KFCとダックスフンド
前回のKFCの記事に書き忘れたことがある。
それは期間限定のオリジナルチキンだ。今なら辛口黒こしょうが出てるようだがオリジナルに勝るものはない。賢明な方ならお気付きだと思うがただの客寄せパンダだ。
オリジナルチキンより味が濃いがその正体は衣だ。カーネルサンダースのレシピに入っていないものを余計に付け足している。
衣が厚くなったがゆえにチキンとの一体感は皆無だ。一口かじればわかる。チキンから衣がずる剥けになるだけだ。カーネルが生きていれば商品開発部門など切り刻まれて死ぬのみとなる。
↑若かりしカーネル
と。まぁここでKFCの記事は終わりとなるのだが、最後にもう1つ語りたい物語がある。
俺は生きるということを誤魔化さずに生きたい。
オリジナルチキンの本当のオリジナルは生きた鶏だった。品種改良という名の魔改造を受けた生物だ。
骨の形状や前回述べた腎臓などを気持ち悪いと思う人もいるだろう。
だがパック詰めされた形が整った肉も全て元は命だったのだ。
俺たちは命を奪い生きている。
↑新井英樹『ザ・ワールド・イズ・マイン』飯島猛より
あいつを思い出す。
あいつほどオリジナルチキンを貪欲に食うやつを俺は見たことがない。
あいつは食っていたのではなく戦っていたのかもしれない。神に預けられた命を取り戻すために。
~10数年前~
あいつは当時付き合ってた女の子が飼っていたミニチュアダックスフンドという犬種だった。
健康マニアの彼女の元であいつは毎日同じようなヘルシーフードを食べて、人間の俺よりこまめに定期健診を受け、朝夕の散歩はもちろん非常に大事に飼われていた。
俺は犬猫をはじめペットを飼うことに興味がない。(熱帯魚は飼っている、いつか記事を書きたい)
犬への接し方はよくわからんが、あいつは俺を見ると嬉しそうにいつも駆け寄ってきた。餌をやることもあった。所定の場所から餌を取り出し、決められた量を取り分ける。
あいつはどこか不満げにいつも餌を食っていた。わんとかキャンしか言わないあいつに自分を重ねる。毎日同じもん食って、いくら健康とはいえ面白くないだろうなぁ。
彼女に聞いてみた。
「ケンタッキー食わしていい?」
もちろん返事はだめだった。体に悪いからダメだと言われた。
そうだよねー!と愛想よく返事をし、俺は彼女の隙を見てケンタッキーを買いに行った。
「オリジナルチキン2つ。と水。」
喉に骨が詰まって死んでしまったら言い逃れはできない。俺は慎重に骨を外してあいつに渡す。
とんでもない勢いでオリジナルチキンにむしゃぶりついた。
命を取り戻したかのような躍動感、初めて見る動きだった。
食い終えたあいつは鼻がいつもの数倍テカテカになっていた。
すごいテカテカしていた。
俺は思った。