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歌のチカラをインドで見た

もう二十年前のことになりますが、中国やインドなどアジアの数カ国を四、五ヶ月間かけて訪問したことがあります。
猿岩石がヒッチハイクでユーラシア横断した後、時代的にも就職氷河期に入ったことで若者がこぞって旅に出た頃です。

中国からパキスタン、そしてインドと、観光ビザの期間をフルに滞在して、次の目的地を決めながら徘徊したのですが、3カ国目のインドでのこと。

当時インドのカルカッタという町は、こういう放浪の旅人の安息地のような場所だと言われていました。航空券が安いという理由もありましたが、サダルストリートという安い宿の集まるエリアがあり、自然と旅行者が集まってきていたので情報収集出来たり居心地が良かったというのもありました。
その中でも特に有名な2つの宿があって(名前忘れました)、その一つに宿泊していた時のこと。

だいたい夜になると特にすることもなくなるし、部屋も蒸し暑い。仕方なくホテルの屋上に行って、旅行者と話をして過ごしたり、旅行者と交換して新しく手に入れた日本語の本を読んで過ごすのが定番です。

その日は同じ相部屋になった旅行者と屋上で話していました。
すると近所から、音楽が流れてきて、しかも数人の歌声まで聞こえます。
なんか聞いたことある音楽。
何だろうと思って探して見ると、隣の宿の屋上にも旅行者が集まり、テーブルを囲ってギターで合唱していました。

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そして歌っている歌は、ジョンレノンの「IMAGINE」です。
(※ピンボケしてます)

おそらくこの日に初めて会って、名前も知らず、国籍も年齢も生い立ちもバラバラの旅行者が、ギター一本で一つの歌を歌っている。
しかも、人類の平和を願う歌を、“インド”で、です。

私達の宿の屋上にいた旅行者も集まってきて、みんな自然と歌っていました。

世界中の誰もが歌えるということと、そして全員が人類の平和への願いを込めた歌だと知っていること。
そして当時の僕も含めて、ここにいる旅行者は、社会に何かしら違和感を感じてドロップアウトした人達が大半です。
それぞれが、今の自分や旅の出来事を想いながら「IMAGINE」を聞いていたと思うし、平和の音楽を中心にみんなで一体感を感じる時間でした。
名前も知らない、言葉も通じない人達と音楽を介して一つになれる。初めてリアルに音楽のチカラを感じた瞬間です。

何とも言えないピースな感情になった夜。旅行の事を考えると必ず思い出す出来事の一つです。

#創作大賞2022

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