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植物由来の廃棄物を活用したバイオマスプラスチック素材を通じて循環型の社会を築く:株式会社EcoLooopers・難波亮太

世界では今、この瞬間にも大量のゴミが捨てられています。ゴミの埋立地不足や、焼却による地球環境の悪化が大きな社会課題となっており、これを解決するにはゴミを資源に変え、循環させていくことが必要とされています。

難波亮太(なんば・りょうた)さんはこの課題に着目し、2023年9月に株式会社EcoLooopersを創業。植物由来の廃棄物を、バイオマスプラスチック素材や製品として活用することで、「資源循環の輪をつなぐ」社会を目指しています。

この記事は、神奈川県の「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)」(運営事務局:GOB Incubation Partners)に採択された起業家へ取材したものです。社会課題の解決に取り組むベンチャー企業を募集・採択し、メンタリングやネットワークによる支援などを通じてビジネスモデルの磨き上げと事業拡大を支援するプログラムです。KSAPの詳細はこちら


植物由来の廃棄物をバイオマスプラスチック素材に

難波さんが取り組んでいるのは、コーヒーかすやフラワーロス(売れ残ったお花)など、植物由来の廃棄物をバイオマスプラスチック素材として活用する事業です。

その一例として、現在は3Dプリンター向けの素材としての活用を試みています。一般的に、3Dプリンターの素材には石油資源からできた樹脂や、トウモロコシやサトウキビなどの食用資源からできたバイオマス樹脂が使用されていますが、難波さんが開発を進めているのは、植物由来の廃棄物を乾燥、粉末化させ、バイオマス樹脂と混ぜ合わせたバイオマス100%の新素材です。

現在は、廃棄物の調達や素材、製品開発に注力しているそうです。

「大型コワーキングスペースや飲食店で出たコーヒーかす、花屋で売れ残ったお花などを回収しています。また並行して、樹脂素材の開発に知見がある大手製造業者と共に、実際の素材開発にも取り組んでいます」(難波さん)

“廃棄”の課題に対して本気で向き合う会社をつくりたい

EcoLooopersでは「資源循環の輪をつなぐ」をビジョンに、捨てられるはずのゴミに価値を与え、持続可能な社会の実現を目指しています。植物由来の廃棄物を活用したバイオマスプラスチック素材や製品の開発もこうした意識に根ざした事業です。

こうした想いを持つに至ったのは、新卒で入社した繊維の専門商社での経験からでした。

「洋服が好きだった私は、大学を卒業後に繊維の専門商社に入社。DX推進やアパレルブランドのデータ分析などの業務に従事しました。その中で、売れ残った多くの衣服が最終的には焼却や埋め立てされてしまうアパレル業界の実態に気付き、廃棄に対する課題意識を抱きました」

その後、スタートアップ領域に関心を持った難波さんは、国内最大級のオープンイノベーションプラットフォームやスタートアップコミュニティを運営するスタートアップアクセラレーター「Creww株式会社」に転職し、2年間、スタートアップ支援に従事。同社がGoogle for Startupsとともに開催をした、サステナビリティ領域の事業に取り組む、国内10社のスタートアップの海外展開を支援するプログラム「Global Sustainability Accelerator」で、海外展開支援チームの責任者を務めることになったことが創業のきっかけになったそうです。

「支援先の各社が、サステナビリティの切り口で社会課題の解決に本気で取り組んでいる姿を近くで目にしたことで、私も商社に勤めていた際に感じた廃棄に対する課題意識に対して、同じくらいの熱量で向き合ってみたいと感じました。そのタイミングで「かながわ・スタートアップ・アクセラレーションプログラム(KSAP)」を知り、思いきって退職し、株式会社EcoLooopersを立ち上げました」

バイオマスプラスチック素材に着目した理由

難波さんが廃棄物の利活用、資源循環領域の事業に取り組む上で、意識していたのは2つでした。1つは、「大量の廃棄量に見合う活用手段を見出すこと」です。

「衣服を例に挙げると、国内では年間48万トンの衣服が焼却・埋立されている一方、廃棄される衣服の利活用の手段としては「服から服」のリサイクルが主流でした。しかし服から服へのリサイクルは、手間やコストの観点からハードルが高く、廃棄量に対して大きなインパクトを生むほどのリサイクル量を実現するのは容易ではありません。

そんな中で、衣服をレンガにアップサイクルするフランスのスタートアップ「FabBRICK」を知りました。非常に洗練されたデザインが魅力的ですが、何より驚いたのは、当時少人数のチームで2年間で約7万トンもの衣服をアップサイクルさせた実績です。私がこれから取り組む事業でも大量の廃棄量に見合う大きなインパクトを生める事業を模索したいと考え、近年急速にニーズが高まっているバイオマスプラスチックの領域に着目しました」

そして難波さんが意識していたもう1つは、「ゴミをできるだけ生まない循環型の仕組みをつくること」です。

「アップサイクルに取り組む事業者やプロダクトの数が増えるにつれて、市場認知も高まってきました。そんな中で次に求められるのは、瞬間的な価値を生み出すことだけでなく、アップサイクルしたモノが時間の経過とともに価値が失われていく未来を見据えて、繰り返し再利用できる仕組みや環境に負荷を与えない形でモノづくりをすることだと考えています」

そこで、繰り返し使えたり、最後は土に埋めて分解されたりといった、ゴミを生まないものづくりに取り組んでみたいと思うようになったんです」

「モノの、これから」に向き合うブランドをつくる

今後は3Dプリンターを活用して、植物由来の廃棄物をアップサイクルした家具や雑貨などのインテリア商品を開発する予定だという難波さん。

「他のアップサイクル事業者も言っていますが、日本はまだ『サステナブルだから』という理由で買ってもらえるほど市場として成熟していません。まずは商品としての本質的な価値が担保されていないと消費者には手にとってもらえないんです。そこには、デザイン性も大きく影響すると考えています。

3Dプリンターを使うことで、従来は表現できなかったデザイン表現が可能になりますし、またアップサイクルのような新しい概念の商品を社会に届けていく上で、少ロットからでも製造できて、市場ニーズに合わせて試行錯誤しやすいことは、大きなメリットになると考えています」

最後に、難波さんが目指す世界観について聞いてみました。

「現在わたしたちは『モノの、これから』をコンセプトにしたライフスタイルブランド『MONONO(モノノ)』の立ち上げ準備を進めています。これまで何気なく捨ててしまっていたモノも、よく考えてみると、まだなにかワクワクするような使い道(可能性)が広がっているのではないか、長く使い続けることができるのではないか。また、ひとつのモノに真摯に向き合う暮らしは、自身とも深い部分でリンクし、心も穏やかにすると信じています。

MONONOの商品を通じて、モノのこれからに向き合い、地球も、自身も尊重できますように」

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