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勝手にアナリストレポート Vol.1010:チェンジホールディングス(3962 TSE-P 時価総額1,018億円)

2023年も残すところ後3日。今日や明日が仕事納めという方も多いでしょう。今朝の通勤電車(ちゃんと出社しています、私)はいつもより空いていましたね。
家に帰ると大掃除やらに追われている方も多いのではないでしょうか。高校サッカーも今日から開幕。早稲田実業は初戦で敗退してしまいましたが、1月8日の決勝目指して、皆さん頑張ってください!近年は年末の風物詩として「ふるさと納税駆け込み発注」も存在感を増しています。そんな最中、ふるさと納税プラットフォーム最大手の一つである「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクが12月26日にかなりエッヂの効いた広告を出しました。

出所:チェンジホールディングス

皆さんご承知の通り、トラストバンクはチェンジホールディングスの中核をなす連結子会社。ふるさとチョイスは元々シェアナンバー1のサイトでしたが、近年は競合サイトのアグレッシブなポイント還元施策の影響で、シェアを落としていました(22年度推計シェア22.5%)。同社もポイントリワードを一部導入したこともありますが、基本的にはふるさと納税という制度にポイント還元というプロモーションは適さないとの考えから、あくまでもサイトの魅力で勝負してきたと私は認識しています。その同社が今回このような広告を展開した背景、思わず気になったので、勝手にシリーズで取り上げてみました。
前置きが長くなりましたが、いつも通り機関投資家に配布しているテキストをこちらでも書き記したいと思います。

「ふるさと納税をやめよう」の真意

ふるさと納税の本源的価値を問う動きと解釈

<キーメッセージ>
〇ふるさと納税の本源的価値を改めて考えさせる広告が話題になっている。これはふるさと納税プラットフォームが「お得なECサイト」ではなく、「地域創生のゲートウェイ」であるべきというメッセージを我々に問いかけたものと解釈したい。

〇ポイント還元等への規制が行われるか否かは総務省次第ではある。何らかの動きがあった場合、同社ファンダメンタルズにもポジティブに作用すると考える。加えて、社会課題解決の観点からも評価すべきアクションだと考える。

<本文>
チェンジホールディングス(以下、「同社」)の連結子会社トラストバンクは、2023年12月26日にふるさと納税に対する問題を提起する広告を打ち出した(新聞広告、テレビCM、SNSでの動画配信など)。SNSではふるさと納税に関する意見も募集している。見出しが「ふるさと納税をやめよう。」と強いメッセージだったこともあり、インターネット上では少なからず話題になっている。

ふるさと納税受入額は23年に1兆円を超えることが見込まれている。一方、返礼品の魅力が先行したことで自治体間での格差が大きくなるなど、従来の目的(全国の応援したい地域に寄付する)から逸脱していることへの批判も多い。近年は返礼品の魅力だけでなく、プラットフォームがポイント還元策を積極的に行っているため、Eコマースのゲートウェイになってしまっているとの見方も強まっている。

出所:総務省


ふるさと納税制度が、地域創生という本来の趣旨ではなく、節税やお買い得を主目的にした利用が増加していることは事実だろう。当初の趣旨を維持するために、総務省は定期的に仕組みやルールの改定を行っている。例えば、23年は、(1)募集に要する費用について、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて寄附金額の5割以下とする、(2)加工品のうち熟成肉と精米について、原材料が当該地方団体と同一の都道府県内産であるものに限り、返礼品として認める、(3)返礼品に附帯物をあわせて提供する場合、返礼品の価値が提供するものの価値全体の7割以上とする、といった改正が行われた。しかし、お得なうちに申し込もうという消費行動のみが目立つ結果となった。

出所:総務省


地域格差に端を発した批判は正直致し方ないと考える。近年は地域特産品のみでなく、アソビューを通じた体験型返礼品なども増えてきており、各自治体の工夫次第で受入額を増やしていくことは十分に可能だろう。ふるさと納税が返礼品をもらうだけの制度に留まっている、寄付額の約5割しか実質的な歳入とならないといった批判に対しても、地域の認知度向上、寄付後の観光振興などに結び付けていければ、十分に価値のある施策となるはずである。

アソビューアプリのスクショ
出所:総務省

現状は、ポイント還元などEコマースビジネスと変わらないアプローチが多いがために、納税者(消費者)が本質的価値を感じられないことが問題だと考える。今回のプロモーションは、そこに一石投じるものになることを期待している。仮にポイント還元を是正するような動きがあった場合、市場全体ではふるさと納税利用者の成長が鈍化するだろう。しかし、プラットフォームそのものの魅力が差別化要因になるため、同社のファンダメンタルズにはポジティブに作用することが想定される(ここ数年とは逆の動き)。加えて、地域創生を実現していくためには必要な措置だと我々は考えている。

2023年の投稿はこれが最後になりそうです!2024年は年初からがっつりと取り組んでいきたいと思っています。ちょっとこの会社は?みたいなのがあれば是非コメントお待ちしております!(投資情報の提供ではないので、どこまでご期待に沿えるかは分かりません)

最後にいつも通りのディスクレーマーになります。

<ディスクレーマー>
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