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社内から事業アイデア60件超、新規事業の気運醸成に貢献したプロジェクト「amiten」:凸版印刷×GOB

amiten(アミテン)」は、凸版印刷株式会社(本社:東京都千代田区 以下凸版印刷)がオープンイノベーション型での新規事業開発を目的としたプロジェクト。

今回はamitenをはじめ、凸版印刷社内で新規事業開発に取り組んでいる西日本事業本部 関西事業部 関西ビジネスイノベーションセンター課長の中本広樹(なかもと・ひろき)さんと同チームの米田七海(よねだ・ななみ)さんに、これまでの新規事業開発の取り組みや、GOBとの協働について話を聞きました。(聞き手・GOB取締役 滝本悠)


「事業ポートフォリオの拡大」のため、オープンイノベーションに挑戦

大学生と凸版印刷社員が新規事業を創る「TOPPAN STARTUP PROGRAM2018」最終発表会の様子

2015年に、凸版印刷の有志の社員が立ち上げたamitenは、その後2016年から、GOB Incubation Partners(以下、GOB)が企画運営をサポート。現在まで活動を継続しています。

amitenは、凸版印刷の社員と外部の学生などが連携して新規事業開発するプロジェクト。その場で生まれた事業アイデアを社内のリソースを使って、事業化させていこうとするものです。

2019年度には初めて社内メンバーから事業アイデアを募集。すると、初めての試みにも関わらず60件以上の応募があったと言います。凸版印刷社内で、新規事業開発の気運を高めたプロジェクト運営のポイントを聞きました。

──凸版印刷としてはどのような背景があって、amitenのような新規事業開発に取り組み始めたのでしょうか?

中本 広樹さん(以下、中本):そもそも業界の話をすると、私たちの既存の事業領域である印刷物等の製造事業はどんどん縮小している状況がありました。

こうした流れの中で、凸版印刷として事業ポートフォリオを変えていかなければいけない中、新しいことにチャレンジして新たな事業を生み出していく必要性、重要性が高まっていました。

amitenでは、凸版印刷が持つ豊富なリソースを活用して、事業開発できる(amitenウェブサイトより引用)

ちょうど当時は「オープンイノベーション」の考え方が盛んになってきた頃で、私たちのような研究開発部門を持たないエリア事業部でも、新規事業を創造していきたいという話が出ていたんです。

地域のメーカーや流通企業と共に成長を続けてきた凸版印刷、amitenで原点回帰

──自社だけで完結させるのではなく、オープンイノベーション型で外部を巻き込もうと考えたのは、なぜだったのでしょうか?

中本:これは凸版印刷が成長した土台と関わってくるところです。もともと、凸版印刷という会社は、さまざまな地元企業と一緒に成長していく中でお仕事をご一緒するという流れがありました。エリア事業部は特にそういうところが強い。

例えば、昔ながらの蜂蜜メーカーや酒類など飲料メーカーさんのような、規模が小さい頃から販促業務などのお手伝いをしながら、一緒に大きくなっていったのが、私たちでした。

ですからamitenがスタートするタイミングで、もう一度お客さんや、経験を積んだ社内の企画系のスタッフなど、いろいろな人材の持つノウハウが混ざり合って、なにか新しいことができるのではないかと思ったんです。

amitenは、「網点(印刷で、色を表現する細かな点のこと)」という印刷用語から取っています。社内外の人材が混ざり合うことと色の組み合わせを重ねて名付けました。

特に新規事業となると若い人たちで進めているイメージがありますが、そうではなく、ノウハウを持っている上の世代の方も入ってくれたらいいなという思いがあって、amitenなら印刷用語だから社内でも浸透しやすいので、ちょうどいいなと。

近畿大学のゼミ生と凸版印刷の若手社員たちがイノベーション創出を目指す「Amikinプロジェクト」の様子

米田 七海さん(以下、米田):私は新入社員としてこのプロジェクトに関わりはじめました。

普段の業務では、どうしても既存のアイデアやサービスをどう活用していくかにフォーカスしていきますし、特に担当の業務以外に積極的に関われる機会は多くはありません。amitenなら、年次やエリア、社内外の企業とつながりながら、自分が関わっていないサービスや事業の可能性を考えながらアイデアを自由に発想して、成長できる可能性もあるので、そこに非常に可能性を感じています。

チーム内では、学生や社会人といった立場やキャリア、職種などを超えて活発な議論が見られる。

──中本さんのお話の中でも、キャリアを超えて新規事業に参画してほしいと言ったメッセージがありましたが、実際に関わってみていかがですか?

米田:チームは新入社員や2年目と言った若手から、年次が上の人まで一緒になっています。ある意味、事業開発という1点で見ればみんなそこまで知識や能力は変わらないので、フラットに議論できます。一方で、やはりその裏にあるビジネスモデル自体や業界についての知識などは社員の年次によっても全然違うので、改めて普段の業務とは別に先輩社員のすごさを知るというか、経験値の高さから学ベル良い機会になっています。

2016年からGOB参画、一人の課題を起点とした事業づくりに共感

GOBはプロジェクトの企画運営をサポート、写真はGOBメンバーの岡田佳奈美

──2016年からは我々GOBも参画し、amitenをさらに拡大させていくことになりました。改めて、このタイミングで外部のGOBを迎えようとした背景を教えてください。

中本:会社の中で新規事業を立ち上げようとすると、どうしても規模感が大きかったり小さかったり、中途半端なところがあったり、会社やお客さんのアセットに合うものから考えようとしてしまうところがありました。

GOBでは、かねてから一人の問題意識を起点とした事業づくり、小さいところからスタートしていく事業開発に取り組んでいるのを見ていて、そこに共感できました。

社内では、こういったプログラムを作った経験があまりなかったので、まずは小さくでもいいから、私たちエリア事業部として発信していきたいという思いがあり、取り組みをスタートさせました。

社内から60以上の事業アイデア、事業創造への気運醸成に一役

「DEMO DAY」では、各チームのアイデアをいち早くお披露目し、社外の人からもフィードバックを受けた。

──プロジェクトの成果や得られたこととして感じている部分を教えてください。

 中本:まだ完全に事業立ち上げまで持っていけているわけではなく、そこは課題が残りますが、プロジェクトを継続している中で、いくつか事業化への検討ができるアイデアやビジネスプランが出来上がってきているのは、目に見える成果の一つになっています。

また、amiten自体は何度か形を変えながら展開していますが、継続して取り組んでくれている人たちがいます。もともとamitenを立ち上げた際にも、そういう新規事業を作ろうとする雰囲気の醸成は目指していることの一つでした。

今期は、西日本全域で、社内から60数件の応募があり、小さいところからでも、続けることで気運が高まってきたなと感じています。

アイデアを殺さない社内制度づくりにも着手

──新規事業の文脈で、アイデア自体は可能性を感じるものが生まれてきても、それを社内で活かしていこうとするときに、社内制度や人事が壁になってしまうケースはよくあると思います。凸版印刷では、そのあたりいかがでしょうか?

まさに、アイデアや事業のタネが生まれてきているため、それを活かすべく、社内制度をどう変えていこうか、次のステップとして試行錯誤しているところです。

実は今期から、amitenで生まれてきたアイデアを継続的に検討していこうということで、普段の業務のうち何%かをその新規事業の立ち上げに当てていこうということをテスト的に始めています。

3ヶ月程度毎に1度上申をして、開発予算までは行きませんが、プロトタイプを作ったり、ランディングページを作ってヒアリングをしたりする予算を計上しながら進めています。現在はプロトタイプの初期段階を作り、対象者を絞ってヒアリングする段階に入っているところです。

そういう流れがたくさん生まれてきているのは、着実に成果に結びついてきているなと感じるところです。

──考えたものが考えただけで終わらずに、検討のテーブルに乗せて価値検証までをちゃんと進めているという、新規事業としてあるべきプロセスを踏めていますよね。継続したからこその成果だと思います。

実際の事業経験に基づいたGOBのノウハウが納得感と刺激に

──最後に、amitenをご一緒する中で、GOBという会社やメンバーに対する印象などもしあれば聞かせください。

中本:GOBの皆さんは、基本的に自分で事業を立ち上げていて、その中で失敗を含めさまざまな経験を持っているので、いわゆるコンサルティング会社が外から見て生んできたノウハウとは違うところがあるように思います。だからこそ、そこに納得感もありますし、その視点でメンタリングなどに入ってもらえるのはありがたいですし、参加する側としても非常に刺激になります。また、社会課題解決に取り組む学生等の起業を支援されている点には、個人的にも共感を持ちながらご一緒させていただいております。

米田:そうですね。やはり実体験に基づいているので、レクチャーの際にも、具体のケースを交えて話してもらえるので、事業開発について全く知識がない状態から聞いても納得できます。

それに、何より話しやすいです。質問したらなんでも答えてくれるという空気感があって、ワーク中も、みんなどんどん質問していますし、その空気感がありがたいです。寄り添いながら導いてもらえているなという感覚です。

中本:凸版印刷の有志からスタートして、当初は予算もつけずに動いていたamitenのプロジェクトが、GOBさんの協力もあって、ずっと続いているのは、本当に嬉しいことです。

この数年で人に依存しない仕組みづくりが進んでおり、amitenが社内のプロジェクトとして自立できてきています。

今後は、そこで生まれた事業のタネを、本格的に事業化するフェーズに関してもGOBさんとご一緒できればと検討していますので、今後の展開も楽しみです。

──ありがとうございます。GOBはこれまで、アントレプレナーのノウハウが結集した会社でしたが、企業の中での事業開発という部分でも、豊富な実体験や知見がたまってきました。今後も、事業化へ向けたレベルでも協働できれば良いですね。