見出し画像

人と地域を元気にする地産地消の給食改革! 【第2弾=新潟県新潟市④】

給食を提供する株式会社の発展的な事業展開モデル④

【この連載について】
この連載は、総務省地域力創造アドバイザー/食環境ジャーナリストの金丸弘美さんが、地産地消の給食に取り組む日本全国の画期的な事例を取材したルポルタージュです。
第2弾は、新潟県新潟市で給食サービスを中心に多彩な事業展開を行っている株式会社総合フードサービスを全4回でまとめていきます。
    第1回      第2回      第3回

▼伸びる幼稚園と一次加工食品

 総合フードサービスで初期から取り組んできたものに幼稚園給食がある。
  現在、幼稚園は14件を担当している。
「幼稚園は本社で作って昔は配達をしていた。現在は、法改正があり『認定こども園』ということになり調理施設を園内に作らないといけないこととなっている」(長嶋さん)https://www8.cao.go.jp/shoushi/kodomoen/gaiyou.html(「認定こども園」内閣府)

 社員食堂と同じように、園に人員を配置し食材を送り、こども園内で作って提供することになっている。こども園は規模によるが、2人から5人が配置されて食事を提供している。
 こども園給食の需要は伸びているという。こども園では、園の調理室で料理を作り提供をする必要がある。しかし、野菜の下処理、たとえばカボチャの固いものをカットすると負担がかかる。そこで、あらかじめ本社でカットして下処理をしたもの送っている。現場の負担を減らしこども園での給食をスムーズに提供することが行われている。

11A_幼稚園1

 今後の見通しについて長嶋さんは次のように話す。
「企業の社員食堂は毎年値上げできないし負担も増えている。委託会社も従業員が減り採算もあわなくなっている。次第に縮小されていくでしょうね。
 新潟市中学校給食では当社は設備をもっているので毎年仕事はあります。一方で3年ごとに入札がある他の委託給食では値段があがらない。3年ごとだと人が育てられない。入札には参加するけれども、できる範囲での参加ということになるでしょう」
 となると、子供の健康、未来の世代の成長を考えると、行政は、なんらかの対策を必要とされる。農業を強い産業へと組みなおす、健康対策を強化することによって医療費を減らす、などして給食にも予算を組むなど、なんらかの施策を早めに打ち出す必要があるだろう。

(下写真)児童参加の収穫体験

12_農業体験

画像3

(上写真)子どもたちからの給食のお礼状

▼伸びる炊飯事業と農産物の1次加工

 炊飯事業は伸びている。グループ会社で炊飯事業を行っている「叶味家」へ、いろんなところから注文がきている。
「デパートの物産展やホテルのイベントのご飯は全部当社が炊いています。スーパーの鮮魚売り場の寿司のすし飯とシャリ玉までを「叶味家」が炊いて作っています。
強みは縦釜で釜ごとに炊くことで、細かい注文にこたえられるようになっていること。米は3種類。コシヒカリ、こしいぶき、つきあかり。幼稚園は栄養価を考え7分つきで出しています」(長嶋さん)
 評価が高いのが農産物の1次加工品だ。
 そのなかで枝豆が需要を伸ばしている。農産物には規格外がでる。その有効利用だ。枝豆の規格外を農家から購入してペーストにして販売している。
 新潟県は枝豆の作付が全国1位。ところが販売が7位か8位になっている。なぜそうなるかというと、ほとんど自分たちで食べるので、その分売る枝豆が減ってしまう。
「新潟のお菓子屋さんも枝豆を使いたいが、1次加工をしてくれるところがなかった。
 枝豆は剥くのに手間がかかるが当社は機械を導入して剥いているので合理化できる。またはねもの(規格外)を使用するので低コストで提供できる。枝豆のペーストをお菓子屋さん、餡子屋さん、総菜屋さん、団子屋さんで使ってもらっています。とても喜ばれています。
山形では、粒粒がある「ずんだ」が有名。でもお菓子屋さんによっては粒粒が嫌だという人もいる。当社のものは粒粒、ペーストの2種類を作れるんです。
 使っている茶豆というのは、豆本体と薄皮と色の差があるので、粒粒にすると、薄皮がポンポンと入る。それをペーストにするとわからなくなる。枝豆の組合さんにいわせると、皮に風味がある、うま味があると。それを当社は入れているというわけです」
加工では、新潟のさつまいもの「べにはるか」も加工している。ほかにカボチャ、柿などをペーストで出している。
イチゴの「越後姫」はホールで冷凍にして出している。
ルレクチェ(西洋梨)は、皮を剝いて冷凍して真空パックして出してもいる。

14A_加工食材_DSC_5582

(上写真)イチゴの1次加工食品
(下写真)枝豆の1次加工食品

14B_加工食材_DSC_5587

 「新潟は作物が多いが1次加工をするところがない。群馬とか山形に出して加工してもってくる。そうすると原料費は安いが加工賃が高くなる。とくに運賃が高い。
それで当社では新潟で採れたものを1次加工して出しているわけです。これはもっと増えていくでしょう」と嬉しそうに語る長嶋さん。
 いずれ加工から最終商品を作りたいとも言う。やがて、現地で作られた地産地消の美味しいお菓子や総菜や、食べるお店が、新潟で新たに生まれる日も近いに違いない。


*関連サイト
株式会社総合フードサービス(代表取締役・長嶋信司)
http://www.sogo-food.com/
内閣府「認定こども園」の概要
https://www8.cao.go.jp/shoushi/kodomoen/gaiyou.html

プロフィール
金丸 弘美   総務省地域力創造アドバイザー/内閣官房地域活性化応援隊地域活性化伝道師/食環境ジャーナリストとして、自治体の定住、新規起業支援、就農支援、観光支援、プロモーション事業などを手掛ける。著書に『ゆらしぃ島のスローライフ』(学研)、『田舎力 ヒト・物・カネが集まる5つの法則』(NHK生活人新書)、『里山産業論 「食の戦略」が六次産業を超える』(角川新書)、『田舎の力が 未来をつくる!:ヒト・カネ・コトが持続するローカルからの変革』(合同出版)など多数。
 最新刊に『食にまつわる55の不都合な真実 』(ディスカヴァー携書)、『地域の食をブランドにする!食のテキストを作ろう〈岩波ブックレット〉』(岩波書店)がある。
*ホームページ http://www.banraisya.co.jp/kanamaru/home/index.php


いいなと思ったら応援しよう!