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TAFRO症候群×新型コロナウイルス感染4日目:娘のPCR検査陰性、父の感染経路は?

前日のPCR検査結果は、この日のうちには連絡が来ることになっていた。事前の受診指示連絡の時に「結果連絡は夫と私、一緒で構いません」と伝えてあって、夕方までには連絡がいくと思いますと言われていた。

夕方までソワソワしながら待つのがとても嫌だった。それでなくとも病院から父に関する「何かあったら」の連絡、ECMO判断の連絡、自分の仕事の連絡、もはや「来るかもしれない連絡」に埋もれてしまいそうだった。

夫も同じだったようで、自分のコーヒーと私にお茶を入れてくれた。熱いお茶をゆっくり飲みながらひとまず落ち着こうとしていたその時、夫のスマホが鳴った。

親指のサイン

「はい、はい」と相槌を打ちながら、隣で電話をする夫。すぐに私の方に向けて親指を立てて合図をくれた。

(陰性ってことね…ん?夫だけか?)

スピーカー通話にしてもらえばよかった。相手の話が聞こえないので、終話するまで全貌が見えない。タンブラーのお茶が熱いことを忘れてヤケドしそうになる。なんだ?まだ動揺してるのか?

数分の電話を終えた夫に声をかける

『2人とも?』

『うん、2人とも大丈夫』

ハァァァァ…腹からため息が出る感じ。
とにかくホッとした。

どちらかだけ陽性とか、どちらも、とか、いろんな悪いパターンのことも想定していた。わからないながらも最大限準備をしていた。

「今さら感」はあったかもしれない。ウチは向かい合うのではなく並んで座る食卓だけど、食事は大皿シェアや箸の共有などを避けて、グラスやタオルも一人一つずつ使うように。私だけが陽性で施設療養などになった場合に夫の助けになるように必需品をネットで揃えておいた。仕事への影響を2人で考え、一緒に乗り切るための話をしていた。

そうしたさまざまな可能性をひとつずつ潰し、どんな結果でも対応できるように準備できたのも夫が一緒だったからだと思う。私ひとりだったらまぁオロオロしっぱなし、もしくは茫然自失だっただろうなぁ。

接触からの平均発症日数は5日程度

今回陰性だったからと言って手放しでは喜べない。そもそも「まだ発症しないだけでこれから陽性になる可能性」があるために、PCR陰性の濃厚接触者には2週間の自宅待機が求められる。

厚労省やコロナ研究班の情報を見ると、ウイルスの潜伏期間は1日〜14日間だとわかっており、平均すると発症までの日数は5日程度だと知った。父との濃厚接触の可能性は、一番が入院前日の食事だと考えた。そうすると食事の日から5〜6日、バッファを取って1週間はまだまだ油断できないなと思った。

【潜伏期・感染可能期間】 潜伏期は 1 ~ 14 日間であり,曝露から 5 日程度で発症することが多い(WHO).発症前から感染性があり , 発症から間もない時期の感染性が高いことが市中感染の原因となっており , SARS や MERSと異なる特徴である.
SARS-CoV-2 は上気道と下気道で増殖していると考えられ,重症例ではウイルス量が多く, 排泄期間も長い傾向にある.発症から3~4週間,病原体遺伝子が検出されることはまれでない.ただし , 病原体遺伝子が検出されることと感染性があることは同義ではない . 感染可能期間は発症 2 日前から発症後 7 ~ 10 日間程度(積極的疫学調査では隔離されるまで)と考えられている. 

ー新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第4.1 版
より引用

ただ、保健所の女性の話によれば、父の発症日は10日ほど前ということだ。行政によって公開された父の感染者情報にもそう書いてあった。上記の情報からすると私たちと食事をした時はすでに、父の感染力は落ちていたのかもしれない。それでも念には念を入れ、父の陽性結果が出た入院当日から1週間程度は自宅でもガッツリ対策をしようということにした。

どこから感染したのだろう?

発症日が10日ほど前だとすると、その前に接触したのは私、買い物、そして「喉が痛いと言っていた人」。もしかしたら私の知らない他の人とも接触があったのかもしれないし、配達の人などの訪問者があったかもしれない。つまりもう、今となってはほぼ感染経路不明が確定なのだ。

こうやって感染は拡大していく、ということを身をもって知った。たとえ気をつけていても、誰かからもらうことも、誰かにうつしてしまうことも、多分本当にあるのだ。無症状ならばなおさら、もらってることもうつしてることも気づかない。行動自粛はとても大きなダメージがあるけれど、感染経路がわからない、感染に気づけない以上必要なことなのだと痛感した。

もっと言えば、感染経路はどこなのか?を知ったところで、患者にはあまり意味がないと思った。だってもう罹ってしまったのだから。そして「完璧に防ぐことなんてできなかった」ということもわかったから。

こんなことを言うと「もうどこもかしこも危険だらけ。どこにも出られない」と恐怖や不安に襲われてしまうかもしれない。だからこそ、リスクの高い場面はどういう状況なのかなどの情報を国や行政や先生方が示してくれているのだろう。しっかりと知識を入れて、基本的な感染防止対策をちゃんと続けること。たぶんこれ以上もこれ以下もないと思う。

「誰かがやってる、やってない」ではなく「自分がやる」
もうそれしか、ないんだよね。

なんの連絡もないもどかしさ

ICUに入って人工呼吸器に繋がれて眠っているという先生の連絡から丸2日、父の状態に関して病院からの連絡はない。

何もわからないということがどれほど不安なのか?は、1度目の入院の際にも経験していたけれど、やっぱりもどかしい。

何度もスマホの画面を点けたり消したり。もしかして見てくれるのでは?と既読がつくはずもない父のLINEにメッセージを入れたり。病院に電話しようと「なんて聞こうか」と考えてはいい案が浮かばないのを繰り返したり。

そうして結局「信じて待つしかない」に落ち着くのだ。もう少しドンと構える自分になっていてほしかった。

良い方に考えるなら、連絡がないということはまだECMOをつける状況にはない、ということだ。この時の私にはあまり現実的に思えなかったけれど、人工呼吸器を離脱できるような兆候が見えてきているという可能性もある。

いずれにしても、父は戦っている。
完全に眠っているのならいいけれど、薄れる意識の中でまたうわ言や悪夢にうなされていないだろうか?

早く、知りたい。




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