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正しい生活

僕はどれだけお金を稼いでいようが、どれだけ幸せな生活を送っていようが太りたくはない。人間の生活の中で最も目にするわかりやすい部分をちゃんとしない人がそれ以外のところでしっかりできるようには思えないのだ。だからと言って、太っている人を悪く言うつもりはない。太っているのに太っていない顔や素振りをしている人が気に食わないのだ。万が一、そういう人に太っているなんて言葉を言うときは末代まで呪われてしまう覚悟をしないといけない。

ごく稀にそういう風に見えるだけだと言う人もいる。着太りしてしまう、顔が丸いだけだと。僕からしたらそう見えた時点で試合終了なんですよ。あなたは太っていないと服をまくり上げて、お腹を見せることはないだろうし、見る気もない。

そんな僕が自粛生活中に顔が丸くなった、太ったんじゃないかと言われてしまったのだ。自分はそう感じてはなかったが、体重計に乗ってみると、今までの体重に比べるとかなり太っていた。外に出て運動することもなくなり、ご飯も作るようになり、太る原因はいくつか考えられた。まずは運動しようということでまずは形から入れば、やめづらくなるだろうということでランニングウェアを買った。高校までサッカーをしていて、それなりに体力はあったつもりなので、走ってみるとそういうわけにはいかなかった。今は毎日酒を飲み、タバコもかなり吸う。僕のカラータイマーは数分で点滅してしまったのだ。そうなってしまうと脚が全く前に進まない。息を整えながら家に帰り、明日はもう少しゆっくり走ろうと決めたが、次の日、全身筋肉痛となり、通常生活するのもままならない。

運動して痩せるのはやめようということで、食事を改善しようと決めた。様々なダイエット方法はネットで調べると山ほど出てくる。その中から自分に合う方法を探しあてるのは現実的に無理だと悟った。そして、結局痩せるダイエットは食べないことだと結論づけた。身体に悪いだとかリバウンドしてしまうとかそんなことは考えない。とりあえず目的は痩せることだ。痩せた後のことを考えるのは欲しがり過ぎだし、ダイエットしない言い訳になりうる。とりあえず当初の目的を果たしてから、その後のことを考えたらいいのだ。しかし、一つ注意して欲しいのは僕は数キロ程度のダイエットだったので、食べないという選択をしただけで、中長期的のダイエットなら別の方法を試していたかもしれない。

食べないダイエットの効果は絶大だった。あっという間に元の体重に戻ったのだ。もちろんお腹は空くが、別に外に出ることもないし、カロリーを使うようなこともしないので、我慢はできたし、三日目ともなると空腹が心地よくなってきた。

目標体重になった後は多少ご飯は食べるようにはなったが、せっかくだし食事以外にも日常生活で減らせるものはないかと考え始めた。それで思いついたのが入浴だった。一日くらい風呂に入らないのはよくあったが、二日も入らないという経験はしたことがなかった。二日目になると、匂いが気になりだした。毎日十本以上はタバコを吸うので、服や髪の毛にタバコの匂いがはっきりと感じ取れるようになった。三日目はフケが気になりだした。頭を掻くと白いものが雨のように降ってくる。四日目は体が痒くなってきた。もう限界だ。そして、久しぶりの風呂に入って、考えた。食べないことは体重を減らすという目的で始めたが、風呂に入らないことでしか達成できない目的が自分にはあったのかと。なかった。おそらくご飯を食べなさ過ぎて、頭がおかしくなったのだろう。自分を戒めるように今までにない力で頭を洗った。

これ以上何かを減らしてしまうと、自分ではなくなるように感じて、風呂上がりにステーキとワインを口に放り込んだ。

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