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雨水 stand.fm #38

「雨水(うすい)」

やわらかな雨が上がり
春の兆しの息が
私を通り抜けた

光りながら痛みとともに
根や茎や葉や
心のなかをめぐり
冬に凝(こご)った澱を溶かし
細胞の一つ一つに力を吹き込むので
私はどうしても成長してしまう
痛い
痛い
どうしろというの?
匂いたつことなど
もうないと思っていた
ここでこのまま
息をひそめているのだと

雪がとけ雨水となって
草木萌動(そうもくめばえいづる)とき
目醒めのしるしは容赦なく
光と影とを際立たせる
問いに答えは出ないけれど
いのちは決してとどまらないから
咲かないでいることはできない

私は胸をおさえたまま
光のあなたへ手を伸ばす

※雨水…二十四節気の一つ。2/19ごろから3/5ごろまで。「陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となればなり」/『暦便覧』より
※草木萌動…七十二候の一つ。2/28ごろから3/5ごろまで。

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詩と朗読 poetry night
第38夜は「雨水(うすい)」
スキマ時間に聞いていただければ嬉しいです。


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