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東大学士入学試験 会場に辿り着くまで

 会社を辞めて東大農学部に学士入学した。上記の二つの記事を読んでもらってからの方がわかりやすいと思うが、面倒であれば読まなくても大丈夫。今回は出願して、受験して、結果を受け取るまでの話を書くつもりだ。

 夏に受験を決めて、ホームページを見に行くと昨年度の受験要綱が掲示されていた。それによれば要項が更新されるのは毎年11月らしい。
 しかし、11月になっても一向に受験要綱が更新されない。12月になってもまだ2023年度の要項のままである。違うページに掲示されているのか?或いは今年は試験自体がないのか?と不安になり、窓口に電話した。社会人になってからというもの、すぐ問い合わせの電話をするようになっている。
 
すると、「忘れていました」という回答であった。これは盲点だった。まさか忘れているとは。俺はすぐに納得して電話を切った。それから三時間くらいして2024年度の受験要綱が掲載された。教訓。すぐ電話した方がいい。

 ここで気が付いたことがある。恐らく学士入学試験は受験者が非常に少ない。何なら俺一人の可能性がある。なぜなら、俺が電話して初めて受験要綱が掲載されたからだ。これは東大当局側での業務優先順位が低いことと、そもそも気にしている志望者が限りなく少ないことを同時に意味している。

 記載通りに事務手続きを済ませ、無事に受験票を受け取ることが出来た。受験番号は0100であった。これは受験者が俺一人でほぼ間違いない(それか、100人いる)。合格者数は「若干名」なので受験者数は合格是非とは関係ないだろうが、多いよりは少ない方がいい。

 受験当日、俺は会社に有休を申請して東京大学の弥生キャンパスに向かった。余談だが、退職を会社で公表したときに「もしかしてあの有休取った日って試験受けてた?忙しい時期だったし単日で取ったから珍しいなと思ってた」と言われた。勘のいい上司は嫌いだよ。
 
 赤門がある本郷キャンパスの、隣にあるのが弥生キャンパスである。農学部のみがあるキャンパスなので、文学部時代には足を踏み入れたことがなかった。試験場所は「農学部三号館の304」と記載されていたので、地図を見ながら正門の真正面にある年季の入った建物に向かう。
 
 「受験会場」と聞くと、至る所に会場の案内が掲示されていて、受験者でごった返しており、各所で激励が飛びかい、円陣やスクラムが組まれているような光景を想像してしまうが(※円陣やスクラムは言い過ぎました)、学士入学の受験会場はそれとは異なる。まず閑散としている。郵便屋さんが構内のポストに郵便物を取りに来ているくらいで、人気がない。
 
 三号館に入ったが、304がどこなのか正直まったくわからない。受付のような場所もない。俺は素早く考えて目の前の階段を上がる。304というくらいだから、少なくとも一階ではないだろう(それか一階に304部屋ある)。
 
 階段を上がるとそこは三階だった。二階はどこにいったのだ。念のため降りてみると、そこは一階だった。危なかった。試験会場が204だったらたどり着けないところだった。ちなみに、入学して三カ月経った今も二階の行き方はわかっていない。建物内をぐるぐるしているとたまに二階にいることもあるので、何らかの決まった手順があるのだとは思う。
 
 並ぶ部屋を一つ一つ確認しながら、三階を一周する。廊下には様々な棚、テーブル、その他ゴミとしか思えないものが置いてある。ポスターや注意書きが壁に貼られ、入り組んだダクトが天井を這っている。
 
 「304」と書いてある教室を発見した。しかし人の気配はない。鍵はかかっていないようで、ゆっくり押すとドアが開く。照明はついていない。15席ほどの小さい教室である。俺は壁を探って照明のスイッチを入れ、とりあえず席の一つに座って荷物を置いた。その時点で試験30分前である。本当にここが試験会場なのだろうか?いくらなんでも、何の掲示もなく、照明も消えているなんてことがあり得るのだろうか。
 
 俺はもう一度立ち上がり、荷物を持って、照明を消して外に出た。改めてドアを見ると、「水産学科講義室1」と書いてあるのを発見した。俺が今日受ける試験は「応用生命科学課程 水圏生物科学専修」である。水産学科ではない。しかし、無関係とは思えない文字列でもある。俺は一度建物の外に出て、そこが「三号館」であることを確認する。確かに三号館である。俺は試験要綱に記載されている番号に電話して、「304と書いてある教室が304なのか」という意味不明な問い合わせの結果、そうであるという回答を得た。
 
 電話を終えて建物に入ると、「学士入学受験の方はこちら」という手書きの紙が貼られたパイプ椅子が置いてあった。電話をしている間に置かれたのだろう。その誘導に従ってまた304に帰ってきた。やはりこの小さな教室が試験会場で間違いないのだ。俺は部屋に入り、照明をつけ、一番前の席に座った。ちなみに、入学してから判明したが「水産学科」は水圏生物科学の昔の名称らしい。もう一つちなむと、この試験以降、入学後三カ月経った今も304を使う機会はない。
 
 なんと、まだ受験そのものの場面に入れていないのに、三号館をうろうろしているうちにもう2000字近く書いてしまった。続きは次回書こうと思う。また読んでくれると嬉しいです。


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