『　9 』

　　　　　　　　　　　　　　　　執筆者：chikai

カツ カツ カツ カツ・・・刀葉林さんのハイヒールの靴音が 5 日目からずっと私の後をつけてきます・・・
子どもの頃、お寺に『地獄と極楽』(画 中村ひろし 野沢ともかつ・大道社発行)という子ども向けのまんが本 がありました。 亡者が赴く地獄での数々の責め苦、それはこれまでに重ねた悪業に応じた仕打ちだというのですが、鬼たちに叩 かれたり、刻まれたり、つぶされたりするオノマトペと、叫び、呻き、痛み、嘆きのオノマトペが、地獄の恐ろし さを私の耳と心に容赦なく打ちつけてくるのです。 でも、そんなオノマトペよりも、もっと怖いシーンがあったのです。それは、大きな岩に挟まれて紙人形のよう になった亡者たちが、風に吹かれてまた元の亡者の姿に戻ってゆくシーンです。そして、その時の亡者のセリフ が子どもながらにとてもショッキングで恐ろしいと感じたのでした。
「あっ またいきかえった もうくるしまないですむと おもったのに......なさけない」
私は「悪いことはもうしません」と泣きそうになりながら読むのですが、不思議と何度も何度も本棚からその本を取り、繰り返し読んでいたことを覚えています。
カツ カツ カツ カツ・・・よみがえれ よみがえれ・・・
吐く息 吸う息 生きながら 生きながら・・・
ああ、また つくってしまった・・・
よみがえらなければ ならないタネを・・・
赴く先は、無限ループの苦しみの世界。
カツ カツ カツ カツ・・・

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