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アメリカの看護師国家試験NCLEX-RNが面白い(6)

「NCLEX-RNで学んだ内容は臨床に出てからも役に立つ」という声をよく聞きます.
仰る通り,非常に実践的な問題が出題されています.今日はその中でも血液検査に関する問題を紹介しようと思います.

Q. A client is receiving a continuous intravenous infusion of heparin sodium to treat deep vein thrombosis. The client's activated partial thromboplastin time (aPTT) is 65 seconds (65 seconds). The nurse anticipates that which action is needed?
(患者が深部静脈血栓症の治療のためにヘパリンNaの持続点滴を受けている.患者の活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT))は65秒であった.看護師の行動として正しいものはどれか.)

a. Discontinuing the heparin infusion
(ヘパリンNa点滴の中止)
b. Increasing the rate of the heparin infusion
(ヘパリンNa点滴の速度を上げる)
c. Decreasing the rate of the heparin infusion
(ヘパリンNa点滴の速度を下げる)
d. Leaving the rate of the heparin infusion as is
(ヘパリンNa点滴の速度を維持する)

いかがでしょうか.
ヘパリンNaを使用した患者のケアに関しては,日本の学生でも実習中に受け持つ機会があると思います.その際には,日々の患者の身体診察,医療面接に加えて,検査データを加味してケア内容を考えていると思います.特に,ヘパリン使用中の患者の凝固系の血液データの確認は必須です.

この問いでは,aPTTの正常値とヘパリンの深部静脈血栓症治療時の投与量評価について確認しています.
aPTTの正常値は28~35秒で変化します.深部静脈血栓症の治療ではヘパリン投与量をaPTTが正常値の1.5-2.5倍(2倍で計算することもある)の範囲で維持する必要があります.つまり,28秒×1.5~35秒×2.5=42秒~87.5秒の範囲で維持できるとよいということです.
なお,深部静脈血栓症治療時のヘパリン投与量は80単位/kg(5000単位)で静注もしくは維持量(10000~20000単位/日)を投与する方法が,患者の病態に合わせて選択されます.高齢者の場合,過剰になることがあるので患者に合った投与量を計算式を用いて導くとよいでしょう.出血性の副作用の有無を確認して,出血症状が認められた場合にはプロタミン硫酸塩の投与を検討します.

a. Discontinuing the heparin infusion
(ヘパリンNa点滴の中止)
b. Increasing the rate of the heparin infusion
(ヘパリンNa点滴の速度を上げる)
c. Decreasing the rate of the heparin infusion
(ヘパリンNa点滴の速度を下げる)
d. Leaving the rate of the heparin infusion as is
(ヘパリンNa点滴の速度を維持する)

解答はd. Leaving the rate of the heparin infusion as is
(ヘパリンNa点滴の速度を維持する)になります.

深部静脈血栓症=deep vein thrombosis (DVT)は,略語で日本でもよく使用されているので分かりやすいかと思います.

ちなみに,日本の国家試験での凝固系に関して問う問題は,このような感じです.
Q.血液の凝固・線溶系について正しいのはどれか.
1. トロンビンは血栓を溶解する
2. フィブリンは一次血栓を形成する
3. プラスミンはフィブリノゲンから作られる
4. 損傷を受けた血管内皮に血小板が付着する

(第103回)
同じく知識を問うているのですが,より基礎医学的な印象です.
トロンビンはフィブリノゲンをフィブリンに変えます(1=×).フィブリンは二次止血で作用します.一次止血は血小板が作用します(2=×).プラスミンはプラスミノゲンが活性したもので,フィブリンからは作られません(3=×).損傷を受けた血管内皮は血管収縮が起こり,その後血小板が付着し血栓を形成して一次止血を行います(4=○).
凝固系を知らなくても,選択肢2と4は同じことを聞いているので,
どっちかなんだろうな,と50/50できる気もします.

いかがでしたでしょうか.
今後も,気になったNCLEX-RNの問題を紹介したり,こちらでの生活で気が付いたことを紹介していこうと思います.

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