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5本の指が動かせる、最新の義手

10月22日から中国杭州で開催されていた、第4回アジアパラリンピック競技大会が10月28日に閉幕しました。一部競技はパリ2024年パラリンピックの予選を兼ねて行われ、卓球、テニスをはじめとしたさまざまな競技で、日本の選手がパリの出場権を手にしました。

開会式では、AIが搭載された義手を装着したパラアスリートが聖火の点火をし、産業用四足歩行ロボットを改造したスマート盲導犬がランナーに伴走し、話題となりました。

今回は肢体不自由について、そして、最新技術を用いた義手について、お話していきたいと思います。


1.肢体不自由とは

生まれつき、または病気や事故などによって上肢(手・腕)、下肢(足・脚)、体幹の運動機能に不自由があったり、立つ、座る、歩く、食事、字を書くなどの日常の生活動作に困難のある状態をいいます。

その他、脳卒中や事故などにより、脳の一部が損傷することによって、言葉を話したり、理解するのが難しい場合もあります。また自分の意志と関係なく体が動いてしまう不随意運動を伴う場合もあります。

早期の適切な治療やリハビリテーションが効果的と言われ、子どもたちのために、地域に通園、又は入園で療育が受けられる機関があり、サポートが受けられます。

2.肢体不自由の子どもの日常を描いた絵本「さっちゃんのまほうのて」

主人公、さっちゃんが、友達との会話で深く傷ついた経験が描かれています。それでも、お母さん、お父さんにささえられながら、弟の誕生を通して、さらに成長していくさっちゃんの姿に胸が熱くなりました。

この本が出版されたのは1985年。今でこそ、社会が多様性を受け入れようという方向ですが、この間長きにわたり、この本は幼稚園、保育園での読み聞かせに、そして小学校の授業に使われてきました。多くの子どもたちがこの本に出会い、様々な思いを抱いたことと思います


偕成社HPより

作: 先天性四肢障がい児父母の会
  野辺明子、しざわさよこ 共同制作
絵:たばたせいいち
出版社:偕成社

ようちえんでままごとをしているときに、さっちゃんは「てのないおかあさんはへんだもん」といわれ、けんかになってしまいます。

さっちゃんはおかあさんに「どうしてみんなとちがうの?どうしてみんなみたいにゆびがないの?」と尋ねました。さっちゃんの右の手にはいつつのゆびがないのです。「さっちゃんのゆび、小学生になったらみんなみたいにはえてくる?」おかあさんはつらいことでしたが思い切って「さちこの手は小学生になっても今のままよ。ずっといまのままよ」とつげました。さっちゃんもお母さんも泣きました。

その後さっちゃんはしばらく幼稚園に行けなくなってしまいます。そんな時、さっちゃんのいえにうれしい出来事がありました。弟が生まれたのです。病院の帰り道、さっちゃんはおとうさんに「さっちゃんもおかあさんになれるかな?」と聞きました。「さちこはきっとすてきなおかあさんになれるぞ」とお父さんはいいました。

3.5本の指が動かせる義手

義足や義手などの義肢の研究は目覚ましい進歩を遂げています。最新の義手は腕の筋肉の動きによって発生する電気信号を検知して作動する筋電義手とよばれるものです。利用者の筋肉の動きのパターンをAIで分析し、登録した電気信号に応じて動きが変えられます。5指が独立で動き「握る」「つまむ」といった動作も含め、生活に必要な80%あまりの生活動作に対応できるという先行研究もあり、軽量化も進みました。

残念ながら、子ども用のものは重量の関係から、5指が動くものとなっていませんが、物を「持つ」「つかむ」という動作が可能で、子どものできることの選択肢が広がるという点で大きなメリットだと言えると思います。

一方で様々な課題も存在しています。義手を使いこなすためには、定期的なリハビリ、調整が必要で、この過程を経てはじめて、公費での給付が受けられるようになります。訓練用の義手が足りないということ、また専門のスタッフが少ないため育成が急務であること、さらには専門医療機関が限られており、希望しても居住地によっては利用しづらいという課題もあり、すでに関連の病院間での連携も進んでいるようです。

TBSが筋電義手を利用している女の子を取材した動画がありましたので、以下に紹介します。情報は少し古く、2年前のものになりますが、筋電義手がどのように役立っているかを知ることができるかと思います。さらに研究が進んでいくことを心から期待したいと思います。


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