美術大学で現代美術を学んだ僕が何故、小説を書いたか③
小説を公開する前の前書き③
それからの僕は、個展の最終日に見知らぬバックパッカーに言われた一言が頭から離れない毎日を過ごしていた。
「絵はともかく、文章がいいね」
文章か…。
僕にとって文章は自分と向き合う為の手段であって、誰かに向けて書くためのものではない。
絵を描く時の下書きや構想を書き留めるためのエスキースだって、本来誰かに見せるために描くわけじゃない、
はず。
僕はその時、大竹伸朗をふと思い出していた。
僕が多大に影響を受けた唯一の画家だ。
大竹さんのコラージュは、最初の支持体がエスキースだったとして、例えそれがこぼれ落ちてキャンバスに移動しても、リハーサルと本番の区別がまるでない。
何故か、その画面がその時頭を過ぎる。
…そうか、別に分ける必要は
無いのかもしれない。
僕は大竹さんの画集を開き
山塚アイのノイズを大音量で聴きながら
何か出来そうな気になっていった。
何か、書いてみようかな。
僕はその日から
詩を書き始めた。
そして、書き終わった処女作を
ある公募に出してみた。
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