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「名前」に宿る思い

生きていく上で、楽しいこともあれば悩ましいこともたくさん。そんな女性の悩みを、専門家に質問していくYoutubeチャンネル「GOAL IN TV」。番組を盛り上げてくれている出演者の一人、マルチタレント・わさびさんのコラムです!自分の人生を楽しく生きるためさまざまなことに挑戦する彼女の生き方についての連載。

うまく事が運べば、この文章をみんなに読んでもらっている頃、私の苗字は「土橋」から「小谷」に変わっている。

この度、ずっと仕事を一緒にやってきた一番気の合う相棒と籍を入れ、私は「土橋綾乃(どばしあやの)」というワガママそうな名前から「小谷綾乃(こたにあやの)」という儚げな名前に進化した。

私が「小谷綾乃」!? 

それ、黒髪セミロングで色白で、白いワンピースを着て「ウフフ」って笑う女の名前じゃないか。名前負け確定である。

もし“夫婦別姓”が選択できるのであれば、私達は別々の苗字にしたかった。自分達のアイデンティティとルーツを示す苗字が、どちらか消えてしまうのはとても悲しいから。

私は小谷家の人たちのことが大好きで、“その家族の中で育ってきた旦那君”が大好きだ。だから自分が小谷姓になることは単純に嬉しい。

でも自分が土橋家の人間だということも、できれば名前に刻んでおきたいのだ。

“わさびちゃん”という芸名を使っていながらも、自分の名前をすごく大切にしてきた。

父、天国にいる母、一緒に住んでいる叔母、弟、弟の奥さん・・・

土橋家の人たちが大好きだから、「その人たちと同じチームなんです」と主張していきたい。

友達に下の名前で呼ばれるよりも「どばし!」と呼ばれる方が好きだったし、結婚などする気もなく生きてきたのもあって、この「土橋綾乃」という名前にとても愛着がある。

だけど、現在の日本では夫婦別姓が認められていない。どちらかの姓を選択し、どちらかは苗字を変えなければならない。

「じゃあ結婚しなければいいじゃん」という人もいる。だけどそういう話じゃなくて、もう2021年。

宇宙旅行が計画され、自らサイボーグになる宣言をした博士がいるほど進んだこの時代で、日本はまだ「夫婦は同じ苗字にならないといけない」というルールだ。

かつては同姓しか選べなかった他の国も、1990年以降どんどん別性や“結合性”に法律が変わっていったのに。世界に取り残されているのがとても悔しい。

何ヶ月も話し合った結果、私たちは揃って「小谷」を名乗ることにした。様々な名義を変更する手間を考えたら、所属先の多い旦那君の名義変更の方が、より面倒くさそうだったからだ。

結局はそんな理由で、大切な苗字をあっけなく失ってしまうことになった。

婚姻届を提出する前に、記入ミスがないかを役所でチェックしてもらった時のこと。

婚姻届には、二人それぞれの父親と母親の名前を書く欄がある。私たちは父の名も母の前も全てフルネームで記入していた。

すると係の人が「お母様の名前には苗字は不要なので、訂正してください」と言って、それぞれの母親の欄に書かれた「土橋」と「小谷」に斜線を引いた。私たち二人を産み落としてくれた母親たちは、さみしくも、下の名前だけになった。

父には苗字があって、母の名はそれにくっついて下に書かれているだけになった。私たちにとって、父は父だし、母は母だ。

「土橋肇子」は「土橋肇子」以外の何もでもなくて、父の配偶者「肇子」ではない。

母の苗字を斜線し、訂正印を押してまで消し去らなければならないなんて。こんなルールじゃ、同性婚(法律上の性別が同じ者同士の結婚)なんか絶対に認められるはずない。

どうかもっと個人が平等に取り扱われる時代になってほしいと、世界の基準に少しでも追いついてほしいと、結婚することになって考えさせられた私たち夫婦だった。

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