見出し画像

ジョナコースで学ぶ「TOC思考プロセス」とはどのようなもので、どういう人にお勧めなのか?

こんにちは。ゴール・システム・コンサルティングの但田(たじた)です。当社では、しばらくクローズドで開催していた「ジョナコース」をオープン開催することになりました。そこで今回は、ジョナコースに参加する方が期待通りの成果を手に入れられるように、一方、ご参加いただいて「こんなはずじゃなかった…」と落胆させることがないように、TOC思考プロセスとジョナコースの特徴についてお話していきます。


ジョナコースとは?

ジョナコースでは「TOC思考プロセス」を8日間かけて習得します。座学で知識習得するだけではなく、学習の大半は、自分自身が設定したテーマに沿って「TOC思考プロセス」を適用し、問題解決のための戦略と戦術を構築していく実践的なコースです。修了者にはTOC思考プロセスプロフェッショナルとしての「ジョナ」資格が付与され、TOCの中核組織であるTOC-ICO(国際認証機構)に登録されます。当社は2004年から本コースをオープン開催し、300名以上のジョナを輩出しております。

と、お堅い説明を続けてしまいましたが、そもそもTOC思考プロセスって何なの?「ジョナコース」にはどんな人がお勧めで、ジョナコースでは得られないことは何なの?ということを、ここからお伝えしていきたいと思います。

「TOC思考プロセス」とは何か?

そもそも、TOC思考プロセス(以下、TP)とは何でしょう?細かく喋り出すとキリがないので、ここでは、TOCの関連用語について説明しているTOC-ICOの「ディクショナリー」の説明を参照します。

▼TOC思考プロセスの中身については、以下のページにご紹介しておりますので、こちらをご参照ください。

▼少し前のコラムですが、以下の村上の連載コラムでも、より詳しくご覧いただけます。

さて、ディクショナリーに戻って「thinking processes (TP) 」の定義を調べてみます。

thinking processes (TP)
– A set of logic tools that can be used independently or in combination to address the questions in the change question sequence for managing ongoing improvement. 
Usage: The thinking processes can be used to analyze both simple and complex systems, identify and solve system problems, and overcome the layers of resistance and achieve buy-in from individuals and various stakeholder groups as required. In addition they can be used to construct an organization strategy.
( tocico dictionary 2nd edition 120ページより一部引用)

拙訳で恐縮ですが、以下に意訳を示します。

思考プロセス(TP)
継続的改善を実現するために「何を・何に・どうやって変えるか?」の3つの質問に対処するための、論理的なツールのセットで、ツール単独でも、組合せでも使える。
使用方法:TPは、システム(組織などの仕組み)を分析し、そのシステムに存在する問題を特定し、解決し、(人が変化に抵抗する際に示す)「抵抗の6階層」を乗り越えて、様々な関係者と合意形成するために使うことができる。加えて、TPは組織戦略を構築するためにも使うことができる。

実際にジョナコースで行っていることも、この「使用方法」にある通りです。受講者の方には、所属する組織に関する課題(テーマ)をご用意いただきます。そして、各自が設定したテーマに沿って、TPの5つのツリー(※)を作成していくことを通して、課題達成に向けた戦略を構築していきます。

※TPの5つのツリー…TPの手法に沿って、因果関係ロジック、あるいは、必要条件ロジックに基づいて作成する5種類の論理的なツリーのこと。

TPでは、5つのツリーを作成するなかで、その組織課題に関する問題構造がどうなっていて、根本原因が何なのかを特定し、解決の方向性を明らかにします。そして、解決策を実現するためのロードマップ(ゴールと、そこに至るためのマイルストーンと、その達成順序を明示したもの)を作成します。また、この戦略シナリオを描く際には、関係者の「変化への抵抗」を予測し、それらの変更を乗り越えて、関係者と合意形成することに配慮します。

TPは、どんな問題解決に向いているのか?

「ジョナコース」にご参加いただく方には、大きく2通りの方がいらっしゃるようです。一方は、TPという思考ツール(手法)を習得したい方。そして、もう一方は、組織の課題解決のために、所属組織から派遣されて参加される方です。「ジョナコース」は、ご自身の課題をTPで解きながら、TPという手法を習得していただくプログラムですので、「実際の課題解決」と「TPスキルの習得」の二兎を追っていただける内容となっています。

しかしながら、ここでひとつお伝えしておかないといけないのは、TPは、「何でも解ける魔法の杖」ではないということです。このため、ジョナコースでの課題設定内容によっては、TPの効力をあまり発揮できず、期待していたような成果が得られないことにもつながりかねません。

このことをきちんとお伝えするために、まずは、TPが得意とする問題とはどういうものかをお伝えします。TPが適しているのは「組織の慢性的な問題」に対処することです。この「組織の慢性的問題」について、もう少しご説明していきます。

まず、対象が「組織」という意味ですが、組織というシステムは、何らかのの目的を持ち、そこに多様な関係者が存在し、相互に影響をしあっています。なかでも、TPが最も適しているのは、組織の中でも「営利企業」の問題を解くことです。

さて、このように多様な関係者が存在する組織では「あちらを立てればこちらが立たず」ということが日常的に起きているので、様々なトレードオフに直面してしまい、慢性的な問題に気付いていても、変化が起こせずにいるケースが多いです。

このような組織の慢性的な問題に際して、どのような方向に向かうべきかを明らかにし、どのような優先順位の下に、限られたリソースをどう配分していくのか、そして、どのように関係者と合意形成していくのかを考えて行く取り組みにおいて、TPは非常に効果的です。

そして、このような戦略構築をしていくためには、対象とするテーマや組織についての知見があることが必要条件となります。たとえば、ジョナコースの講師だからと言って、知らない組織を外から見て、勝手に問題解決するようなことはできません(やったとしても、実質的な効果は期待できないはずです)。

その組織が「その存在に気付いているのに、なかなか解決できない問題」を解くためには、組織の業務特性や、組織内で何が起きているかなど、リアリティに基づいた洞察が必須だからです。

「ジョナコース」では出来ないこと

さて、ここまである程度明らかになってきておりますが、ジョナコースではご提供できないことについても、ここでお伝えしておこうと思います。ジョナコースは8日間ぎっしりで、時間もお金もそれなりに必要となります。不幸なミスマッチを防ぐためにも、以下の3点をお伝えいたします。

1.知見が無いことをTPのテーマにすることは不適切
2.TPで「魔法の杖」のようなアイデアが得られるわけではない
3.DBRやCCPMなどのアプリケーションを教えるわけではない

前項でお伝えしましたように、TPでの問題解決には、そのテーマについて知見があり、かつ、受講される方がその問題を解きたいと思っていることが前提条件となります。そのため「海外紛争を解決したい」というような、ご自身が当事者でなく、リアリティについての知見が不十分なテーマを取り扱っても、良い戦略構築につなげることは難しいです。

「全くやったことがないけれど、いつかやってみたい新規ビジネス」なども同様に、TPには適していません。このようなテーマを設定すると、問題として挙げられるのは、「お金がない」「知識がない」「技術がない」などの、”ないない尽くし”になってしまい、その後の問題解決シナリオも脆弱なものになってしまいます。

また、TPは組織の慢性問題を解くのに適しており、TPを学んだからといって、魔法の杖を振るように、奇想天外な天才的発想がどんどん生まれるようになる、というわけではありません。

それから、「ジョナコース」はTOC思考プロセスについてのコースですので、TOCで有名なアプリケーション(DBRやCCPMなど)についての講義は含めておりません(講師と受講者の方の雑談などで、それらのアプリケーションが話題になることはありますが…)。

TPを習得することで、副次的に得られること

ここまでお伝えしたように、TPはすべてを解決する万能薬ではありません。とはいえ、TPのスキルを習得することで、副次的に得られることは多いにあります。

そのひとつは、ジョナコースで8日間TPスキルを磨くことにより、ビジネスシーンで日常的に役立つ「ロジックで考える力」が相当度鍛えられることです。

TPのベースになっているのは、「因果関係ロジック」「必要条件ロジック」の2種類のロジックの記述方法と、記述した内容が論理的に正しいかどうかをチェックするための「CLR」と呼ばれる質問の切り口です。

この3つの論理的なスキルは、ビジネスの中で毎日のように必要になります。仕事を進める時に「こうしたらどうなる?」「これをしないとどうなる?」と、二歩三歩先を考えたり、「このゴールに達成するためには、何ができている必要がある?」と、達成手順を考えたりすることは、どのような業務であれ役に立つ汎用スキルと言えるでしょう。

そして、CLRという検証方法を身に付けておくと、日々の仕事のやりとりが曖昧なために、後で大きな手戻りを引き起こしたりすることを未然防止できるようになります。また、思いついた内容について「それだけでは目標達成に不十分なのでは?」とか、「この目的を達成するためには、別の方法でも良いのでは?」など、より広い視点で、ビジネスを進められるようにもなっていきます。

もうひとつ、TPの副次的な効果として大きいのは「合意形成」に関するスキルです。5つのツリーを作成しながら、問題解決のための戦略を構築していくTPの構造には、関係者の「変化への抵抗」を乗り越えて、関係者を巻き込んでいくための「抵抗の6階層」の考えが組み込まれています。

この「抵抗の6階層」の考え方は、組織の変化を推進したいチェンジエージェントの方や、ソリューション型の営業の方などにも、役に立ったと言われることが多く、実務直結の内容となっています。

ジョナコースで得られたことを日常で使い倒す

ときどき、ジョナコース修了者の方とお会いした際に「TPをフルセットで使う機会があまりない間に、学んだことを忘れてしまった」と仰られることがありますが、これは本当にもったいないことだと思います。

冒頭のディクショナリーに示されているように、TPは組合せでも単独でも使えるスキルです。私自身、毎日のように因果関係ロジックと必要条件を使って、ちょっとした図を書いて、自分の仕事を進める上で役立てています。

私のなかでは、TPは栄養ドリンクの宣伝のように「翼を授けて」くれるツールです。ツールの力を借りることで、もともとの自分では考えられなかったような所まで視点を広げたり、深く考えたりすることが可能になります。

私自身まだまだ修行中ですが、使うたびに気付きや発見があり、ツリー作成にかけた時間以上の効果をいつも得られています。大げさな表現ではありますが、TPのツールを日々使うことで、人生が変わったぐらいのインパクトが得られていると、割と素直に思っています。
ぜひ、ジョナコースをこれから受講される皆様にも、TPスキルを毎日の中で使い倒して、ビジネスに役立てていただけたら嬉しいです。

今回はだいぶ長くなりましたが、ここまでご覧いただきありがとうございました!ジョナコースには、年に1~2回開催しており、お得な早割やグループ割もございます。ジョナコースに関してご質問がある方は、問合せフォームよりお気軽にお問合せください。

▼当社では、最新のセミナー情報など、仕事に役立つ情報を週に1回お届けしています。登録無料・いつでも配信停止可能です。当社のニュースを見逃したくない方は、ぜひご登録ください!

▼記事に関するコメントは、お気軽にコメント欄にご投稿ください。また、当社へのお問合せ等は、以下の問合せフォームよりご連絡ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?