ホストクラブあの夜、鼻ニンニク part2
店は決まった。
あとは行先の決まった特急電車に彼を押し込むだけだ。力づくではなく論理という暴力で誘導する。導くのだ。
俺は素直に彼が一流ホストでなくともアシストとして素晴らしい才能があると伝えた。嘘ではない。体験入店だろうが行けば金はもらえる。嘘ではない。若いときにある程度、特殊な経験はしておいた方がいい。男に限って言えば嘘ではない。
火がつけば、あとは煽るだけだ。火を消す勢いで煽るのだ。より火の勢いは増していく。
「体験入店の電話怖いなら俺がしてあげるよ?」
「いや、自分でやります!」
行ったっ!!!乗った!!!!
ベランダでごにょごにょ電話している彼を見て、俺は1つの山を越えた実感に胸が震えた。
「決まりました!明日っす」
デビューは決まった。
このまま明日を戦えるのか。歌舞伎町で彼は通用するのだろうか。
ホスホスというサイトで片っ端から今を生きるホストの群像を追う。
うっ・・だめだ、武器が足りない。防具も足りない。なにもかも足りない。
髪さえなんとかしたらなんとかなる気もするが、ホテルマンの彼の髪は短くてアレンジもできない。
追い詰められた俺にパソコンのモニターから一人のホストが笑いかけた。
「チャームポイントはこの八重歯でーっす♪」
↑こんな感じ
お世辞にもかっこいいとは言えないホストが自己申請するチャームポイントらしい八重歯。
この人のギャグらしい。
面白い面白くないは関係なく、俺は天啓だと思った。
日焼けの跡が残る後輩の顔を見てチャームポイントを探した。
少し赤みがかった鼻。皮が少しめくれた鼻。鼻。鼻。
ニンニクみたいな鼻。
これしかないと思った。
「チャームポイントは…鼻にんにくーっ♪」
↑こんな感じ
このギャグしかない!
これで歌舞伎町に勝負かけるしかない!!
俺は彼にこのギャグを伝授した。
「チャームポイントはの後、少しだけ溜めろ。間をおけ。そっから勢いで鼻にんにくーーーっ♪わかる?両手の人差し指で鼻を指すの絶対に忘れるなよ」
翌日、彼は鼻ニンニクという武器だけを持ち歌舞伎町へと旅立った。
うまくやっているのだろうか。不安な時間だけが過ぎていった。
日付をまたいだ頃、彼は帰ってきた。
笑みを浮かべ、手には万札が2枚握られていた。
続く
えっ?俺をサポートしたいって?いいぜ。やっチャイナ♪