訪問入浴(2)
女性管理者が退職し、社長が指揮を取るようになり会社の雰囲気は激変した。
利用者が減り、売上も赤字となった。
訪問入浴業務の空き時間は営業に回ることとなる。
しかし、僕は雰囲気よろしくないからと車で待機させられていた。
この頃の僕はとにかく素行が悪かった。
訪問入浴車にはボイラーが積んであり、給油口の蓋が固かった。
ガソリンスタンドで給油してもらうのだが、蓋が固いと文句ばかり言う店員を怒鳴りつけ土下座させたり、仕事中に利用者近隣のおっさんに文句言われ胸ぐら掴まれた拍子に殴ってしまい警察沙汰になったり、スタッフ間の喧嘩で止めに来た所長も吹っ飛ばしてしまい怪我させたり….
そんな僕は仕事が楽になってラッキー✌️
なんて思っていた。
(今になって本当にバカだったなぁと思う)🫣
この頃、社長の悪い噂を皆から色々聞かされた。
社長は経費を使ってパチンコばかり行っている。
所長は売上落ちた責任で減給。
お気に入りの女子従業員にはプレゼントをあげている。
しっかり覚えてはいないが、こんな感じの内容だったと思う。
社長との関係性も悪くなく、下っ端の僕には大した影響もなくどうでも良かった。
ところが、所長含め、僕以外ほとんどのスタッフが退職する事となった。
不満が爆発したのだろう。
僕も退職を皆から勧められた。
知らんし!
この頃、僕は音楽でラッパーにトラックを提供してお小遣いを貰ったりしていた。
音楽に夢を見ていた。
仕事は二の次、どうでも良かった。
※トラックとはラップのバックミュージックであり、ビートなどとも呼ばれる。
ある日、専務から呼び出された。
専務「新しいスタッフが入ったら皆んな辞めてしまうが君はどうする?」
僕「辞めません」
専務「所長をやってくれないか?」
僕「やりません」
専務「君しかいないんだ」
僕「やりません」
専務「…….」
このような流れになる事は予測していた。
絶対に所長にはならない!そう決めていた。
理由は面倒臭い事が増えそうだから。
専務「所長になると年俸制になる」
年収を提示される。
僕「やります!」
なんとかなるっしょ。
新入社員が何人か入社したが、皆んな辞めていった。
その後もほとんど続く人はいなかった。
入社しても皆んなすぐに辞めていってしまう。
40代で転職繰り返してる奴。
(何人かいたがやっぱりすぐ辞める)
ペルー人で彼女と仕事中に電話ばかりしてる奴
(もちろん仕事できんし、ぶん殴ったら辞めてった)
すごく変な奴
(入社して1週間後音信不通、岐阜の浮浪者の溜まり場で見つかったとの噂)
まともな人がなかなか来ない。
人手不足でしっかりとした研修が出来ないまま新人社員を連れ現場を回っていた。
クレームの嵐。
空き時間には営業も回っていた。
言葉遣い、身だしなみ、文章の書き方、色んな事を専務に教えられた。
小さな事業所だったので他事業所から助っ人を呼ぶ事も出来ない。
休みなしで働いた。
小馬鹿にしていたスタッフにも何度も助けられた。
見た目、服装、雰囲気で人を決めつけていた。
自分を見つめ直し、自分の愚かさを知った。
何度も何度も助けられた。
人の見方、接し方が変わって行った。
2016年、所長に就任して4年。
子供が生まれた。
僕は37歳。
スタッフも定着して売上も黒字となっていた。
軌道に乗ったかのように見えた。
しかし、疥癬の集団感染をきっかけに会社は崩壊する。
※「疥癬」はダニの一種である「ヒゼンダニ」がヒトの皮膚に寄生しておこる皮膚の病気で、腹部、胸部、大腿内側などに激しいかゆみを伴う感染症です。直接的に肌から肌、また、衣類やリネン類を介して間接的にヒトからヒトへ感染します。疥癬には、通常疥癬と角化型疥癬の2つのタイプがあります。
通常疥癬で寄生するヒゼンダニの数は数十匹以下ですが、角化型疥癬では100万~200万匹であり、その感染力に大きな違いがあります。感染力に大きな違いがあります。
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