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「地獄の環境」

             執筆者:ken-shin 

 以前youtubeで、「5億年ボタン」という動画を視聴したことがる。あるボタンを押すと100万円出てくるが、その代わり何もない空間で5億年過ごさなければならないというもの。5億年間は意識があり、食事をとらなくても死なず、とにかく何もしないで過ごすのみである。5億年の世界に飛ばされた主人公は次第に絶望していくが、そのうち何もしなくなる。ところがある時自分の存在理由を考えはじめ、膨大な時間によって思考は続けられ、とうとう悟りの境地まで達してしまい、彼は空間と調和していくというものである。

 仏教では途方もない時間が語られる。例えば『一劫』とは、「4里四方の岩山を100年に1度天女が降りてきて、そのまとった羽衣で岩山を撫で、その摩擦で岩山が無くなってしまう時間」とある。そして『仏説無量寿経』には、阿弥陀如来は悟りを得るための修行方法を実に五劫の間考え続けたと説かれている。悟りを得るためには途方もない時間がかかるのだ。

 地獄の1日は人間界の500年に相当するという。私たちが自分の罪や行いを反省するためには、地獄においてはそれほどの時間が必要なのだろう。途方もない長い間攻め続けられ、それで初めて私たちは自分の行いに気づくのである。

 「5億年ボタン」は、ボタンを押して、5億年経って100万円もらった時には、その5億年の記憶はすべて消されることになっている。何もしなくても100万円もらえたという欲望の事実だけが残り、せっかく悟っても、その悟った素晴らしい調和の世界は、あっけなく忘れていく。「5億年ボタン」こそ、実は最も厳しく恐ろしい地獄の責め苦なのではないだろうか。


同時配信の四コママンガはこちらから↓
https://twitter.com/gobousun/status/1514865013026332672?s=21&t=aRaTYhH9TdD5WoOvRty2CQ

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