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信州読書会に提出した読書感想文を掲載

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信州読書会によるYouTubeLive&ツイキャス読書会に提出した読書感想文を掲載しています。
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#志賀直哉

志賀直哉著『雨蛙』読書感想文

志賀直哉著『雨蛙』読書感想文

『雨蛙』読書感想文

前回の森鴎外著『カズイスチカ』の読書会では倒錯と逸脱に惑わされる事なく本質を見ること、遠くのものに憧れるのではなく、近くのものを大切にする、ということについて考えさせられた。

本書に登場する賛次郎はどうだろう。田舎者の彼は、その生活に単調さを感じ、友人からの影響でそれまで興味のなかった詩や文学に目覚める。妻が妊娠し、病の末流産しようとも、彼の文学趣味は亢ずる一方だった。そし

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志賀直哉著『好人物の夫婦』読書感想文

志賀直哉著『好人物の夫婦』読書感想文

『悩ましい快感以上恋未満』

私は知っている。男なら誰もが己の意思とは関係なくふとした折に女に悩ましい快感を抱く事があることを。そんな、男なら誰もが知っているこの秘密の事情を、志賀直哉は繊細に、かつ鮮やかに描き出す。それだけでは無い。寝る前の挨拶だけだとちょっと物足りないからと、わざわざ滝にペンを取りに行かせたり、毛布を掛けてもらったりする。この脈がないわけでも無さそうな女に対する下卑た下心を、隠

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志賀直哉著『流行感冒』読書感想文

志賀直哉著『流行感冒』読書感想文

コロナ禍での生活の中、人の考えというものは人の数だけ存在し、そこには認知しきれない程のグラデーションがある事を改めて思い知らされた。新型ウイルスを恐れる事も、侮ることも、その人の考え方や価値観によって大きく異なる。そして普段は内に秘められた考え方や価値観が、行動や発言によって顔を覗かせた時、それは人間関係に大きく影響を与える。日頃あまり意識する事はないが、人間関係というものは本当に微妙なバランスで

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