とある担当さんの日常 く( ̄▽ ̄ 第一話
あらすじ
この話は22歳という若さで、ひょんなことから留置場の担当を命ぜられ、極悪非道でラ〇った被疑者たちのお世話をすることになったとある警察官の「日常」を描いたはなし。
感動、涙は一切ないが、被疑者たちと担当警察官のやりとりが、非日常なコメディ要素を生み出す。
留置場という世間から逸脱した閉鎖空間でしか生まれないユーモアが担当と被疑者たちの薄暗い日常を明るくしていく。
第一話 担当さんの日常
今日も僕は、アダルティックな週刊誌の袋とじを定規で丁寧に開け、順番に配っていく。
それを楽しみに待つ被疑者たちへ…。
担当「はい、おまたせしました~。47番さん週刊誌入れときますね!」
47番「まってたで~、今日の袋閉じの子可愛かった?笑」
担当「見てのお楽しみです」
47番「これしか楽しみないからな~」
と満面の笑みを浮かべ、週刊誌のページをめくる。
まるで、河川敷でエロ本を拾った中学生のようだ。
47番「今週号ババアやん!!!最悪やわ~、これじゃ抜けんてー!」
35番「うそやん、俺はこれくらいのんが、興奮するけどな」
47番「ほんまですか?さすが違いますね~(笑)、一通り読み込んだらまた貸しますんでゆっくりみてください」
35番「しっかり楽しむんかい(笑)ほんまいつもサンキューな」
笑いあう二人
47番(30歳・大麻取締法違反)と35番(49歳・窃盗罪)は1号室で相部屋。
閉鎖された空間のためか、相部屋になった被疑者たちはだいたい仲が良い。
ここは男性専用の留置場
刑事達の都合性格によってやり方が異なる取調べに苦しみながら、週に2回の入浴と週刊誌のグラビアページを楽しみにする被疑者たち。そして、
その愚痴に付き合う我らが担当。
被疑者は僕らを担当さんと呼ぶ。理由は本名を教えれない規則だから。
こんな場所では恨みを買いやすく、何をしてくるかわからない連中ばかり。名前を教えて素性がバレて、家族が殺されるといった映画でよくある超怖い復讐を防ぐためや、担当をあだ名で呼ばせないためなど色々理由はあるようだ。
他にも自慰行為を禁止する規則など、被疑者にとっては暮らしにくい環境が整っている。そんな被疑者にとって劣悪な環境でも、彼らが反抗的にならないように、できるだけ規則を緩くしている。まあ自慰行為ついてもほぼ黙認している、、、。
だが、本部直属の留置場の担当は、そんなに甘くない。
規則は厳守。被疑者に厳しく相部屋でも一切口を開かせない。他の被疑者と話そうものなら、叱責し、逆らえばすぐさま拘束。それが規則。ほぼ軍隊みたいなもの。
ただ、僕の勤める所轄の小さい警察署の留置場はそうはいかない。
被疑者たちと常にコミュニケーションを図り、問題が起これば、普段のよしみで納得させ、事なきを得る。拘束すれば、むしろ悪循環で、皆言うことを聞かなくなってくる。私みたいに高卒22歳の未熟な警察官の指示など尚更だ。
語り合い、笑いあう被疑者たち
扉を叩く、ノックの音
担当「やばい、署長がきました!皆静かに!」
静かになる被疑者たち
部長「デイリグチカイヘイジュンビ!」
担当&部長「イジョウナシ!カイジョウ!!」
留置場の出入り口であるデカい扉が部長の持つ鍵で解錠される。
毎日の恒例 「署長巡回」
留置場は、被疑者が死亡した場合など不祥事が起これば、署長、副所長クラスがもろに処分を受けるシビアな部署。
そのため、毎日署のトップクラスが巡回に来る。
その度に、先ほどの呪文を大声で唱え、扉の鍵を開ける。
本部曰く、この呪文の声が大きいほど、被疑者に威圧感を与える効果があるらしい。
全く、喉がもたん、、勘弁してくれよ。
署長の心の声 「今日も静かに過ごしているな。」
署長「ではあとは宜しく頼む」
部長「はい!かしこまりました!」
署長には、しっかり被疑者に調教しているアピールを施し、平和を保つ。
もし、担当と被疑者が仲良く話そうものなら、僕ら担当に対する指導も厳しくなり、普段通りのゆるい仕事ができなくなる。
それは被疑者も同じなため、大抵言うことを聞いてくれる。
(ちなみに部長もこういった現状を理解し、うまく立ち回っている。)
担当「皆さんお疲れ様でした~、じゃ55番さんから順に風呂行きましょっか!」
55番「あざっす!やっと風呂入れるわー。」
担当「前回最後やったから、今日は一番風呂やで(^^ 」
55番は強盗罪を犯した20歳の少年。右腕に謎のタトゥーが入っている以外はわりとどこにでもいそうなシンプルイケメン。ネガティブな発言が多い。
55番「この右腕のタトゥーマジで消したいですわ~ダサすぎ。」
担当「良いやん、幽遊白書の飛影みたいで」
55番「そればかにしてるでしょ(笑) 何万もかけたのに今になって後悔してますわ。」
笑う担当
中二病もここまで来ると面白い。なかには、自分でタトゥーを入れる輩もいて、腕に心電図のタトゥーを入れた19歳のロン毛少年にはかなり同情したものだ。
担当「次、62番さん、、お風呂どうします?」
62番(窃盗罪)スマホを持ってないのに、スマホの充電器と菓子パンを盗み、現在刑事と検事が処分を論議している下半身不随の老人。元々国語教師だったらしいが、今は見る影もない。ぱっと見は麻原彰晃だ。普段は車椅子に乗っているらしいが、留置場の部屋の中は持ち込み禁止のため、立ち上がる時や風呂に入る時は我ら担当が補助しないといけない。
もし、風呂に入るとなると、担当がカッパを着て頭や体を洗う。老人ホームかよ!
首を横に振る62番
担当「ほな、来週は入りましょね!」
ホッとする担当
担当心の声「よし来週の風呂担当は2係だ。任せることにしよ( ̄ー ̄)ニヤリ」
留置場は交番と一緒で夜勤業務。
1~3係に分かれる。
僕は3係で、部長からは「3の2」と呼ばれる。(3係の2番という意味)
担当部長は巡査のころに留置場、交通課を経験していて、柔軟性が高く、テキパキと仕事をこなすハイスペック部長。
担当「じゃ、47番さん風呂いきましょか~。」
47番「やっぱ今日は最後か、風呂場、あかと油浮きまくってるやん最悪(涙)」
担当「こればっかりはしゃーないですね、再来週くらいは一番風呂でゆっくりしてください(笑)」
47番「再来週とか待たれへんわ、一日経つんも遅いのに(笑)」
被疑者の一日は、朝7時の点呼から始まる。
7時起床と同時に点呼 → 掃除 → 洗顔&歯磨き → 朝食 → ※運動→ 読書や手紙作成などの自由時間(夜の点呼まで) → 12時昼食やラジオ → ※取調べや面会(家族や弁護士)→ 夕食 → 洗顔等 → 夜の点呼 → 21時就寝
※運動:運動場(檻とは別に、3畳ほどのコンクリの壁に囲まれ、天井だけ鉄格子越しに空が見える場所)で髭をそったり爪を切ったりできる
※取調べ:取調べは刑事の都合で決められ、午前午後とか特にきまっていない。
※面会:基本家族や弁護士からの電話で受付ており、家族や友人との一般面会は曜日によって時間が決まっている。弁護士はほぼいつでもOK。
一般面会は、担当が一人立会に入る。(制限時間20分、差し入れ可)
弁護士面会は担当立ち入り不可。時間無制限
部長「55番の彼女が面会来たわ、面会室入れて」
担当「了解です。」「55番彼女が面会来たわ」
55番「ほんまに来たんや、嬉しいけど、緊張する~。やばい」
ガチャ、面会室の扉が開く
担当「では20分間になりますので」
55番「今日は、来てくれてありがとう。ほんま迷惑かけてごめん。」
彼女「自分が何したかわかってるん。最低やで、反省しーや」
55番の彼女は55番より2個下の18歳だが、しっかりしていて女優の加藤あいに似ている美形な女性だが、気が強く、55番にはかなり当たり強め。
だが、55番はこの子を溺愛している。なにせこの子に嫌われないためにバイクを強盗してまでデートに間に合おうとしたくらいなのだから。
彼女「なんであんなことしたん。ちゃんと被害者の気持ちになれよ!もう20歳やねんからそのくらいわかるやろ。。別にデート遅れるんやったら連絡くれたらよかったのに、、。」
55番「ほんまカリナ(仮名)に迷惑かけたのはめっちゃ後悔してる。結局デートにも遅れてしまった訳やし、、」
彼女「普段から後先考えへんからやん!てか問題はそこじゃないし!」
55番「いや、この前遅れたときめっちゃ不機嫌なってたから、。」
彼女「そうかも知れんけど、そこまでせんでいいやろ、普通に考えて」
55番「ほんまごめん、ここでちゃんと罪償うから!もし出れたらデートでも行こう!」
彼女「約束やで!絶対飯おごれよ!焼き肉な!」
ピピピッピピピッ! タイマーが鳴る。
担当「終了でーす ( ̄▽ ̄ 」
55番「えっ?もう終わり?あと五分だけ延長して!」
担当「ごめんな、そんなシステムないねん」
彼女「ほな、また来るわな!自殺なんかすんなよ!」
55番「カリナが来てくれたらせーへんよ!ありがとう!また来てな、、。」
55番「ボーナスタイム短すぎるわ。担当さんどうにかしてよ。」
担当「ボーナスタイムは短いからこそ価値があるんやで。そういえば彼女から写真の※差し入れあるらしいで。」
55番「まじ!?それは幸せすぎる。」
※差し入れ:本(漫画、小説等)、現金、衣服等、飲食物は基本NG!
担当「はい昼食でーす」
35番「今日の昼飯も油ぎっしゅやなぁ。若かったら胃もたれとかせんやろ55番さん」
55番「そうですね!僕はここの飯嫌いじゃないですよ!」
何気ない会話のなか、ストレッチをする担当
47番「担当さん今日の飯なになん?」
担当「今日は唐揚げ弁当ですね」
47番「またにんにく臭くなるやん(笑)ええなぁー、俺も出たらラーメンとかマクドとか死ぬほど食いたいわ」
留置場の食事は揚げ物や加工食品など、腐らないもので作られている。
なので、飯に関して愚痴がでるのは毎日のこと。
60番「担当さーん、醤油くだはーい。あとお茶に何か入ってるから入れ替えてー」
担当「はいはい〜、ちょっと待ってくださいねー」
60番:(34歳、脅迫罪)過去に覚せい剤法違反、窃盗などの犯歴あり、丸坊主に一重、いかにもって感じの半グレだ。いちゃもんとお茶交換が多い。
そして一人部屋。新規に留置される被疑者や過去に薬物の犯歴がある場合は気性が荒かったり、薬物を隠し持つようなタイプもいるのでとりあえず一人部屋で様子をみる。
60番「担当ちゃんなんかオモロい話してー」
担当「何系がいいですか?😏」
60番「なんでもええよ(笑)こちとら時間潰したいだけやねん」
担当「ちょっと待ってくださいね、思い出しますわ。この前、合コンで知り合った女の子と良い感じになってね、少しずつ服を脱がせておっぱい堪能してたら、その子の乳首に違和感あるなと思ってよく見たら1本だけ毛生えてたんですよ😨」
腹を抱えて笑う60番
担当「めっちゃ萎えましたね、まぁ、最後までいきましたけど(笑)」
60番「最後までやったんかい(笑)担当さんやっぱオモロいな〜、最高やわ」
担当「あざす、またオモロい話あったら聞いてください( ̄▽ ̄笑」
60番「頼むわ!楽しみにしてるで!」
飲みの場でないとウケなさそうなネタでもこの異質な空間が割とデカい笑いを起こしてくれる。面白い話の1つや2つ持ちネタをもっていれば、シ〇ブ中相手でもある程度言うことを聞いてくれた。
部長「3の2!60番取調べやわ。部屋から出してきて!」
担当「わかりました!」
ピピッ!金属探知機が鳴る
担当「あれ?今日調子悪いな」
60番「勘弁して―な、俺なんも持ってないで」
留置場は、取調べの際や面談室に入る時など、節目節目で、身体検査を行わなければならない。
中には、取調べ室からペンやらホッチキスの芯なども持ち帰る被疑者もいるので気を付けなければ大問題になりかねない。
担当「上着のチャックに反応してましたね!」
60番「ならえーわ」
取調べの際など、留置場の外に出るときは、手錠と腰縄を付ける。
部長「出場します!出入り口開閉準備!」
担当「異常なし!」
部長「解錠!」
担当「ではよろしくお願いします。」
刑事「ありがとう!」
腰縄の末端でうまく輪っかを作り、手で持つ。逃げれないように。
口うるさい被疑者が取調べ等でいない留置場はとても平和だ。
みんな昼寝したり、本を読んだり、手紙を書いたりしている。
こんな感じでずっと暇やったら幸せだな〜とか常々思うが、留置場はそんなに優しい部署ではなかった。
プルプルプルッ(電話が鳴る音)
ガチャ
地域課長「逮捕事案発生。被疑者は39歳の男性。罪名は、強制わいせつ。あと2、3時間後留置予定です。よろしくお願いします。」
まためんどくさいのが入ってきそうだ。
これは実話を元にしたフィクションです。
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