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note感想🌟 共作小説【白い春〜君に贈る歌〜】第5章 「永遠」③
この手紙を読む頃、きっと私は、もうこの世にいないでしょう。
旅立つ準備は終わってるんだね。
河津桜が天の川みたいに咲いていた。
紗良さんと三浦さんが笑っていたあの時が、夢みたいだよ。
喪うときは、いつだって、つらいね。
でも、泣かなくていいからね。
人は必ずこの世を去るものだから。
覚悟はしていたし、仲良くなってしまった分少し辛いけど、心はずっとそばにいるよ。
だから、私のことを近くに感じながら、この手紙を読んでほしいな。
紗良さんの声も、優しさも、笑顔も。
みんな忘れないから。
紗良さんを想うとき、いつも君がそばにいるんだ。
手紙を書いている今は、病院祭の3日後。
体調は悪くなるばかりで、痛みと怠さのレベルが今までとは桁違いにひどいかな。
きっともうすぐ寝たきりになって、みんなとも意思疎通出来なくなってしまいそうな気がする。
だから、今のうちに、どうしても伝えたいことを書いておくね。
生命の最後の火を燃やすように書いて。
紗良さんの想いが伝わってくるよ。
三浦さん、カッコよかったね。
本調子じゃなかったかもしれないけど、でも、紗良さんの夢が叶った瞬間だから。
12年ぶりに人前で歌うなんて、きっとものすごく勇気がいったでしょう?
自分の中の葛藤も沢山あったはず。
すべて乗り越えて、私のために歌ってくれたんだね。
その真心が、とても心に響きました。
一生忘れることのない、最高のプレゼントをいただいたと思ってます。
三浦先生の本当の姿は、アーティストのレン。
Seijiさんともつないでくれて。
紗良さんに道をつくってもらえたね。
ジョン・レノンの曲をかけて、精神を保っていたけど、せめて大好きな音楽に浸って、心を落ち着かせようとしていたんだ。
そしたら、あなたが聞いてくれたの。
「ビートルズ、好きなんですか?」
って。
「ジョンですか!いいですね。」
って。
嬉しかった。
好きなものと好きな人がつながった瞬間。
こんな終末の世界にも、私のことを理解しようとしてくれる人がいたこと、心が震えるほど嬉しかったよ。
三浦さんと音楽の話で盛り上がったね。
好きなものも似ていたね。
初めから、なじんでいた2人だったね。
お似合いでした。
エッセイ集を読んだら分かるけれど、あなたはいつも、自分の事以上に、人の悲しみ、苦しみを背負ってしまう人だよね。
身が引きちぎれるほどに、辛い時もあったと思う。
生きることをやめてしまいたいほどに、苦しかった日もあったよね。
孤独に打ちのめされそうな夜を、何度越えてきたのだろう。
でも、そんなあなたの存在に救われたって人が、いっぱいいると思うんだ。
それはきっとホスピスだけじゃなくて、アーティスト時代もね。
優しくて、傷だらけになっても、それでも優しくて。
何度も暗闇を見ても、人を救ってる。天使みたいに。
シスターの神崎さんから、とても印象的な言葉を伺ったんだ。
「信仰を持つ私たちが穏やかに『死』を捉えることができるのは、死の先に『希望』があるからです」
って。
だったら私自身が、死の先の「希望」になりたい、って強く思った。
希望があれば、怖くない。
死を超えられるのは、その先に安心があるから。
昨日はどこにもないから。
今とこれからを見ていくんだね。
紗良さんの歌、聴きたいな〜
そしてね、まだ、三浦さんに言っていなかったことがあるの。
……実は、私も元歌手だったんだよ。
嘘じゃないよ、本当の話。
歌手だったんだ。
だから、あんなに歌がうまかったんだね。
最後にサプライズだよ。
たったの4ヶ月。
これ、短いと思う?
それとも、長いと思う?
私は、あっという間だったけど、誰よりも深い時間を過ごせたと思う。
だって、こんな手紙を書けるほどに、心通わせられたんだから。
奇跡に近いと思ってるよ。
そしてね、これって、人の人生も同じだと思うんだ。
出会いも人生も、長さより濃さ。
深く心を通わせられたなら、浅くて長いよりいいよね。
33年でこの世を去る。
悔いは無いというけど、三浦さんと本当にはじまってはいなかった。
最後まで前を向いて生きることができた。
紗良さん、もっとわがままになってもいいんだよ?
生まれ変わったら、三浦さんともう少し早く出会って、本当に幸せになれることを願っています。
紗良さんは、もっと幸せになっていい人だから。
「あなたと音楽で共作したい」という夢、託してもいいですか?
紗良さんが残した歌に、三浦さんが命を吹き込む。
芸術は永遠だから。
その歌を歌うとき、三浦さんは紗良さんを思い出すね。
忘れないよ、紗良さんと出会ったこと。
アーティストのレンには力がある。
それを紗良さんは誰よりも見抜いているんだね。
新しい歌。
悲しみを乗り越えて。
レンなら、きっと、できるよ。
あなたの夢を、形にしてみせて。
芸術で人を幸せにしたい。
その夢、叶えてみせて。
つらいこと、悲しいこと。
それは乗り越えて、芸術として輝かせるために与えられたのかもね。
思うことは、その人になる。
天国にいる紗良さんまで届くように。
心のそばにいる紗良さんと、いつも共作してるんだ。
寂しい時には、一緒に歌っていると思ってね。
あなたが私を想う時、私は必ずあなたと一緒にいるから。
約束する。絶対だよ。
これからは2人で生きていく。
形は無くても。
いつも紗良さんをそばに感じて。
想いは永遠だから、その想いと共に生きていこうね。
また、会おうね。
その笑顔を見せてね。
🌸この記事は仲川光さんの企画参加記事です🌸
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