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熟成による付加価値付けについて

やっと少しずつ暑さが和らいできました。
先日ぶどう園にもぎ取りをしに行ったのですが、枝につながったまましっかり完熟したぶどうは格別の美味しさでした。

お酒のご紹介です。

誠鏡(せいきょう)

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広島県竹原市にあります中尾醸造株式会社。
創業は1871年、廣島屋の屋号でスタート。現在の蔵元は6代目、中尾強志氏であります。
代表銘柄は「誠鏡」「幻」。
高い酒造技術はIWC受賞の常連であることからうかがい知れます。

飲んでみましょう。

上立ち香はほんのりリンゴを思わせる香り。
口に含むと舌先に当たる非常に軽いタッチに驚きます。少し遅れてシュッとした酸がサイドから感じられてきます。
渋みとほんのりリンゴをまとった含み香。非常に丸みを帯びた角の無いテクスチャ。
後口はピリッと辛みを置いて、余韻は短め。

ラベル情報を記載しておきます。

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番外品
ひやおろしプレミアム
二夏越え 純米生詰原酒
原材料名:米(国産)、米麹(国産米)
精米歩合:65%
アルコール度数:16度
日本酒度:+1
酸度:1.4
原料米:広島県産米100%使用
製造年月:2020.08

購入は東京都調布市の酒のたむら。

価格は2,937円(税込)でした。

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今回のお酒はひやおろしです。

ひやおろしはひと夏越えて出荷されることを想定して設計されているため、基本的には熟成して美味しくなるお酒
ですが昨今のひやおろしは出荷タイミングでまだ若く固いことが多い。

それはそれで美味しいものもありますが、
それはそれでひやおろしとしてどうなの?
という疑問も出てきてしまう。

やはりひやおろしを名乗るからには、出荷タイミングでしっかり熟成されて、丸みを帯びていてほしいんですよね。

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誠鏡、二夏越え。

ひと夏で足りないのであればふた夏
そういう意図で管理されたお酒なのでしょう。
程よく熟成が進み丸みと艶があってアルコール度数からは意外なほど軽い口当たり。

しかもまだ伸びしろがあると期待は膨らみます。
これが3,000円を切る価格設定なのだから、いいの?と思ってしまいます。

そもそも私は熟成を管理するのにかかったコストは、価格に反映すべきと考えています。
蔵が目指す品質まで貯蔵するためには、スペースの管理、温度の管理、こまめな風味のチェックがどうしても必要で、それはお金がかかることだからです。

ちなみに、誠鏡は今年ひと夏越えのひやおろしも出荷しており、こちらは2,574円(税込)のようです。
税抜きベースで330円の上乗せがあります。
この増額は当然であり、もし3夏越え、4夏越えの商品が出荷されるのであれば、稀少性も高まってより付加価値は高くなる。

そしてこれは酒蔵がやっても、酒屋が独自にやっても同じこと。
だから、例えば希望小売価格の適用期間は出荷年度に留め、以降の価格設定は市場原理に沿って酒販店が改定すべきだろう、と思うのです。
つまり、出荷年度を越えたら必要に応じて価格を改定することが認められるべきではないか。

それをしないと、まだ若いひと夏越えのお酒と、酒販店が時期尚早と判断して、丁寧に熟成させてじゅうぶんに育ったふた夏越えのお酒の値段が同一ということになってしまう。

要は、お金は払うからちゃんとコンセプトに合ったお酒を飲ませてくれ、ということ。

泡盛などほかの酒類では、酒販店による上乗せが推奨されているところもあります。
これはブランドを守るための施策の一つと思います。
日本酒でできない事ではありません。
むしろそのような付加価値付けが日本酒の価値そのものを高めてくれると信じています。

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