不十分な労働時間、低賃金により生じている可能性がある。パンデミックでより鮮明になったのは、この国であまりにも多くの人々を苦しめている極貧は、労働者の欠点とは何の関係もないということだ。原因となっているのは仕事の不足であり、そのためリシ・スナック財務大臣は来週の小型予算で、600万世帯の低所得層への週20ポンドの追加給付金の支払い(2020年4月)を停止する予定を破棄すべきだ。レゾリューション財団の報告によると、パンデミックが長引くほど、最貧層が被る被害は大きくなる。危機の矢面に立たされただけの人々は、その代償を払わされるべきではない。

 コロナ禍は英国の格差を浮き彫りにした。労働人口の下位5分の1は、収入が急激に減少し、貯蓄は底をついた。貧しい人々には、お金はほとんど残されていないか、もしくはゼロであり、クリスマスの最低限の飾り付けをする余裕すらない。トップの富裕層はというと、銀行口座には現金が山積みになっている。ゴードン・ブラウン前首相がレゾリューション財団報告書の発表で明らかにしたように、必要なのはUターンである。スナック大臣が考えを改めない限り、失業率が急上昇し生活水準も急落するこの時期に、30万人の子供を含む約70万人が貧困に陥るだろう。

 これに対しスナック大臣は(今のところ)耳を傾けていないようだ。代わりに大臣は、パンデミックの間に政府が追加の借入を行うことは、自分が「帳尻を合わせる」(均衡財政)ために「難しい選択」を迫られることを意味する、という神話を吹聴し続けている。彼の発言は緊縮政策の根拠を弱めている。大臣は間違った経済モデルを使用して、イデオロギー的な選択をしているのだ。彼が折れなければ、自身が不必要な失業と貧困の責任を負うことになろう。

 コロナ禍は、政府だけが、経済における総支出を可能な限り完全雇用に近づけるレベルに維持し、適正な労働時間と適正な賃金で働けるようにする責任を負うことができることを明らかにした。イングランド銀行は今年、銀行システムに3,500億ポンドを投入したが、実体経済にほとんど影響は見られていない。そのため英銀は、米連邦準備制度理事会(FRB)および欧州中央銀行(ECB)とともに、政府に支出を求めている。 ケインズが示したように、政府の景気刺激策がなければ、経済は長期的な不況に陥り続ける可能性がある。  IMFによる試算では、公共投資をGDPの1%増加させると、GDPが2.7%増加し、雇用が1.2%増加する可能性が示された。

 よく言われることだが、過去10年間は「ミンスキー・モーメント」から始まった。これは、金融危機を最もよく理解しているとされる優秀な経済学者、ハイマン・ミンスキーにちなんで付けられた現象である。 銀行危機とその原因に関する彼の研究は、今や学者には必読の文献となっている。 同様に必要なのは、10年が経った現在、ミンスキーの貧困とその根本原因に関する研究に着目する事である。 彼は次のような鋭い洞察を述べている。「貧困との戦いに必要な要素は雇用創出のプログラムである。 そして、このプログラムによって人々がそのままの状態で(訳註: 事前の技能や資格の習得などなしに)得られる仕事を創出し、現存する貧困の大部分を排除できる事を否定する根拠は、一度も示されていない。」

 英国では、来年には25歳未満の労働者100万人が仕事を探し求めることになるだろうと推計されている。 スナック大臣の雇用創出のための「キックスタートスキーム」では規模が小さ過ぎるし、また民間企業に依存し過ぎているため、多くの労働者を援助することができない。 政府は公共部門を最後の雇い手にし、経済学者のビル・ミッチェルが提案したような、景気循環に応じて拡大または縮小する国家援助型の雇用バッファーストックを備えた就業保証(JG)制度を提供するべきだ。 新型コロナの新しいワクチンは、うまくいけば、公衆衛生の危機を終わらせるだろうが、失業危機はその後も続く。 大臣が行動を起こし、イデオロギーの祭壇で現役世代が犠牲にならないようにするには時間切れになりつつある。(以上)

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