No.13 問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション


■読む目的
・課題解決のプロセス・思考法・スキルを体系的に身につける為
・チームでそれを汎用化する為

■気づき・学び
「認識」と「関係性」の固定化の病:人材育成の現場、子供の学び、組織の課題、製品開発のイノベーションなどの阻害要因は、必ずと言っていいほどこの認識と関係性の固定化が根底要因になっている

「認識」と「関係性」の固定化を解消する手段が対話
物事に対する意味付け、個人の認識の共有を重視するので一人一人の暗黙の認識が場に可視化され、相対化されることで自分自身の認識が問い直されたり、相互理解するきっかけになる
→自分の暗黙の前提をメタ認知することは自分の前提を再構成する「リフレクション」を誘発する。
リフレクション:自分自身の経験を内省すること。過去の経験に意味付けをしたり、ものの見方を再構成する認知プロセス

対話を通して問いに向き合う過程で集団の関係性は再構築される
→相互理解が深まるだけでなく、新たなアイデアが創発する場合がある
→新たな意味やアイデアが創発する会話を創造的対話と呼ぶ

■ネクストアクション
一人一人の暗黙の認識が場に可視化され、相対化されるような問いを日常的に意識する。
結果、自分自身の認識が問い直され、個人のリフレクション(=自分自身の経験を内省すること。過去の経験に意味付けをしたり、ものの見方を再構成する認知プロセス)を誘発する機会を増やす。対チームにおいては、相互理解するきっかけを増やす
→新たなアイデアが創発する創造的対話の機会を日常的に増やす

■詳細
「認識」と「関係性」の固定化の病:人材育成の現場、子供の学び、組織の課題、製品開発のイノベーションなどの阻害要因は、必ずと言っていいほどこの認識と関係性の固定化が根底要因になっている
・認識の固定化
暗黙の裡に形成された認識(前提となっているものの見方・固定観念)によって物事の深い理解や創造的な発想が阻害されている状態。認識が当たり前のものとして固定化されると、「なぜこうなっているのか?」を改めて考えることはしない。一度取得したことを捨てるタイプの学習を「学習放棄(アンラーニング)」と呼ぶが、これは簡単には起こらない。自覚されない認識は”こすり落とす”ことでしか気づけない。
・関係性の固定化
他社との関係も認識の固定化と同様、時間が経つにつれて安定・固定化される。これは明示的な上下関係や契約のみならず、お互いが感じている暗黙の認識=心理的契約と呼ばれる関係も含まれる。さらにはお互いの認識や前提に「ズレ」があったまま関係が固定化されるとその溝を乗り越えることは容易ではない。「あの人とは分かり合えない」という状況は、互いの認識に齟齬があるままズレが固定化されてしまったために起こる状況。

【Part1問いのデザイン全体像】
対話は物事に対する意味付け、個人の認識の共有を重視するので一人一人の暗黙の認識が場に可視化され、相対化されることで自分自身の認識が問い直されたり、相互理解するきっかけになる
→自分の暗黙の前提をメタ認知することは自分の前提を再構成する「リフレクション」を誘発する。
リフレクション:自分自身の経験を内省すること。過去の経験に意味付けをしたり、ものの見方を再構成する認知プロセス

成人にとって最も重要な学びは現実に対する認識の仕方が変化すること。そのプロセスを変容的学習と定式化

新しい関係性を構築する4つのステップ
①溝(暗黙の前提の違い)に気付く
②溝の向こうを眺める
③溝の渡橋を設計する
④溝に橋をかける

対話を通して問いに向き合う過程で集団の関係性は再構築される
→相互理解が深まるだけでなく、新たなアイデアが創発する場合がある
→新たな意味やアイデアが創発する会話を創造的対話と定義する

それぞれが自分の体験を振り返りながら、”危険だけど居心地がいい”を取り巻く価値観や経験を共有し、アイデアの源泉を探っていく。
一人一人の思考や感情が刺激され、背後にある認識や関係性が編みなおされるプロセスを経て、新しいアイデア(関係性の再構築)が創発される
→問いは、創造的対話のトリガーとなる


具体と抽象の往復で対話の解像度は上がる

「問う」という行為は答えにたどり着くことがゴールではない。

・「問い」の定義
創造的対話を通じて認識と関係性が新たに編みなおされる媒体
*結果、現実をとらえる別のまなざしが生まれ、新たな「問い」が立ち現れたり、新たなアイデアが創発される

「問い」の性質
①問いの設定によって導かれる答えは変わる
②問いは、思考と感情を刺激する
③問いは、集団のコミュニケーションを誘発する
④対話を通じて問いに向き合う過程で、個人の認識は内省される
⑤対話を通じて問いに向き合う過程で、集団の関係性は再構築される
⑥問いは、創造的対話のトリガーになる
⑦問いは、創造的対話を通じて、新たな別の問いを生み出す

質問と発問との比較整理

【Part2課題のデザイン】
・問題の定義
何かしらの目標があり、それに対して動機付けられているが、到達の方法や道筋が分からない、試みてもうまくいかない状態のこと
・課題の定義
関係者の間で「解決すべきだ」と前向きに合意された問題のこと

*関係者一人一人の問題は同じ状況にあってもそれぞれの認識によって解釈が異なる。多様な立場・暗黙の前提が存在することを考慮し、課題を定義して合意形成することを課題のデザインと定義する。

★課題設定の罠
①自分本位
②自己目的化
③ネガティブ・他責
④優等生
⑤壮大

★問題を捉える思考法
①素朴思考
②天邪鬼思考
③道具思考
④構造化思考
⑤哲学的思考

★課題を定義する手順
「問題を捉える思考法」によって課題を定義するまでの具体的な手順

①要件の確認
素朴思考と天邪鬼思考で多角的に依頼主の問題要件を確認する
②目標の精緻化
目標の設定が曖昧なまま課題を定義しようとするとピントのずれた課題を設定してしまうリスクがあるので目標を精緻化する。
目標精緻化の3つのポイント
(1)期間によって短期・中期・長期にブレイクダウンする
(2)優先順位をつけて段階的に整理したり複雑な目標を分割する
(3)目標の性質によって、成果目標・プロセス目標・ビジョン目標の3種類に整理する
*チーム全員が”認識と関係性の固定化”の病にかかっていた場合は、「共通の目標を決める」というメタ目標を設定して創造的対話をする
③阻害要因の検討
阻害要因を検討する理由
(1)現状と目標の間にあるハードルこそが「解くべき課題」である可能性があるから
(2)阻害要因を検討しているうちに目標の一部が修正されたりより良い目標設定が見つかる可能性があるから
<目標の阻害要因>
(1)そもそも対話の機会がない
(2)当事者の固定観念が強固である
(3)意見が分かれ合意形成できない
(4)目標が自分ごとになっていない
(5)知識や創造性が不足している
④目標の再設定
目標そのものの再設定、認識の枠組みを転換することから「リフレーミング」と言う。
<リフレーミングのテクニック>
(1)利他的に考える
(2)大義を問い直す
(3)前向きに捉える
(4)規範外にはみ出す
(5)小さく分割する
(6)動詞に言い換える
(7)言葉を定義する
(8)主体を変える
(9)時間尺度を変える
(10)第三の道を探る
⑤課題の定義
阻害要因の検討と目標の再設定はそれぞれ往復しながら課題の輪郭をあぶり出していく。本質的に評価はできないけど良い課題の定義の判断基準3つ
(1)効果性 問題の本質をきちんと突いた切り口になっているかどうか?
(2)社会的意義 いい社会の実現に貢献できるか?
(3)内発的動機 PJメンバーがやりたいと思っているか?「真実の教育はすべて、経験を通じて生じる」Byジョン・デューイ

【Part3プロセスのデザイン】
・ワークショップの定義
普段とは異なる視点から発想する。対話による学びと創造の方法
*WSの4つのエッセンス「非日常性」「協同性」「民主性」「実験性」
*工房的ものづくり:ボトムアップ、作りながら探る、実験重視、失敗から学ぶ、つくる過程を楽しむ
*WSとは経験のプロセスをデザインすること
*学習環境デザインの4要素:活動、共同体、空間、人工物

WSプログラムの基本構造
①導入 10~20%
ファシリテーターから趣旨と概要を説明。アイスブレイクで緊張の緩和、関係構築、テーマに基づいて過去の経験や意見を共有しあう
②知る活動 20~30%
講義や資料の調査を通じて新しい情報を収集し、話し合いを通じて知識化する。その知識を使って過去の経験を振り返ったり、創る活動の準備をする
③創る活動 30~40%
4~5名のグループによる対話を通じて新しい意味を作り出す。手やからだを動かして何かを制作する場合も多い。
④まとめ 10~20%
作り出した成果物について発表し共有する。全体の振り返り、意味付けを行い、次に向けたアクションについて検討する

課題解決の為に必要な「参加者の経験」を引き出すための問いをデザインする
(1)課題解決に必要な経験のプロセスを検討する
・「創り出す経験」のブロックに分割する
・経験を更に細分化し、プロセスの骨子を作る


(2)経験に対応した問いのセットを作成する
①探索の対象を決める


②制約を設定する
問いに適切な制限を設定することでとっかかりを作り、対話と思考の方向性を作る
<問いの制約を設定するテクニック>
└価値基準を示す形容詞をつける
└ポジティブとネガティブを示す
└時期や期間を指定する
└想定外の制約を付ける
└アウトプットの形式に制約をつける
③表現を検討する
作品に落とし込む、共有しながら対話するなど

(3)足場の問いを組み合わせてプログラムを構成する
「問いを生かすための問い」:解像度が低いまま対話が進む可能性があったり、抽象度が高すぎるまま対話が深まらない可能性がある場合に取り入れる


→参加者の思考の「抽象」と「具体」の変換プロセスを増やす自己目的化を防ぐ、認識の固定化を解消するなどの目的
<足場の問いのテクニック>
①点数化
②グラフ化
③ものさしづくり
④そもそも
⑤喩える

★いいアイスブレイクの問いのポイント
①固定観念を揺さぶる
②集団の関係性を揺さぶる
③警戒と緊張をほぐす
④テーマと接続させる

【Part4ファシリテーションの技法】
・ファシリテーションのコアスキル
(1)説明力
問いの意図をうまく伝えるポイント
①問いの焦点を明確に伝える
②問いに記述されていない背景の意図を伝える
③その前の問いとのつながりについて補足する
問いに引き付けるポイント
①好奇心に基づく注意を引く
②参加者自身との関連系を意識させる
(2)場の観察力
(3)即興力
「イエス、アンド」:トラブルをトラブルとしてねじ伏せるのではなく、まず受入れ、その後無理のない素直な反応をアンドとして提案していく
(4)情報編集力
情報編集の工夫
①共通点を探る
②相違点を探る
③情報を構造化する
④視点の不足を探る
(5)リフレーミング力
(6)場のホールド力

4タイプの問いかけを駆使する


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