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おいかけっこ

過去の僕がいう、そっちにいかないでと。
腕を引っ張り、振り払おうとすればまた掴んで来ようとする。
また振り払おうとして逃げようとするも
前に行かさないように先回りして通せんぼしてくる。
未来の僕が呼んでいる。はるか遠くから。
聞こえるか聞こえないかくらいの声で。
でもそっちがいいってことはわかっている。
でも過去の僕が今したいことを持っている。
それをすれば自分は満たされる。
ずる賢い奴だ。知ってるんだ。
僕が満たされればここにいるということを。
そうやって何年もここにいるうちに
気が付けば自分は醜い奴になっていた。
見た目もそうだが、一番醜かったのは心だった。

僕と同じように未来のあいつに呼ばれて
そのまま走っていったあいつを
バカにしたり、途中でこけたりしたことをあざけわらっていた。
最初は尊敬もしたし、羨ましがったり、くやしがったりもした。
でもいつしかその気持ちは薄れてしまった。むしろなくなってしまった。

わかっている。でも認めたくない。
認めてしまうと僕が僕じゃいられなくなるんだ。
だからこうやってするしか僕を守れないんだ。
人を下げていかないと僕は僕を守れないんだ。

また過去の僕がいう。
ずっと一緒にいようね。

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