スーサイドさかな

元京都在住。

スーサイドさかな

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しらたまぜんざい

「もしもし」 「もしもし、今電話できる?」 「うん、大丈夫だよ。君から電話が来るなんて驚いたな」 「いやさー、久しぶりに電話したくなっちゃったんだよね。元気してた?」 「まずまずかな。小春は元気にしてるの?」 「元気にしてるよ。あのさ、私ね、東京で働いてるの。実は転職してさ、丸の内の会社に勤めてるんよ」 「そうなんだ。あれだけ地元での就職にこだわってた君が、まさか東京に行くなんてね」 「ほんとだよー。私もこの歳になって上京するなんて思ってもいなかったな。君は確か東京に就職

    • 屋上

       大学時代に付き合っていた彼女の家で起こった、少し不思議な出来事の話をしよう。  軽音サークルに所属していた僕は、同年代のやつらとバンドを組み、麻雀とアルコールに明け暮れた毎日を過ごしていた。音楽は好きでも嫌いでも無かった。僕は地方から出てきて一人暮らしを始めたばかりで、知り合いのいない寂しさを埋めるため、誰かと一緒にいる居場所を求めた。季節ごとに開催される内輪のイベントには必ず参加し、中古で買ったテレキャスターを引っさげ、誰もが知ってる有名バンドのコピー曲を弾いていた。ぬる

      • 新居

         線路沿いの家に住むことに憧れていた。  家のすぐ横が線路のような、電車が走るたびに振動で軋んでしまうような家に。  安い賃貸マンションの2階の角部屋なんかが理想的だ。自室の窓を開くと眼下に線路がある。永遠に続くようなそのレールの上を、2両編成の普通列車や何両も連結した特急列車が走っている。列車が通った後には警報機がけたたましく音を立て、やがて静寂に包まれる。  線路沿いの家に住んだら、窓辺に椅子を置いてみよう。テーブルは置かない。椅子に座って、コンビニで購入した98円