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西表島でEVのトゥクトゥクを走らせる、hop on・松本亮さんへインタビュー

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現在、松本さんが住んでいるのは、沖縄県の南西部、石垣島からさらに西に進んだ西表島(いりおもてじま)です。地理的には、那覇よりも台湾に近い場所にあります。

松本さんは現在、この地でEV(電気自動車)のトゥクトゥクを走らせようと奔走中です。

なぜ西表島なのか、なぜトゥクトゥクなのか——そこに込められた松本さんの感性と世界観をインタビューで探ります。

松本亮(まつもと・りょう)さん
工業高等専門学校の電気工学科を卒業した後、大手エネルギー関連会社に就職。家庭用機器の品質管理やメンテナンス、商品開発などに従事した。

本業と並行して2021年から沖縄の石垣島にてEVトゥクトゥクのレンタルサービスの準備を開始。2022年12月に退職し、本格的に事業に専念。2023年5月から、GOBの客員起業家として社内で事業立ち上げを進めている。現在は、西表島にて事業実証中。

歴史好きで、現在の事象と歴史を関連付けて観察、推察することが好き。「そもそも論」で議論を迷走させがち。

旅行がきっかけで、トゥクトゥクを石垣島へ持ち込み

2023年7月、インタビューのためにZoomをつなぐと、少し日焼けした松本さんがやってきました。背景に映る自室は、借りたばかりでまだ家具がほとんどそろっていません。

松本さんが西表島に来たのは、2023年7月のこと。それ以前は長らく石垣島で事業の立ち上げを進めてきました。しかしサービス開発を進める上で、石垣島よりも西表島の方が事業の検証が進めやすいという判断から、移り住んだのです。

松本さんの事業「hop on(ホップオン)」は一言で言えば、EVのトゥクトゥクのレンタルサービスです。トゥクトゥクはタイを中心に、東南アジアなどで走る三輪自動車のこと。後部に荷台があるバイクのような作りの乗り物です。

所有するトゥクトゥクに乗る松本さん

なぜトゥクトゥクに着目したのか。これには、前職時代にきっかけがあります。

松本さんは、現在の事業にコミットするために2022年12月に会社を退職しましたが、それまでは大阪に拠点を置く大手エネルギー関連会社に勤めていました。業務の中で次世代エネルギーについて調べる機会があり、その一環としてEVについても調べていたそうです。

「EVを調べていると、シンプルにおもんないなと思ったんです。でも『面白くない』なら、逆に『面白い』車両もあるはずじゃないかと思って調べていたところ、出会ったのがトゥクトゥクでした」

その傍らでもう1つ事業につながるきっかけがありました。

2021年のゴールデンウィーク、松本さんは奥さんとの旅行で沖縄県の石垣島へ。「石垣島でいい土地でも、買っておいたら、老後とかに遊べたりして楽しんじゃないか」と、2人でバイクに乗って島内巡りをしたそうです。しかし、暑い中でのバイク移動は思っていたよりも過酷で、全然楽しく回れずに帰ることになってしまったと言います。

その時、松本さんの脳裏にひらめいたのが、仕事で見つけたトゥクトゥクでした。

「トゥクトゥクだったらちょうどええやんって思ったんですよ。せっかくなら、1 台くらい買って島に持ち込んでみて、みんなが喜んで乗ってくれるかどうかを実験してみようということで、すごく気軽に始めたのが事業のスタートです」

その後2021年9月に、およそ100万円ほどかけて石垣島にトゥクトゥクを持ち込み、島で知り合った人が運営するゲストハウスに車両を置いてもらうことになります。

当時はまだ会社に勤めながら、あくまで趣味的なプロジェクトでした。

hop onの世界観、自律が“地域ならでは”を生む

さて、ここまで松本さんの事業の概観ときっかけを聞きましたが、一番気になるのは、松本さんはこの事業で何を目指しているのかです。

事業の大元にある世界観を聞くと、「一番遠いところから話しますね」と前置きした上で、順を追って説明してくれました。

「まず、僕たちはもう少し自律している、つまり自分たちで物事を決定できる状態が理想ではないか、と考えています。これが大元にあります。

では、自律した状態を作るために何をしたらいいのか。その1つとして、自給率を上げることが重要な要素だと思っているんです。簡単に言えば、『自分のものは自分で作ろうぜ』ってことです。そうなれば、『人から言われたから』『人がやっているから』といったように他者に規定されたり、社会の通念みたいなものに縛られたりせずに済むのではないかと考えています」

松本さんは続けて、自律と地域との関係性について、話してくれました。

「自律や自給を突き詰めていくと、結果としてその場所にしかないものが生まれてくるというのが僕の読みです。(その土地に住む)その人がいるからできること、その風土だから育まれることが自然と発生してくるはずだと思っています。

そうなれば、地域において『自分たちがいるからこれが回っている』という状態が生まれて、ひいてはそれが、その地域への誇りのようなものに変わっていくのではないかと考えています」

こうした社会の流れをイメージした上で、その流れに寄与するパーツとして、松本さんは自分の事業を位置づけていると話します。

2023年内のα版ローンチに向けて

こうした松本さんの思い描くこれからの社会の流れと、現在松本さんが取り組んでいるトゥクトゥクの事業はどうつながってくるのでしょうか。

「今の事業で大事にしているのは3つの観点です。1つは、エネルギーを自給自足して自給率を上げること。これがEVである理由の1つですね。そして2つ目は、モビリティの生産に関する自給率を上げること。ゆくゆくはトゥクトゥクの生産やカスタム、修理なども事業の中に組み込むことで、この点を実装していくつもりです。

そして最後の1つが、こうしたエネルギーやモビリティ生産の自給自足を通じて、コミュニケーションを創出することです。話さないことには、自分たちの価値を伝えることもできなければ、自分たちが気づいていない価値について、他の人から教えてもらうこともできません。エネルギーやモビリティ生産の両面でコミュニケーションを生むことで「私たちのこれっていいでしょ」「俺たちのこれっていいんや」って言えるサービスを作りたいです」

事業を通じてこの3つを実現するための第一段階として、2023年内にはアルファ版のローンチを予定。ここに向けて現在、松本さんは、試行錯誤を続けています。

<続く>

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