見出し画像

社会課題の解決と経済価値の両立を目指して——食品ロスを生み出す供給構造を変える:AUDER・各務友規

本来食べられる食品を廃棄してしまう「食品ロス」の問題は、社会課題の1つとして、広く認知されるようになりました。

AUDER株式会社も、この問題解決に向けたプロダクトを開発しています。センサーで食料品の在庫量を可視化し、その量に応じて食品を自動供給する仕組みで、食品ロスの原因の1つである供給構造の改善に取り組んでいます。代表取締役・CEOの各務友規(かがみ・ゆうき)さんに、事業立ち上げの背景にあった課題意識を聞きました。

この記事は、神奈川県の「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)」(運営事務局:GOB Incubation Partners)に採択された起業家へ取材したものです。KSAPは、社会的な価値と経済的な価値を両立させようと挑戦するスタートアップをサポートする取り組みです。KSAPの詳細はこちら

社会課題とビジネス課題の両面から食品ロスを考える

各務友規:日本における食品ロスの65%は、家庭や外食事業者で発生しています。つまり食品ロスを解決するためには、これらエンドユーザーに対する働きかけが重要だと考えています。

消費、加工するエンドユーザーが望む食品を、望むタイミングで、望む数量を届けることができれば、この食品ロス問題の一部を解決できるはずです。

例えば外食事業者の場合、お客さんは定番メニューを求めて来店すると思います。その際に、品切れによって販売機会を逸失しないよう、飲食店側はある程度ゆとりを持って在庫を用意しますよね。しかし食品の消費量は常に一定ではないため、当然在庫にばらつきが生じてしまいます。なかには消費し切れない食品もあり、結果としてロスが生じてしまうのです。

食品ロスは、貧困や格差と絡めた倫理的な側面が強調されることが多々あります。しかしそれだけではありません。ビジネス的に見ればその原価が丸ごと損失になってしまいます。この原価を利益分で回収しようと思うと、その数倍から数十倍の売上を立てないといけないのです。さらにこのロスを発生させまいとする日々の在庫管理や発注、棚卸、決済業務、帳票書類の管理も従業員の負担になっています。このように食品ロスとは、倫理的・社会的な課題であると同時に、経済価値を毀損するというビジネスの課題としての側面もあるのです。私たちAUDERは、この両面を同時に解決できるサービスを開発しています。

現在開発しているのは、センサーで食品の在庫を可視化し、その在庫量に応じて、必要な食品を必要なタイミングで自動供給する仕組みです。

開発中のプロダクトイメージ

先ほどは外食事業者を例にしましたが、将来的には一般家庭にも適用できると考えています。ただし定番メニューが多い外食事業者と比べて、家庭では消費する食品の種類が多く、消費頻度のばらつきも大きいのが特徴です。そのため自動供給よりも、家庭内の在庫を可視化したり、その在庫情報に基づいてさまざまな通知やレコメンドを出すことへのニーズが強いようです。

食品の在庫や消費の傾向を可視化することで、より健康的な食生活のあり方を模索したり、現在のライフスタイルに適した商品を提案したり、幅広い付加価値サービスへと発展させることができると考えています。

大学で「食」に関する問題意識が鮮明に

「食」への関心が深まったのは、大学で専攻したことがきっかけです。自然や生物、科学が好きだったので、生命科学を学ぶために北海道大学の農学部を選びました。将来は漠然と研究の道に進みたいと考えていましたが、最初の1年間の学生生活で180度考えが転換しました。実験や研究への興味が徐々に薄れ、実際の社会、経済への関心が高まったのです。2年次に選択する専門課程は、実ビジネスと関係の深い農業経済学科の開発経済学研究室へと進みました。

研究室では、途上国の経済問題や、貧困と飢餓について学びました。授業を通して、実はこの地球上には、全人類を養えるだけの十分な食料が存在することを知りました。それにもかかわらず、世界中で大量の食料が余って「飽食」の状態にある人たちがいる一方で、 飢餓に苦しんでいる人々もいます。つまり、飢餓の本質は食料の生産ではなく、分配の構造や仕組みに問題があるのです。こういった視点は、当時の私に大きな気づきを与えてくれました。こうした考え方に触れたことをきっかけに、自分の中の「食」に関する問題意識が徐々に鮮明になっていきました。

事業立ち上げの経験から起業の志を立てる

大学卒業後は、もっと深くビジネスの仕組みを学びたいと思い、コンサルティングファームに入社。その後、自分自身の原点である農や食とビジネスを絡めた事業に携わりたいと考え、日本総合研究所に入社しました。日本総研では、「創発戦略センター」という新規事業の創出を専門にする部署に所属し、約8年間、さまざまな企業と連携してインキュベーションに携わってきました。プロフェッショナルな同僚との出会いや、事業を立ち上げるという真剣勝負に身を投じた経験は、本当に自分の中の大きな財産になっています。

創発戦略センターは、底流にある社会や技術のトレンドを分析し、あるべきビジョンを策定して、そのビジョンと現在の状態のギャップから課題を見出します。そしてその課題を解決するビジネスのコンセプトを打ち出し、自らが旗振り役となって、共感してもらえた企業と連携しながらビジネスを0→1で作り上げていく組織です。事業戦略や計画といった絵を描くだけではなく、当事者となって実益の絡む他企業のメンバーと一緒に泥臭い実務を重ね、プロダクトの開発や事業化を推進します。

私は創発戦略センター在職時に、自律多機能型の農業ロボットの開発と事業立ち上げを行うプロジェクトの統括を務めました。手探りで試作機を開発し、何度も圃場(農産物を育てる場所)に足を運んで農業者の方々からフィードバックをもらうことでバージョンアップを繰り返していきます。それと同時に、各社と協議しながら事業計画を詰め、ファンドや出資候補企業との資金調達の折衝も進めました。何度挫折したか、涙したか覚えていないくらい大変でした。それでも志高いビジョンを実現するために、共創パートナーを巻き込みながら一丸となって事業化に突き進んでいく躍動感は、何とも言いがたいものでした。

結果として、民間企業5社から2.5億円の共同出資を得て、新会社を設立できました。もちろん事業立ち上げはスタート地点に過ぎませんが、コンサルティング会社であるにも関わらず、濃い密度で実務の現場に携われたことは、私のキャリアにとって、ものすごく大きな転換点になりました。

この経験を積んだことで、事業を立ち上げることの解像度がグッと高まりました。「いつか起業するかも」ではなく、次は自分自身で起業するんだという覚悟が定まり、今のAUDERの挑戦へとつながっています。

AUDERの今とこれから

現在AUDERは、サービスのユーザーとなる大手の卸売業者や小売業者などと連携しながら、プロダクトの開発とブラッシュアップを繰り返しています。当初想定していたユーザーへの提供価値が思いのほかニーズを捉えきれておらず、実は違うところにユーザーの課題があったという手痛い失敗もありましたが、プロダクトの仕様の言語化、エンジニアメンバーとの擦り合わせ、開発への落とし込みや実装と、身を粉にしながら着実に前進しています。

2022年4月からは実際の運用を想定した実証に取り組む計画です。2022年中には、サービスのローンチを予定していますので、どうかご期待ください!

AUDERについて>







みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!