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リモート版マネジメント術、実際にやってみてどうだった?

こんにちは。ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所のたじたです。リモートワークと生産性についてnoteを書いています。

今回はこのシリーズの最後ということで、これまでお話してきたリモート版マネジメント術「チームマネジメント2.0」を実践した様子をご紹介します。

※これまでの関連noteは以下の通りです。今回で6回目です。

導入のきっかけ

さて、今回ご紹介するのは、繁忙状態が続いている大手装置メーカーの設計部門です。「チームマネジメント2.0」を導入したきっかけは、部長さんから私たちに、次のようなご相談をいただいたことでした。

・リーダークラスである課長たちの意識改革が進まない
・課長に対して、役員から要請されている中長期課題が一向に進まない
・通常業務についても進捗が遅い。そもそも進捗しているのかも見えにくい。

同じようなことをお悩みのマネージャーは多くいらっしゃるのではないでしょうか。このようなご相談に対して、私たちは以下の問いかけをしました。

部下の力量が足りないと感じるなら、彼らが理解できるように、あなた自身がアプローチを変えませんか?

ご相談頂いた部長さんは生真面目で後輩の面倒見も良い素晴らしい方です。その性格がゆえに「なんとか現状を私が変えなければならない」という強い危機感と覚悟を抱かれていました。当時は新型コロナウイルス感染拡大により、リモートワークを余儀なくされていた時期でした。私達の提案に対し「そうか、まず僕が変わればみんなが変わるのか。じゃあ、やってみよう」とすんなり決断頂けました。こうして部長主導のもとで活動がスタートしたのです。

導入した活動内容

事例の活動内容

このチームは以下の手順で、前回記事に書いた内容を愚直に実践することにしました。

1.部長は課長への課題の「成果物」と「その取組が必要な理由」を文章で明瞭に指示する。
2.課長は、部長から指示された課題をどのように達成するかを考え、工程表を作成する。作成した工程表を、部長と課長で一緒に確認し、意図と異なるようだったらすり合わせをする。
3.課長は工程表をインプットとして、向こう1週間のタスクをアクションレベルにばらす。タスクばらしが苦手な課長に対しては、部長が手伝う。
4.日々のタスク遂行状況を、短時間のデイリーミーティングで共有する。
5.週次定例ミーティングで、課題の進捗状況や成果物へのフィードバックなどを行う。

スタート時にはオンラインでキックオフ研修を行って目的を伝えただけで、理論よりも実践で精度を高めていきました。活動が定着するまでは、週次定例ミーティングで作業時間を取り、工程表の更新やタスクばらしを確実に実施するようにしました。

なお、このチームでは、工程表はTeams上のパワーポイントを共同編集機能を利用し、タスクボードは同じくTeamsと連動しているMicrosoft Plannerを利用しています。※利用するツールは、その会社のIT環境に即して、扱いやすいものを選んでいます。

1ヶ月後…活動が定着していく

さて、プロジェクト開始から一ヶ月ほど経ち、気になってくるのが「メンバーのやらされ感」です。可視化ツールを導入すると、各メンバーの忙しさが見えるようになるので、抵抗感を覚える方がいることは少なくありません。「なぜ状況を見せないといけないのか」「私の仕事を管理するために導入したのでは」といった疑心暗鬼になってしまうと、本来の効果が発揮できないことが多々あります。

それが今回のチームは細かなタスクバラシが定着するように、私たちもサポートしました。1ケ月ぐらい経つと「(メンバーそれぞれの状況が)見えていること」が当たり前になりました。もちろん「見えること」で、遅れを責めない前向きな雰囲気作りが重要です。そこは部長さんの性格もあり自然とできました。

ただ、活動導入時は、メンバーによってタスクばらしの得手不得手がどうしても出てしまいます。全員のタスクばらしのやり方をチームで共有することで、上手なやり方を真似して取り入れるような相互学習効果が働きます。また、定例会議にも慣れてきて、ファシリテーターも参加者も、さくさくと議事が進むようになりました。リアルでやっていたときよりも、短時間で済むようになりました。

2ヶ月後…マネジメントが機能し始める

2ヶ月を過ぎる頃になると「見えるようになったこと」について、部長さんを中心に会話や対応が増えていきました。たとえば、繁忙状態の部下には優先順位を提示したり、進捗が滞っている課題については担当者を追加したりするといった対策を講じたのです。部長さんがチームをマネジメントできている状態となり、メンバーにとってみれば「見せる」ことによるメリットが受けられるようになりました。さらに毎日進捗状況を共有している関係性のなかで部長さんとだけでなく、メンバー間の対話が次第に活発になっていきました。個々の状況が見えることで、チームの結束が高まりました。

3ケ月後…成果が実感できるようになる

活動3ヶ月経過時点での部長さんの感想は以下の通りです。当初、部長さんは「リーダークラスの意識改革が進まない」とお悩みでした。意識改革を促すというアプローチではなく、部長さんが率先して行動を変えていく活動を続けました。結果的に課長さんたちの意識が変わっているところが興味深いです。

1.今までは、部下はバットを振ってもくれないと思っていたが、バットを振ってくれている状態になった。言い訳が減り、率先して「やりましょう」と言ってくれることが増えた
2.最初は「週次定例をやる時間などない」という感じだったが、今は忙しい中でも時間を取ってくれるようになった。
3.メンバーが何に困っているかが見えるようになった。他部署も絡んでいて、ここで手助けが必要、というところまでわかるようになった。
4.定例会議だけだと、結論も答えもなく発散だけして終わっていたが、課題を設定し、仕組を回すことでひとつのテーマから次の課題につながり、波及していくようになった。
5.参加者同士の会話が増え、見えなかったことについても声が届くようになってきた。

実際、このチームは会話の量が自然と増えました。3ヶ月経つと、成果物レビューの局面も増えてきますが、メンバー全員が発言しており、一緒に問題を考えていく土壌が形成されています。

半年後…参加した方々の感想から

活動を半年間続けた5人の課長さんたちに、率直な感想を伺いました。それぞれにお話を伺うと、以下のことが明らかになりました。

1.「タスクばらし」の有用性を皆さん実感している
2.定例会議の頻度については微調整が必要
3.答えのない中長期的課題への取組について、やってみると予想以上に大変だという感想が多い

ひとつめの「タスクばらし」について、私たちはこれまでにも支援先で「タスクボード」を導入するケースが多くありました。しかし、タスクの書き方に個人差が大きかったりするなかで、タスクボードが効果を発揮せずに廃れていくケースも目にしていました。

今回、私達はタスクばらしを定着するために何度も一緒に取り組んできました。日々の行動(アクションレベル)までタスクばらしを定着させ、仕事の取り組み方が変わるところまで愚直に進めてきました。タスクばらしが甘ければ何度も指摘することで精度が高まってきました。その結果、参加者の皆様も効果を実感され、改めてその必要性を再確認できました。

ふたつめの定例会議の頻度ですが、タスクばらしが習慣化された後にも日次会議が必要とは限りません。会議の頻度に関わらず、3カ月以上活動を継続し定着してきたら、そのチームが活動を進めやすいようにカスタマイズをしていくことも妥当な発展といえるでしょう。

みっつめの中長期課題の実現の難しさと、そこへの対処について、私たちは日々様々な場面で支援しており、いろいろな考えがありますが、これについては今回のテーマからは外れますので、またの機会に書きたいと思います。

今回のプロジェクトで最も変わったのは部長さんです。これまで報告を待つことが多かったのが、メンバーに率先して声を掛けトラブルを未然に回避できるチームに変貌させました。

最後に…インプット/プロセス/アウトプットの現実をみる勇気

今回ご紹介した事例について、皆様はどのような感想を持たれたでしょうか?当たり前のことにずいぶん手間を掛けるんだな…とお感じになった方もいらっしゃったかもしれません。

私ごとですが、企業支援の職に就いてもう12年になるなかで「部下が育たない」「ウチの社員は意欲が足りない」といったお悩みを、社長さん、マネージャーさんから何十回(100回以上かも…)も聞いてきました。いずれも、日頃親しくお付き合いしている方からのお話なので、そのように嘆きたくなるお気持ちも、状況の大変さもよくわかります。

しかし一方で、部下の方のお話を聞くと、わかりにくい指示内容に戸惑っていたり、本当はいろいろ会社のことを思っているけれども、期待されていないからと諦めていたり、上司からのお話とはまるで違う姿が浮かび上がることもよくありました。

はたして、上司の方の「指示したつもり」と、部下の方の「こんな指示を受けたはず」は、ちゃんと噛み合っているでしょうか。

自分たちのチームの、インプット/プロセス/アウトプットの現実をあらためて客観視することは、もしかしたら勇気がいることかもしれません。

けれども、認識のズレがない仕事の受け渡し(インプット)ができ、その進捗状況を上司と部下が共有し、そこに上司が適切なマネジメントを行い(プロセス)効果的に課題達成していく(アウトプット)ことは、リモートワークを機能させるだけでなく、ジョブ型雇用などが普及し、より自立・自律した働き方が求められるこれからの時代に不可欠になると私たちは考えています。

「ウチのチームの生産性が低いな…」とお感じになった時には、一度立ち止まってインプット/プロセス/アウトプットを見直してみてはいかがでしょうか。

・・・

3回シリーズと言いながら、6回も続けてしまいました。ここまでお読みいただきありがとうございました。今回のnoteが、皆様のチームの働き方にとって少しでもご参考になれば幸いです。

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