コロナ禍1年で見えてきた、リモート版マネジメント術
こんにちは。ゴール・システム・コンサルティング&リ・デザイン研究所のたじたです。リモートワークと生産性についてnoteを書いています。前記事からさかのぼっていただいても、今回の記事だけでもお読みいただける内容です。
前回の記事の最後でお伝えしました通り、今回は「リモート環境でチームの仕事をこなしていくためのルールとやり方」について書いていきます。
※これまでの関連noteは以下の通りです。今回で5回目です。
リモート環境だからこそ、チーム仕事のインプット/プロセス/アウトプットを確実にすることが大切
さて、リモート環境でチーム仕事の生産性をあげていくためには、職場で顔を合わせなくても仕事のやりとりがスムーズにできるように、やり方を変えていく必要があります。
これまでは「職場」で顔を合わせることで、少々あいまいな業務指示でもすり合わせできていましたが、リモートワークの環境下では、これまで以上に明瞭に伝えなければ、チーム仕事はうまく進みません。
このため、認識のズレがない仕事の受け渡し(インプット)ができ、そして、その進捗状況(プロセス)をチーム内で共有し、上司が適切にマネジメントし、仕事の成果物(アウトプット)が求められるスピードと品質で完成するようにしていくことが大切です。
とても地味な話ですが、これを直すのはかなり難しいです。なぜかというと、私たちは日々、仕事の受け渡しをしているのが当たり前で、そのやり方も、それぞれの人にとって当たり前の習慣になってしまっているからです。長年身に付いたやり方って、そうそう変わるものではないですよね。
だから、私たちが提唱する「チームマネジメント2.0」では、これまでの当たり前を変えていくための地道な取り組みを大切にします。その取り組み内容のポイント3点をこれからご紹介します。
ポイント1.受け渡しする業務をとことん見える化する
たとえば「情報共有」という言葉そのものは、ほとんどの人が知っていることでしょう。けれども、もしも「情報共有、ちゃんとやってね」と言われたとしたら、みんなの認識は一致するでしょうか?それぞれの人が、頭の中で思い思いの「情報共有」をイメージすることでしょう。
「認識は違って当たり前」という前提にたって、自分が意図することが相手にちゃんと伝わったのか、業務を見える化して受け渡しするよう徹底することが大切です。ここでいう「業務の見える化」とは、口頭ではなく文字で、ということに加えて、求められている内容があいまいならば、「成果物は何か」とか「何のためにやるのか」を確認したり、文字だけで伝わりにくければイメージを描いてすり合わせたりすることなどです。「業務の見える化」の見た目をキレイに整える必要はありませんが、ラフな手描き図解の画像共有でも良いので、認識をそろえるひと手間はかける価値があります。
ポイント2.一緒にタスクばらしをする
指示された業務が1日で終わるシンプルな内容なら、最初から具体的なアクションが想定できることでしょう。しかし、やり遂げるのに数日~数カ月かかり、やり方も決まっていない非ルーティン業務の場合は、どのように業務を進めれば良いのか想像がつかず、停滞してしまうことも多くあります。
このような場合、私たちはまず、どのように仕事を進めるか(プロセス)を見える化した工程表を作り、上司と認識合わせをしてもらいます。工程表のやり方は複数ありますが、イメージは上のイラストの通りです。山登りのためのルートを考えるような作業です。
ただ、工程表を作っても、それが数日以上かかるような取り組みであれば、まだ粒度が大きくて、具体的なアクションレベルにはなっていません。1か月後のタスクは大まかで構いませんが、向こう一週間でやるToDoレベルのタスクは、具体化されていなければ仕事が進められません。
実は、この「タスクをアクションレベルにバラす」ということは意外に難しく、苦手な方も多いです。たとえば「エクセルで新しい見積書フォーマットを作る」というタスクがあったとしても、それをどうやって作るのかを明瞭にイメージできなければ作業をスタートできません。そこで、タスクばらしが必要になります。下図は、このタスクをアクションレベルにばらした一例です。
①新見積書に載せる項目を決める
②レイアウトのラフイメージを手書きする
③エクセル表の外形を作る
④関数を入れる
⑤テスト入力と印刷をして、問題なく使えることを確かめる
タスクをバラすことが苦手な人がいたら、バラせるようになるまで、上司などの支援者が一緒にタスクバラシをして、勘所を掴んでもらうことが必要です。
ポイント3.定例会議を業務遂行のハブにする
ポイント1,2の実行により、仕事の受け渡しが明瞭にできるようになったら、今度はその進捗状況をチームで共有します。進捗管理の共有ツールとしては「タスクボード」が有名です。今では便利なタスク管理のクラウドサービスがいろいろ提供されていますね。タスクがきちんとバラせるようになっていれば、タスクボードはしっかりと機能してくれるようになります。
とはいえ、これらのタスク管理ツールを活かすために不可欠なのが、定例会議を業務遂行のハブにすることです。リモートワークであっても、毎日10分で良いからオンライン上で集まって、一緒にタスク管理ツールを見ながら進捗を共有していきます。
週に1回の週次定例では、この一週間のタスクの進捗を確認し、そして、これから一週間分のタスクばらしを各自行い、また新たな一週間をスタートします。タスクばらしが定着するまでは、週次定例のなかでワーク時間を設けて、みんながきちんとタスクばらしができるよう支援していくことも大事なコツです。
このように愚直な業務の見える化について、最初は抵抗感を覚える方もいらっしゃいます。ただ、1ヶ月以上続けていくと、見えることが当たり前の状態になっていき、抵抗感は薄れていくようです。導入時期は特に、見える化は誰かを責めるためにやってるのではなく、みんなが働きやすくするためにやっているのだという、未来志向の雰囲気を作ることも大切です。
チームの仕事ぶりが見えて初めて、上司はチームをマネジメントできる
このような見える化が定着してくると、上司はチームの状況がちゃんと把握できるようになります。それまでは「ウチの部下は意欲が足りないのか…」などと絶望していたマネージャーの方も、チームメンバーそれぞれが具体的に何に困っているかが見えるようになると、どのように支援したら良いのかがわかるようになります。
繁忙期の優先順位を決めてあげる、工程表の修正についてアドバイスする、他部門との交渉を助けてあげるなど、マネージャーならではの支援ポイントはたくさんあります。このように、マネージャーが的確な支援でメンバーをサポートできるようになると、ますますチームの雰囲気も良くなり、生産性に良い影響を及ぼすようになっていきます。
今回はずいぶん長くなってしまいました。次回はこのような活動を実践しているチームの様子をご紹介して、このシリーズの締め括りとさせていただきます。
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