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”ギフテッドではない?”お子さんとのdialogueの体験記

京都大学 教育学研究科 認知心理学講座の修士課程を休学し、京大生で運営するGOALOOK学習塾の副代表に就任。現在はギフテッド教育に関心を持ち、オンライン教育サービスdialogueの立ち上げに取り組んでいます。(サービスの詳細はこちらから)

今日はオンライン対話サービス dialogueでの、中学生B君との対話の体験記を書いていきます。彼と出会ったのはdialogueの起業前でして、その出会いが起業へとつながる事になるので、その経緯も綴ります。

タイトルに「ギフテッドではない」というよく分からない文言をあえて入れた背景は記事の後半で説明します。

B君について

中学三年生のB君は、物事の本質を一つ一つ深く理解したいという欲求が強くて、普段の生活でも疑問が多く知的好奇心や探求心が止まりません。

「なぜ空は青いのか?」
「人間の記憶はどうなっているのか?」
「モンティ・ホール問題について」

などなど、色々なことに関心を持っては自分で調べてノートに取る、ということをしていました。

またとても豊かで素直な感性と倫理観を持っていて、常に相手のため、みんなのためを考える子です。その反動として空気を読み過ぎてしまって自分の考えが素直に発言できなかったり、過度に自分を責めてしまうようなところもあります。

そして学校ではこのような個性が認められづらいのが現状です。疑問に思っていることを質問しても先生からは「今はそんなこと考えなくても良い」と言われることが多く、それを繊細なB君は過剰に受け取ってしまい質問することはダメなことなんだと思い込まされていきます。さらには自分は同級生や学校には合わせられないダメな人間だと自信を失っていました。

その後、不登校になり、親御さんとしても息子の興味関心を伸ばしたいと思っていてもやり方がわからず、年齢に合った学力や集団生活から外れることに不安を感じておられました。

学習指導で気づいた対話そのものの価値

そんな彼と出会ったのはdialogueの起業前で、GOALOOK学習塾の学習指導という形で関わり始めました。

GOALOOK学習塾は京大生の各講師がそれぞれの得意を活かした自由なスタイルで指導を行う塾でして、私の場合は学問への興味を育む対話と、勉強へのやる気を引き出すコーチングを主軸として指導しています。

B君の場合は、仏教の世界観と量子物理学の知見との共通点、資本主義社会の利点と問題点について、宗教者と科学者の物事の考え方の違いなど、私が大好きなテーマに関心を示してくれるので、嬉々として毎週対話をしていました。

とはいえ、お金を戴いている親御さんが求めているのは成績向上のことが多いので、B君の場合も対話をして彼の興味関心を満たしつつ、どこかで勉強の指導に繋げていかなきゃなという気持ちがありました。

そして実際に途中から学習指導にシフトしようとしたのですが、責任感が強いB君は私に言われた通りに勉強をしなければいけないという強迫観念を感じて、少し精神状況を崩してしまうことが起きました。

そこから、「やはりしょーじ先生は仏教とか科学とか知的な対話を提供することに集中して欲しい。それが息子にとって一番価値がある。」とお母さんから言って頂きました。

それは私にとって衝撃的なことでした。私からすると知的な対話は趣味みたいなものなので、それに安くないお金を払ってまで必要としてくれることに驚きと感動を感じました。一方で好き勝手にお互い興味あることを話すだけの対話にどこまで価値があるのか?という疑問がありながらも、ひとまずは対話だけを提供する方針に決めました。

B君との対話による変化

しかし週一回の対話による彼の変化は私の想像を超えるものがありました。

まずもともと緊張しがちだったのが、対話をするうちに振る舞いが堂々としてきて、表情も柔らかくなり笑顔が増えました。

また物事の本質を問うような批判的な思考がとても鋭くなっていって、一つ一つの言葉の意味を確認しながら議論を進める対話の作法を身につけていきました。

またそれによりネガティブな思い込みに対しても批判的な思考を向けられるようになったと言います。

「何で学校に行けない自分はダメだと思ってたんだっけ?」
「何で先生に質問してはいけないと思ってたんだっけ?」
「自分の不得意な領域で人と比べることに何の意味があるんだっけ?」


対話の作法を身につけることにより、こんな問いを自然と身の回りの現象に向けられるようになり、それにより自分のネガティブな思い込みに気づき、自己肯定感が上がったと言います。

以前だったら、電車に乗り遅れたらパニックを起こしていたのが、次の電車を待つまでの間にゆっくり景色を楽しめるじゃないかと、ポジティブな発想に思考を変えられるようになったと語ってくれました。

以下、お母さんが書いてくれた体験談です。

担当のスタッフの方は、息子の考えや発言に興味関心をもって耳を傾けてくださるので、息子はそれまで人の顔色を気にして押さえていた気持ちや考えを自由に表現できるようになっていきました。疑問を持つこと、それを人に話すことを肯定されたとうれしい様子でした。以前は人の視線を気にしながら小さな震える声で話すことが多かったですが、2か月経ったころには、しっかりした声で人前でも自分の意見が言えるようになってきました。それまで約2年止まっていた学校の学習も自分からやる!と言って再開しました。dialogueスタッフの方があこがれのお兄ちゃんになったようです。(B君のお母様の寄稿)

こんな変化がものの一ヶ月〜二ヶ月で起きました。改めて子どもの吸収力の高さに驚き、だからこそ早いうちに適切な教育環境を整えてあげる必要性も強く感じました。

このような体験から私は知的な対話そのものが持つ価値を知り、dialogueの起業に至ることになりました。

「ギフテッドではない」とタイトルに書いた理由

タイトルにあえてギフテッドではないお子さんという書き方をしました。

日本ではギフテッドかどうかの明確な基準がないので、そもそもB君がギフテッドかどうかを議論することにあまり意味はないのですが、IQ130以上で、分析的思考力が高くて、みたいな所謂ギフテッドっぽい特性を持つ子どもではない気がしています。

分析的な思考はあまり得意ではないけど、感受性が高くて、豊かな発想力から独創的な考えをしたりするので、もしかするとタレンティッドみたいなタイプだと言えるのかもしれないけど、芸術的なリテラシーが無い私にはよくわかりません。

いずれにしても伝えたいのは、「ギフテッド向けのサービスです」と言ったとしても、「タレンティッド向けのサービスです」と言ったとしても、彼にこのサービスが届くことはなかったであろうということです。

私は京大というアカデミックな環境に身を置いているので、ギフテッドな学問的才能の有無は少し話せば何となく分かります。

しかし芸術方向のタレンティッドな才能は私にはよくわからないし、B君のお母さんにとってはギフテッドもタレンティッドも定義が曖昧なよくわからない概念にしか見えないんだと思います。

学校の先生からしても同様で、ようやく文科省が本格的に動き出したとはいえ、現場の先生がギフテッドの子どもを見分けて、適切な支援に繋げる体制が構築されるまでは、まだまだ時間がかかりそうな気がします。

そこで私は「ギフテッドの子どもの生きづらさを解消する」ではなく「対話による知的興奮を提供する」という提供価値を前面に出して広報活動をすることでその課題を乗り越えられないか?と考えています。

サービス利用者がギフテッドかどうかは別に関係ない。

知的好奇心が旺盛な子どもは、このサービスを受ければ自分の興味関心を追求できて勉強や進学へのモチベーションも上がりますよというスタンスを取る。

しかしその裏では、ギフテッド特有のメンタル面の困り感にフォーカスした臨床心理学的なロジックをきちんと持って、傾聴スキルなどを含めたサービス提供の体制を確立する。

そうしたら自然と知的好奇心の旺盛なギフテッド的な特性を持つ子どもにサービスが届き、その困り感が解決していかないかと考えています。

あくまで仮説なので、批判的なコメントも含めてどしどし頂けると嬉しいです。(とはいえ優しい言葉でお願いします笑)

それでは、また。

オンライン対話サービス dialogueについて

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