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「薬を使ってれば普通と同じでしょ」って扱われると壁を感じる ー『アンサング・シンデレラ』を観たー

「医療の中でも地味すぎてドラマにできない」薬剤師がまさかの主人公ドラマ

フジテレビドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』が2020年7月16日、放送開始しました。
主人公は病院薬剤師。


わたしは薬学部薬学科に6年間通い、卒業した上で国家試験を通過し、薬剤師免許を持っています。けれど、医療ドラマを観るのは人生で初めて。

今まで見たことがなかった理由は、父が医師、母が薬剤師の家庭で「ドラマは現実とかけ離れすぎているから見たくない」と言われて育ったからです。特に「観たい!」と強い気持ちを持ったことがなく、そのまま生きてきました。

そんなわたしですが"日本の連続ドラマ史上では初の病院薬剤師を主人公にした医療ドラマ"アンサング・シンデレラは流石に観とかなきゃ!
だって「医療の中でも地味すぎてドラマにできない」と語り継がれてきた薬剤師が主人公のドラマが実現!石原さとみ様のお力を借りて!!こんな未来は予想していなかった!
情報公開時からウッキウキだったので、この投稿では初回放送を観て感じたことを書きます。

初めて観た医療ドラマはたしかに現実とかけ離れていて、○×クイズをやりたくなりますが、そんなのは全国の薬剤師がやっていると思うのでここでは割愛します。薬剤師同士でネタにするのはいいけど、それ以外の人に見せる場所で書いてもドラマをつまらなくするだけですし。

第一話は患者への共感の嵐

第一話は、薬をわざと正しく使わず、入院期間を伸ばす思春期の少女たちが登場。
わたし自身「アレルギーが多く苦労しているのに軽く見られがち」なので、もはや薬剤師じゃなくて患者の気持ちに共感しちゃいました。
「薬を使ってれば普通と同じでしょ」って扱われると壁を感じる。

「アレルギーって最悪でも注射打てば平気なんでしょ」って医療従事者以外の人でも簡単に言うんですよね。わたしが薬剤師免許を持ってると知っていても。たいして考えず、ただ自分が知ってるほんの一部の知識を向けてきているだけなんでしょうけど、不快です。

医療従事者だったらデリカシーがあるのかと思いきや、そんなことはない。
ドラマ内で患者が医療従事者に「こんな人たちにわかるわけない!」と怒るシーンがありましたが、それをよく表しているなぁと感心しちゃいました。
一例ですが、製薬会社に勤めた経験のある薬剤師に、わたしの"非常時の最終手段である注射にはなるべく頼りたくない"意思を残念がられた時はめちゃくちゃ腹が立ちました。
古巣の薬を肯定したい気持ちはわかるけど、それは押し付けるもんじゃないよ。

とはいえ医療従事者以外の人から見たら、医療従事者は理解があることを期待されます。
わたし自身、過去に勤めた薬局で「稀な病気を持ってるから、普通の場所だと理解がなく働きづらい」と言って、病気への理解を求めて薬局事務に転職してきた人に出会ったことがあります。
どんな患者も、理解のない対応をされるたびに傷ついているってことなのでしょう。
ランチを食べながらさくっと病名を出すだけで理解が得られることが、その人にとって救いになることもある。

同じ病気を持った人たちのコミュニティでも、重症度によって差別する人がいたりするし、そもそも自分の病気への受け止め方が人によって異なります。
だから同じ病気の人同士で集まればみんな解決!とはいかないのが難しいところなのですが...。

ここに書いたのはわたしの実体験に伴う、ほんの一例ですが、それらを最大限に表現した良い回だったと思います。


薬剤師あるある

ドラマの突飛さに驚くこともありますが、共感できることもあり。

①調剤でハンコを押す量は異常
②「ここが向いてないなら辞めよう」は結構マジでみんな思ってる。そしてすぐ転職する。
③「親(親戚)に薬剤師が居るから親近感ある」とよく言われる。

①調剤薬局に勤めてみて、「調剤ってハンコ押す仕事なのかい?」と思いましたね。とにかくずっとハンコ押してる。「薬袋それぞれにハンコ」は鬼。
ただこれは責任を取るための名前入りのハンコなので、"普段は存在感が無いのに悪いことが起きたときだけ責任取らせに来る"かのような無言の圧がわたしは苦手でした。
自分の名前のハンコは慎重に押さなきゃいけないよ。

②就活時、「同じところに3年以上勤めることなんてあるの?」と真顔で話す同級生がいました。
それ以上は語らないぜ。

③勝手に親近感持たれるのあるある〜〜〜!!!
このセリフ、言われすぎて当の薬剤師は「そうですか」以上の発展をさせる気がないんじゃないでしょうか。ごめん、知り合いならまだしも、知らない薬剤師と重ねられてもピンと来ねぇんだ...。

病院薬剤師メンバーのキャラクターにもあるあるが散りばめられていて、丁寧な取材の元に出来上がっていることが窺えます。

他にも面白いところはいくつか。

・ドラマ内に登場する調剤内容は薬剤師(と薬学生)にとって薬学クイズ!
薬学クイズをテレビで見る事は日常にないので、楽しかったです。
実際に見える言動は氷山の一角。裏には膨大な知識があるんですよね。
薬剤師って薬の効果と投与方法しか知らないくらいに思われてそうだけど、病気についてもがっつり勉強してるんだぜぇ〜。診断はただの行為。診断できる人だけが「病気がわかる」じゃないの。

・薬局がここぞとばかりにCM撃ちまくってる
チェーン薬局が大喜びで協賛している様子が伺えます。

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薬剤師みんながこのドラマのおかげで、少しの間だけでも気持ちよく仕事出来たらいいなぁと心から思います。

毎週木曜夜はアンサング・シンデレラだ!

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