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宅配ピザ屋が閉業してた

今日はスマホゲームのイベントが始まる日だったので、メンテナンス明けにちょうど始めて以降、ずっと熱中してプレイしていた。

私は集中していると色々なことが目に入らなくなるたちだが、例外、そして限界というものがある。
空腹だ。

流石に腹が減った。そして夕飯を作るのは面倒である。
チキンラーメンないし冷凍チャーハンで済まそうかと考えた私の脳裏に、ふと天啓が降りてきた。
「ピザにしないか?」
ピザ。宅配ピザ。そういえばしばらく食べていない。
私には危機管理能力がないので、一時期本当に餓死寸前みたいな状況で有り金全部はたいて宅配ピザを頼んでめちゃめちゃ美味しく食べたのちに絶望したことがある。
そういう事態が起こりうる程度には私はピザが好きだったのだが、生活保護下に入って、「これ「たまの贅沢」くらいの頻度であっても食ってたら家計もたないわ」と気がついて以来食べていなかった。つまり半年以上ぶりの発想である。
近頃は特別臨時給付金が降りるそうだし、少しくらい精神衛生の回復のためにも非日常な食事を楽しんでもよかろうと思ったのだ。

で、一旦ゲームをやめて電話を開くのだが、私は電話帳の引継ぎとかが面倒に感じてしまうたちで、以前壊れかけたスマホを買い替えて以来、電話帳がほとんどまっさらな状態になっていた。当然、宅配ピザ屋の番号も載っていない。
こういう時にズボラで困るなとひとりごちながら、ネットで「○○(住んでいる場所) 宅配ピザ」で検索した。余りにも久しぶりすぎて店名すら忘れていた(チェーン店なのだろうが、そこそこマイナーな店だろうと思う)が、こうすれば思い出すし、電話番号も出てくるはずだ。

果たしてそれらしいものは見つからなかった。
「これだったっけ?」と思うものは見つけたのだが、私の住んでいる場所が宅配対象外になっていたので違う。一瞬嫌な予感がした。
私は方針を改めることにした。確か店からラミネートされたメニュー表を渡されていたはずだ。ラミネートされていてかさばるし、それなりの頻度で使っていたから、ゴミの山に埋もれるにしても浅い位置にあるはずだ。そう思って私はメニュー表を探した。

それは簡単に見つかった。埋もれてすらおらず、キッチンの床の隅にペタリと落ちているだけだった。
すぐに電話番号を確認して、ダイヤルを打ち込み電話をかける。
いつもと違って応答は早かった。
「こちらの電話番号は、現在使用されておりません」。

慌てて電話番号で検索する。検索結果の一番上に店の情報が出てくる。その一部に、赤字で次のように書いてあった。
「閉業」。

なんということだ。私がピザ離れしているうちに、贔屓のピザ屋が潰れてしまっていた。
これには流石に驚きを隠せない。「嘘だろ」と声が出た。何せ、大学に進学して今の場所に住み始めて以来、ずっと世話になってきたピザ屋なのだ。もう7年とか8年とかの付き合いになるはずだったのに、いつのまにか消えてしまっていた。
脳内に「ガーン」という漫画みたいな擬態語が聞こえた気がした。一方腹の方は「ぐぅ」という擬音で表現される音を立てた。

ショックである。私はもう宅配ピザを食べることができないというのか。
一応別のメジャー店のチラシがポストに投函されることはあるが、一人用のサイズがなく、恐ろしく高い。とてもではないが利用できない。
私は宅配でほとんど毎回同じものを頼んでいたから、電話をするたびに「またかこいつ笑」などと思われていないか気を揉んでいたものだが、その懸念をすることも、もはやないのだ。あまりにも寂しい。

結局、今日の夕飯には米を炊くことにした。
浸漬に炊飯にととにかく時間がかかるが、その間に感傷に浸ったり、こうして記事を書くことは出来る。
もうすぐ炊き上がるだろうから、なくなってしまったピザ屋とピザを食べる機会に思いを馳せながら、しんみりと夕飯を済ませることにしよう。

ところで記事もそれなりの字数になり時間もかなり経ったが、米の炊ける匂いがしてこない。
炊飯器を見に行ってみる。炊飯ボタンが押されていない。
ちくしょうめ。踏んだり蹴ったりだ。

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